2019年10月、佐賀県の主婦・高畑瑠美さん(当時36)が凄惨な暴行を受けて死亡した、いわゆる“太宰府事件”。
この事件で、佐賀県警 鳥栖警察署が事件前、遺族から再三相談を受けながらも捜査をしなかったことが問題となっている。
議員の追及に佐賀県警トップは…
2020年12月10日、佐賀県議会総務常任委員会に現れたのは、佐賀県警のトップ・杉内由美子本部長(51)。
この記事の画像(16枚)“太宰府事件”の質問が始まる約3分前、佐賀県警の担当者が杉内本部長に書類らしきものを届けた。
すると杉内本部長は突然、何かメモを記し始め、後方に座る県警幹部たちに読ませた。
いったい何が書かれているのだろうか。
共産党 井上祐輔県議:
結果として事件性に気付けていなかった。そのことに関して遺族に一言も謝罪はないのか?
佐賀県警 杉内由美子本部長:
被害者の女性がお亡くなりになられたことは大変重く受け止めており、本件を今後の教訓として参りたいと考えております
共産党 井上祐輔県議:
謝罪する気はないのか?それともあるのか?はっきりお答え頂きたい
佐賀県警 杉内由美子本部長:
繰り返しで大変申し訳ないが、被害者の女性がお亡くなりになられたことは大変重く受け止めており、今後の教訓として参りたいと考えております
共産党 井上祐輔県議:
謝罪する気はあるとは、仰られません。「ない」と認識させていただきます
杉内本部長は、まるで台本に書かれているかのように、いつも通りの答弁を繰り返すだけだった。
2019年10月、佐賀県に住む主婦・高畑瑠美さん(当時36)が、山本美幸被告(41)らから凄惨な暴行を受け死亡したとされる、いわゆる“太宰府事件”。
この事件を巡っては、佐賀県警 鳥栖警察署が事件前、遺族から合わせて14回もの相談を受けながらも、捜査しなかった問題が浮き彫りとなっている。
そして2020年10月、佐賀県警は瑠美さんの遺族から聞き取り調査をしないまま、「鳥栖警察署の対応に不備なし」とする内部調査の結果を発表した。
共産党 井上祐輔県議:
全くご遺族は納得していませんよね。この事実確認結果、この確認は本部長の責任で確認をされたでよろしいですか?
佐賀県警 杉内由美子本部長:
県警察において確認をさせて頂いた
共産党 井上祐輔県議:
ですから、県警察ということは、杉内本部長の責任で確認されたのですか?
佐賀県警 杉内由美子本部長:
県警察において確認をさせて頂いた
共産党 井上祐輔県議:
誰が責任者ですか?明らかにしてください
独自入手した内部資料に記されていたこと
佐賀県警の主張によると、瑠美さんの遺族は事件前、鳥栖警察署に8回相談。
一連の相談は、あくまでも“家族間の金銭トラブル”であり、“瑠美さんの身に直ちに危害が及ぶ可能性があるとは認められなかった”としている。
ところが、テレビ西日本が独自に入手した佐賀県警の内部資料には、これまでの佐賀県警の主張を覆す内容が記されていたのだ。
相談簿に記された内容(2019年7月12日):
「令和1年7月12日」
「件名:他人から洗脳されている娘を救いたい」
相談簿に記された内容(2019年8月7日):
「令和1年8月7日」
「件名:姉を取り巻く環境が心配」
警察への相談内容を記録する「相談簿」。
そこには、瑠美さんの遺族が“金銭トラブル”以外の相談を繰り返していたことが記されていた。
事件が発生する1カ月前には…
相談簿に記された内容(2019年9月25日):
「令和1年9月25日」「申出概要:脅迫の被害届を出せないか」
2019年9月23日に録音された、脅迫音声には…
山本美幸被告:(脅迫の録音音声)
あなたたちのおかげで、めっちゃ借金が増えてさ、めっちゃ生活潰されているんですけど
田中政樹被告:(脅迫の録音音声)
なぁ、ナメた真似してくれたな、弁護士いれたぁ?上等や、弁護士入れてどないなるか、してみたらいいやない。なぁ、聞いてる?黙りんこか?黙りんこか言うとんのや!
これは瑠美さんが亡くなる1カ月前に、瑠美さんの夫・裕さんが録音した山本被告らの脅迫音声。
瑠美さんの夫・裕さんは、鳥栖警察署に山本被告らの脅迫音声を持ち込んで被害を相談していた。
しかし、鳥栖警察署は…
相談簿に記された内容(2019年9月25日):
「被害届等の意思」「現在のところなし」「解決」
鳥栖警察署は、脅迫事案は「解決」したと処理していたのだ。
‟台本”のような回答を繰り返す県警幹部
2020年12月10日、佐賀県議会総務常任委員会の様子。
共産党 井上祐輔県議:
「継続」とすべきところを、どうして「解決」にチェックを入れたのか?
佐賀県警 井手栄治刑事部長:
本年10月に発表した調査結果は、本年7月にご遺族に直接説明する機会を通じて、慎重に事実を確認した結果に基づいて発表したものでございます。以上です
共産党 井上祐輔県議:
どうして解決にチェックを?
佐賀県警 福地雅彦刑事企画課長:
本年10月に発表した調査結果は、本年7月にご遺族に直接説明する機会を通じて、お伺いしたご意見をふまえ、関係書類の確認のほか、申し出対応職員等への確認を行うなど、慎重に事実を確認した結果に基づいて発表したものでございます。以上です
同じ答弁を繰り返す刑事部長と刑事企画課長。
たまらず委員長が…
定松一生委員長:
継続か解決かの記載、それについての認識ということで質問を出されているが?
佐賀県警 井手栄治刑事部長:
ご遺族に直接説明する機会を通じて、お伺いしたご意見等をふまえて確認を行った結果を発表したものでございます。以上です
共産党 井上祐輔県議:
全く話が進まないじゃないですか
同じ答弁を繰り返す佐賀県警。
しかし再調査に関しては、相変わらずきっぱり否定した。
共産党 井上祐輔県議:
今回の結果について、内部の内部による内部のための調査だと言わざる得ない。第三者を入れた再調査を行うこと、それが原因の究明につながる
佐賀県警 杉内由美子本部長:
再度、調査を行う予定はありません。しかし、いずれにしましても被害者の女性が亡くなられたことについては、今後の教訓にしたいと考えている
まさに、木で鼻をくくったような佐賀県警の答弁。
委員会を終えた杉内本部長を直撃した。
TNC記者が佐賀県警本部長を直撃
記者:
本部長!誰もが納得できる説明をされたとお思いですか?
県警:
広報を通じてください
記者:
議会に対して不誠実な対応では?
佐賀県警 杉内由美子本部長:
…
記者:
謝罪はされるんですか?遺族に
佐賀県警 杉内由美子本部長:
…
記者:
このまま終わらせるつもりですか?第三者を入れた再調査を行わないんですか?本部長!
杉内本部長は無言を貫き、すぐ横の県警本部へ戻るため、車に乗り込んだ。
(テレビ西日本)
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