戦没者への冒とくになる…埋め立て土砂の採取計画に怒り

米軍普天間基地の移設先とされる沖縄県名護市辺野古で、多くの県民の反対を押し切って埋め立て用の土砂が投入されてから12月14日で2年となった。
その埋め立て土砂の採取計画を巡り、国の沖縄防衛局はこれまで沖縄では本島北部からとしていて「調達場所」について本島南部を含む県全域に拡大した。

沖縄本島南部は75年前の激戦地で多く人が犠牲となり、その遺骨が今も地中に残っている。遺骨収集ボランティアは「遺骨ごと取り出される恐れがある」と懸念を強めている。

沖縄戦の犠牲者の遺骨収集に取り組む遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さん。

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ガマフヤー 具志堅隆松代表:
本島南部は、これ以上逃げ場のないところに住民も兵隊も追い詰められて、多くの犠牲を出した場所

糸満市伊敷ではこの日も遺骨や遺品が見つかった。具志堅さんは今、懸念を強めていることがある。

ガマフヤー 具志堅隆松代表:
多くの人間の血を吸い込んだ場所の土砂を新たな軍事基地を造るために海に投入するのは戦没者への冒とくです

普天間基地の移設に向けた工事が進む辺野古沿岸部では護岸で囲った一部が陸地化され、12月11日には、約9000立方メートルの土砂を積載する大型船が投入されるなど工事が加速している

沖縄防衛局は、今年4月埋め立て予定区域の北側で見つかった軟弱地盤を改良するため設計変更の申請書を県に提出したが、この中には他にも着目すべき変更点が示されていた。

岸防衛相:
沖縄本島南部の鉱山においても現時点では確定していないが、関係法令で認められた鉱山から調達される

これまで本島北部と県外から調達するとしていた埋め立て用の土砂ついて、離島を含む県全域にその採取場所が広がり、本島南部も含まれていたのだ。

具志堅さんたちが遺骨収集をしていた糸満市米須にある緑地帯では11月に採石場としての開発が始まり、立ち入りができなくなってしまった。

ガマフヤー 具志堅隆松代表:
新たな採石場をつくるということは、緑地帯を伐採してそこから石を取るということになれば、戦没者をの遺骨も取ってしまうということに他ならない。土砂と一緒に米軍基地を造るために埋め立ててしまうというのは戦没者への冒とく以外の何ものでもない

計画の詳細を確認しようと、具志堅さんは沖縄防衛局を訪れた。

ガマフヤー 具志堅隆松代表:
調達場所はこれまで採石している場所のみを指しているのか、それともこれから緑地帯を伐採して、採石場にしようとしている場所を含めての話なのかということを知りたい

沖縄防衛局の担当者:
委託先の業者が行った採石業者に対するアンケート調査の結果、普天間基地代替施設建設用に岩ズリ(土砂)を出荷することが可能であるとの回答を得た採石場の候補地を取りまとめたもの

ガマフヤー 具志堅隆松代表:
聞いたことの答えになっていませんし、沖縄本島南部に遺骨がある(と認識している)がそれでも指定しようとするのは人の道に外れている

具志堅さんの質問に対し、沖縄防衛局は「あくまでアンケート調査の結果」と繰り返し、新たに開発される採石場も想定しているのかという質問には答えなかった。

一方、具志堅さんたちが遺骨収集していた緑地帯の開発に着手した業者が取材に応じた。

ーー採石する目的は?

採石業者:
鉱山に非常に興味があってコーラル(石灰石)が有効な資源だと思っています。埋め立てにも使われますけど(石灰石には)カルシウムが含まれていて遠赤外線を出す。二次製品の開発も進めたい。辺野古に関しては全く意識していない

ーー調査会社や沖縄防衛局からアンケートや聴き取りはあった?

採石業者:
今のところ無いです。将来的にあるかどうかわかりませんけど

沖縄戦の激戦地となった糸満市と八重瀬町で調達が可能とされる土砂の量は約3160万立方メートルで、東京ドームの25個分に相当する。

糸満市の採石場を見つめながら具志堅さんは語気を強めた。

ガマフヤー 具志堅隆松代表:
あの採石場が直接辺野古に行くということを指摘するわけではないが、需要を作り出そうとしている沖縄防衛局にはしっかり言い続けたい。この問題は辺野古の新基地に賛成とか反対以前の人道上の問題だ。亡くなった人を二度殺すということになってしまう。それを許してはいけない

戦没者の遺骨を巡っては2016年に遺骨収集推進法が施行され、「国の責任で」2024年度まで集中的に収集に取り組む方針が示されている。

それにも拘わらず、多くの遺骨が地中に埋もれた地域から土砂を調達しようとする動きは、“なりふり構わず”辺野古の埋め立てを強行しようとする国の姿勢が如実に表れている。

(沖縄テレビ)

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