コロナ禍のいま、コロナと戦う全国の医療従事者が注目している商品がある。
その商品を開発した広島・廿日市市のメーカーを取材した。

50年以上の歴史…様々な商品を製造

長い歴史を感じさせる工場。
何を作っているのかというと…

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
段ボールの製造と販売をする会社。主に加工・印刷・カットなどをして製品を仕上げる加工工場です

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廿日市市にある段ボールメーカーの石原工芸。
創業は1965年。実に50年以上の歴史を誇る会社。
主力商品は段ボール箱。
といっても、私たちがよく見る、いわゆるミカン箱のような大きさではない。

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
弊社は、近くに大きな建材メーカーさんがありまして、そちらの段ボール箱を中心に製造しています。ですから、クローゼットを入れるものとか、大きくて3メートル近くのものなど、お客さんの商品に合わせたものを作っています

しかし、作っているのは箱だけではない。
これまで開発してきた商品を見せていただくと…

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
ペット用のお棺です。わんちゃんが亡くなって、火葬場に持っていくにも、「スーパーの段ボール箱しかないんだけど」っていう声が耳に入りまして、なんとか形にしてみようかなということで、こういう商品を作りました

ペット用の棺おけ
ペット用の棺おけ

他にも、カブトムシを戦わせるための専用リング、その名も「ムシリング」や、けん玉の生産で知られる廿日市らしく、巨大けん玉オブジェに、段ボールでできたクリスマスツリーと、枠にとらわれない柔軟な発想で様々な製品を開発してきた。

東日本大震災をきっかけに新たな発想

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
2011年の東日本大震災のときには、東北の人が少しでも気持ちが安らげるようなことができないかなと思って、ツリーを作ったんです。そのツリーを(被災地へ)送らせていただきました

東日本大震災では、避難所生活をされている人のプライバシーを確保するための間仕切りも製作し、自衛隊を通じて被災地へと届け、その後 災害に備えての簡易ベッドも開発するなど、緊急時に求められるものを開発してきた。

災害用の簡易ベッド
災害用の簡易ベッド

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
東日本大震災が起きたときに、何とかしなくてはと思いまして。普通であれば、段ボールの加工だけに留まっていたかもしれないが、震災をきっかけに、新たな発想を考えてきたのかなと思います

医療従事者の「声」を形に

そうした柔軟な発想から誕生した新たな製品が、新型コロナウイルスに対応している全国の医療機関から注目されている。

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
これは、「エアロゾルボックス」という名前を付けていて、感染者が重症化して、人口呼吸器を装着する必要ができた時に、万が一の飛沫を防ぐために、ここから手を入れて、気管に人工呼吸器を挿管し、こちらから解除できるようになっています

新製品「エアロゾルボックス」
新製品「エアロゾルボックス」

4月に開発を始めたこの製品。
実際に医療機関で従事している医師らに意見を聞きながら、穴の大きさや高さなどを研究し、わずか1カ月で完成させた。

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
病院のほうに持ち込んで、「どうですか?必要ですか?」と聞いて、「これはいいね、助かるわ」とおっしゃっていただいた。その後、PCR検査用の防護シールドが開発できないかと、病院のほうから依頼がありました。万が一の飛沫を防ぐために、バリケード型のものを製作しました

新型コロナウイルスの拡大によって、一般的に認知されるようになったPCR検査。
鼻や喉にウイルスが潜んでいることから、唾液などを採取して検査する方法。

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
採取して、その後に万が一この手袋が汚染していたらいけないので、この手袋を裏返しにし引き抜いて、裏返しのまま処分できる。(これまでは)発想はなかったんですね。だから病院の先生が必要だとおっしゃられるものですから、なんとか形にしようと思いまして

こうして完成したPCR検査用の防護シールドは、発表すると、たちまち全国の医療機関から問い合わせが入るようになった。

石原工芸株式会社・石原弘善社長:
結構遠くからも注文いただきまして、北海道も数件、また鹿児島もありました。ここまでとは思いませんでしたし、たくさんの注文が来ておりまして…やはり、必要とされるものを作らせていただくというところだと思うんですね。そういう声に耳を傾けながら、これからも作っていきたいなと思います

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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