19歳の新人舞妓『ふく苑さん』。
この日、初めて着る衣装に袖を通し、初舞台の準備を進めていた。

この記事の画像(12枚)

初舞台の本番前…リハーサルでは厳しい指導が行われている。

振り付けを指導する 若柳吉蔵さん:
位置おかしいやろ、中よってへんか。もう一つ外じゃなかったか。
顔はこわばってるね、緊張してるんか。それはしゃあないけど

舞妓:
おたのもうします

振り付けを指導する 若柳吉蔵さん:
声が小さい!

新人舞妓の夢の初舞台。
その道のりは長く険しいものだった。

夢を叶えたい…東京から来た”新人舞妓”に立ちはだかる『新型コロナ』

5月―
緊急事態宣言中は、5つの花街で全てのお茶屋が営業を自粛した。

お座敷で客をもてなすことも、通っていたお稽古も無くなったため、ふく苑さんは手ぬぐいからマスクを一つ一つ手作りする毎日を過ごしていた。

慣れない針仕事に苦戦する様子を見て女将は…

お茶屋『しげ森』谷口三知子女将:
普段はお針のことやら、舞妓さんにはさせへんのどすけどもね。
長いこと見たら、芸妓さんになったら自分たちの襟を付けたり着物の繕いをするのに、ちょうど今の期間のお稽古にいいかなと思って…
どれくらいかかる?1枚

ふく苑さん:
1枚1時間くらい…

お茶屋『しげ森』谷口三知子女将:
でも今はちょっと時間あるもんな

舞妓になる夢を叶えようと、中学卒業後16歳で東京から京都へやってきたふく苑さん。

修学旅行で舞妓を一目見て憧れるように。

ふく苑さん:
舞妓さんの事を考えると夜も寝られへんくらい憧れてて…
親から最初は反対してはったんですけど、うちがずっと『なりたいなりたい』言うのをみて、最後はものすごく応援してくれてはりました

ふく苑さんは、他の舞妓さんたちと一つ屋根の下で暮らしている。

彼女たちを育てるのは、女将の谷口三知子さん。

新型コロナウイルスの影響で、営業再開の見通しが立たない中、家の中で"踊りの練習"を続けていた。

お茶屋『しげ森』谷口三知子女将:
背中の骨もっとくっつけなあかんやろ
なんで扇子二人違うの?

舞妓たちに指導する女将。
しかし稽古しても、披露する舞台が無いのが現状だ。

お茶屋『しげ森』谷口三知子女将:
ちょっと体を動かして、使うことを忘れているのはいかんことやと思いますね…
ただ見ていただく人がないっていうのは精が出ないのかもしれないですしね。
だから、いかに自分と向き合うことができるかやね、今ね

ふく典さん:
久々に別の方に見ていただく機会だったので緊張しましたね。
緊張の無い生活をずっと送ってきてしもたな、って後悔してます

伝統の灯を絶やしたくない・・・
その一心で、女将は舞妓たちと厳しく向き合うのだった。

お茶屋『しげ森』谷口三知子女将:
子供さんたち預かって、自分が生きていく場所と、女性が『自分が芸があったら生きていける』という自信をつけてもらえる場所として、絶対に私はここを残していかないとあかんと思うんですよね。世界というか、こういう街をね

やっと”お茶屋の再開” しかし夢の『舞踏公演』はすべて中止に…

緊急事態宣言が解除され、迎えた6月―

ふく苑さん:
あ~ドキドキする

髪結師さん:
なんで?

ふく苑さん:
久々やから

髪結師さん:
どんな生活してたん?寝る時間とかは?

ふく苑さん:
寝る時間は、みんなで夜更かしして映画を見る日もあったんどすけど、お母さんに寝なさいって言われて。夜更かしして、怒られたこともあったので…

お茶屋の営業が再開になり、1か月半ぶりに舞妓さんの髪になるふく苑さん。

一方で、新型コロナウイルスの影響から5つの花街で行われる舞踊公演は、すべて中止にとなっていた。

ふく苑さんの夢は「舞台に出ること」
舞妓になって1年半、一度も舞台に立てずにいた。

ふく苑さん:
春の京おどりが、ものすごくうちの憧れの舞台やったんで、お舞台に立てへんことになってさみしかったり、次はいつ立てるんやろう思ったり

目標を失い、舞妓としてこれからやっていけるのか、悩んだ日もあったと話すふく苑さん。

そんな時に見返したのがお母さんからの手紙だった。

親元を離れて2年半。
届いた手紙は段ボールいっぱいになっていた。

なかには、会えない娘に宛てた"ボイスメッセージ"も…

ふく苑さん:
声が鳴るんですけど、母の

~ふく苑さんの母親からのボイスメッセージ~
17歳の誕生日おめでとう。離れていてもいつもいつも応援しています

ふく苑さん:
お電話もできひんのんで、母の声も聴く機会もあらへんかったのんで…これ届いたときはお手洗いで大号泣しました

ふく苑さんに訪れた初舞台のチャンス――

長い間、舞台に立てず練習の成果を披露する機会を失った舞妓たちのために、「特別公演」が開かれることに…

さっそく踊りの稽古が始まった。

振り付けを指導する 若柳吉蔵さん:
こう止まった時はしっかり沿って。だらりの帯とおしりの間に空間つくって、帯綺麗に魅せな。
そうそうそう。ちょっとし過ぎやで

初めて踊る演目に、うまくいかないなか、本番まであと3日と差し迫っていた。

そして迎えた本番の日―

舞妓の初舞台を一目見ようと、約500席のチケットは完売した。

ふく苑さんが初舞台を終えると、会場からは大きな拍手が…

ふく苑さん:
幕が上がった時に照明が当たって、すごく嬉しくてそこからずっと楽しおした。
今回お舞台に立たせていただいた機会が、自分の中でものすごく自信につながった。
これからもしっかりとお稽古を気張って、また次のお舞台に立てるように気張ろうと思います

もう1度夢の舞台に立ちたい…

ふく苑さんに新たな目標ができたのだった。

(関西テレビ)