太宰府主婦暴行死事件。

2019年10月、太宰府市で無残な遺体となって見つかった主婦の高畑瑠美さん(当時36歳)。この事件では、瑠美さんと奇妙な同居生活を送っていた山本美幸被告と岸颯被告、そして元暴力団組員の田中政樹被告が、傷害致死や死体遺棄などの罪でそれぞれ起訴されている。

主犯と目されている山本美幸被告はどんな人物だったのか?

取材を進めると「一匹おおかみ」だった少女が「女帝」へと変貌した過程の一端が見えてきた。

取材班は、共犯者として起訴された岸颯被告にも取材。

すると、3年前に瑠美さんと同じように同居をさせられ、その後、不審な死を遂げた女性がいたことも新たにわかった。

主犯とされる山本美幸被告の人物像

山本美幸被告:
起訴されているすべての内容は間違いで無罪です

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弁護士を通じて行ったテレビ西日本の取材に対し、事件について関与を全面否認した山本美幸被告。一方、共犯者として起訴された男は山本被告についてこう語る。

岸颯被告:
山本美幸という人間は、人の皮を被った化け物ですよ

20代のころから、貸金業を生業としていた山本被告。

その姿は、九州最大の歓楽街・中洲で頻繁に目撃されていた。中洲のホストクラブで「みゆ姉」と呼ばれ、羽振りの良さはホスト業界で有名だったという。

ホスト関係者:
いろんなホストを連れて飲みに行ってドンパチして。最低でも10万円は堅いっちゃないかな。ほぼ毎日のように飲み歩いてたんじゃないか

多くの債務者から搾り取ったとみられる金で、派手に飲み歩く生活。

さらに山本被告は、その飲食代を「新たな恐喝」に利用していたと、かつて同じ被害にあった高畑瑠美さんの兄、亮太さんは証言する。

高畑瑠美さんの兄・亮太さん:
飲み行くよっていう風に言われてて、お金が無いけど行って良いんですか?って言ったら「構わん、構わん」と言われてたのでついて行ったが、「あのときのお金出してたわけやけん、お金出して」というのは言われた

「おごるから大丈夫」と連れ出しながら、後日「飲み代が未払いだ」として架空の借金を背負わせる。

そして、トラック運転手の田中政樹被告に暴力団員を演じさせ、相手を追い込んでいくのがいつもの手口だったという。

学生時代は一匹狼のスケバン

同級生:
お父さんがヤクザ関係の仕事していて、関わるといいことはないみたいな話が出ていた

佐賀・基山町で育った山本被告。

中学時代から”ヤクザ”というセリフを多用していたと同級生は話す。

同級生:
変な人です。強がる。ウソばっかりつく。自分を強く見せたいんじゃないですか? "私はヤンキー”みたいな

同級生:
校舎の裏でたばこ吸ったり、シンナー吸ったりとか

ーーそれは1人で?

同級生:
1人で。「シンナー吸う?」とか誘われたこともある

いわゆる「スケバン」として有名だったが、特に親しい友人はおらず「一匹おおかみ」だったという。

少女時代から多用してきたウソ。

そして田中被告に暴力団員を演じさせて、多くの人を借金地獄に陥れたとみられる山本被告。

被害者たちが返済に行き詰まると、次の手段としていたのが「戸籍の操作」だった。

これは、山本被告の共犯者として起訴された岸颯被告の戸籍謄本。なぜか、瑠美さんの兄・亮太さんと養子縁組を結び、戸籍上は親子となっている。

岸被告はその理由について、次のように説明した。

岸颯被告:
私が亮太さんの代わりに金を集めることになり、その流れで戸籍のつながりができた。やり方は山本さんの指示によるものですが、具体的な内容は法律に触れるため言えません

戸籍を動かし、違法な手口で金を作っていたことを認めたのだ。

さらに取材班は書類の中に「ある女性」の名前を見つけた。
酒井美奈子さん。

酒井美奈子さんは、岸被告と戸籍上は2週間だけ婚姻関係にあった女性だ。関係者によると、酒井さんは今から3年前、山本被告らと同居生活を送ったのちに病死したことがわかった。

しかし、岸被告は酒井さんの死についてこう証言する。

岸颯被告:
美奈子さんが亡くなったのは、私の運転する車の後部座席で、死因は「急性心不全」でした。ですが、私はいまでも美奈子さんは病死とは思っていません

病死と思っていないとは一体どういう意味なのか?9月15日に開かれた田中政樹被告の公判で、その疑念はさらに深まった。

被告たちが、瑠美さんの遺体を運ぶ最中に交わした会話の録音が法廷で再生され、その中に次のようなやりとりがあったのだ。

山本美幸被告:
美奈子のときはアザも何もなかったけんよかっただけよ。アザがあったら絶対調べられる

岸颯被告:
戸籍も調べられるかも

山本美幸被告:
戸籍調べられたらアウトよ。亮太のことから全部バレるわ

田中政樹被告:
亮太のこと?

山本美幸被告:
亮太のことから美奈子のことまで全部や

「山本被告は人の皮を被った化け物」

事件後、岸被告は山本被告についてこう語った。

岸颯被告:
私は4年間、一番身近で山本さんの行動を見てきました。なので山本美幸とは一体どういう人間なのか、誰よりも理解しているつもりです。山本美幸という人間は、人の皮を被った化け物ですよ

酒井さんと同じように、山本被告と同居させられ様子がおかしくなっていった高畑瑠美さん。そんな中、夫の裕さんにかかってきたのが、架空の借金の返済を要求してくる山本被告たちからの脅しの電話だった。

山本美幸被告:
あなたに貸したお金はきちんと返済してくださいと約束しておりますので、返済をして下さい

田中政樹被告:
弁護士入れたところで…これが脅しとか言うんやったら、ゾッとするわ。マジ

「なんとか瑠美さんを山本被告から引き離したい」
裕さんは3時間にわたった脅迫電話を録音し、警察署に駆け込んだ。

しかし、佐賀県警の対応は

鳥栖警察署・A巡査対応音声:
いまから3時間(録音を)聞くというのは、あれなので。自分は5分くらいしか聞いていないですけど。どうしようもない状況じゃない

3時間ある録音データをほとんど聞かず、被害届の提出を断った。

高畑瑠美さんの夫・裕さん:
警察署を出て行くときは放心状態に近かった。警察が動いてくれないんやったらどうしたらいいんだろうって

そして、このわずか1カ月後、事件は起きた。

(テレビ西日本)

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