静岡市葵区に「柚木町」という町がある。静岡市民なら静岡鉄道の駅名と同じ「ゆのき」だと思うかもしれないが違うのだ。わずか40mほどの小さな町に隠れた歴史を調査した。
葵区に「柚木町」と「柚木」がある
ユズの木の町、「柚木町」と書いてなんと読むのか? 「ゆずきちょう」ではない。
静岡市民であれば市内に「柚木駅(ゆのきえき)」があるので「ゆのきちょう」ではないのかと思うだろう。が、それも違うのだ。
場所も違う。柚木駅があるのは葵区の東側で、町名は「柚木(ゆのき)」。「町」は付かない。柚木町はそこから直線距離で3km西に離れた茶町通りの近くだ。

柚木町の場所は茶町通り沿い
名前の通り、お茶の店が立ち並ぶ茶町通りを北へ進んでいく。
安西通りに突き当たるすぐ手前、「ゆずの木町内科循環器科」というクリニックが見えてきた。
クリニックの名前から判明してしまったが、正解の読み方は「ゆずのきちょう」だ。
土太夫町と安西に挟まれたここが柚木町である。
狭い! 柚木町の広さを調査
電柱の表示を確認しながら歩いていくと、安西通りに突き当たる安西2丁目交差点の町名は既に「安西」となる。
柚木町は非常に狭いエリアだということが分かる。

実際、茶町通り沿いの柚木町の距離はわずか約40m。本当に小さな町なのだ。
石碑に刻まれた町名の由来は2説
柚木町の由来について住民に話を聞いてみたところ、石碑があると教えてくれた。場所はさきほど見たクリニックの前だ。
町名碑の横には、柚木町の由来が記されている。
それによると、柚木町の由来には2つの説があった。
1つは「昔、安西との間に堤があり、ユズの大木が植えられていた」ということが、地誌「駿河記」に記されている。
もう1つは「この地にあった福寿山大林寺というお寺の境内のユズの木が、お寺が現在の地に移転した後もそのまま残されたため」という説が地誌「駿国雑誌」に記されている。
元禄5年の資料によると家は11軒、住民は72人。当時から小さな町だったようだ。
どちらの説も、柚木町の名前は文字通りユズの木に由来しているという点で一致していた。
ところで、同じ葵区にある「柚木(ゆのき)」とは関係がないのだろうか。
「柚木町」と「柚木」の意外な関係
柚木町と柚木との関係について調べようと、町名碑の前にあったギャラリーを訪ねてみた。20年以上、この地でギャラリーを構えている佐野泰之さんは驚きの証言をしてくれた。

ギャラリー佐野・佐野泰之さん:
静岡の方は柚木町を知ってる方はかなり少ないと思いますよ。皆さん「ゆのき」と読みますね。ユズの木を護国神社(柚木)に移植して、向こうが「柚木」という名前になったと聞いています
諸説あるが、佐野さんによると昔、柚木町にあった大きなユズの木を、現在の柚木にある護国神社に移植したことが、「柚木(ゆのき)」という地名の由来になったということだ。
多くの人が柚木町と柚木を混同しがちだが、2つの町名には歴史的なつながりがあったかもしれないのだ。
今回の調査で分かったのは、たった40mの小さな町「柚木町」にも、静岡の歴史と文化が息づいているということだ。何気なく通り過ぎてしまうような小さな地域も、その名前には先人たちの物語が刻まれている。
(テレビ静岡)
