被災した高田小学校…復興教育を次の段階に

被災地では、東日本大震災を知らない子供たちに震災をどう伝えるかが課題となっている中、震災と正面から向き合い復興教育を進めることにした岩手・陸前高田市の高田小学校。

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真新しい校舎で勉強をする児童たち。
高田小学校は東日本大震災で校舎の1階が浸水する被害を受けた。

児童のほとんどが高台に避難したが、保護者に引き渡したあと、7人が犠牲になった。
その後、2019年の2学期から新しい校舎となった高田小学校。
復興教育ではこの9年間、心のケアに重点を置いて行われてきた。

高田小学校・金野美惠子校長:
被災地における現状を、ここで生まれた子供たちが知らないまま過ごしていいのか葛藤がありまして

「地域の人と関わる」ことで学ぶ

母校である高田小学校に2020年4月に着任した金野美惠子校長。
復興教育を次の段階に進めるため、どんな授業がいいのか先生たちと話し合った。

高田小学校・菊地綾子主幹教諭:
ダイレクトに言えなかった9年間。ワークショップの時に先生方からは、これからは逃げないで子どもたちに復興教育を進めていきたいとか

これまでの防災学習に加え、新たに震災のことを語り継いできた「地域の人と関わる」ことを授業に取り入れることにした。

11月17日は、授業参観。各学年でこれまで学習してきた成果を発表した。

児童:
復興教育で行った活動を通して学んだことがたくさんありました。

児童:
命の大切さや家族の大切さ、災害時の備えなどについて伝えます

震災伝える絵本…考えた「できること」

4年生は、津波で長男を亡くしてしまった淺沼ミキ子さんから事前に話を聞き、命の大切さについて学んできた。

淺沼さんは、同じような悲劇が起きないよう息子の話を絵本にし出版した。

また、2019年は有志の人たちと一緒に21本のハナミズキの木を避難路の目印にしてもらおうと、海側から高台へと続く道に植えた。

絵本の原作者・淺沼ミキ子さん:
10年経つので、前の陸前高田を知らない子たち、街並みもわからない。何があってこういう状態になったのか、それぞれが考えられる子たちになってほしい

授業では子供たちが一生懸命覚えた絵本の読み聞かせを発表した。

児童(絵本:『ハナミズキのみち』朗読):
お母さん、おねがい。ぼくが大すきだったハナミズキの木をたくさんたくさんうえてね

児童(絵本:『ハナミズキのみち』朗読):
津波が来たとき、みんながあんぜんなところへにげる目じるしに、ハナミズキの道をつくってね

淺沼さんの悲しみに触れた子供たちは、自分たちにできることを考え、草取り活動をしたことを発表した。

児童:
草取りはハナミズキのためにと思うと疲れてこなくて、逆に草取りが楽しくなってきました

児童:
地域の方々にも呼びかけるなど、一緒にハナミズキの道を守っていく活動が続けられたらいいなと思っています

「伝えていかないといけない」

金野校長は、震災当時赤ちゃんだった4年生たちにある思いを伝えた。

高田小学校・金野美惠子校長:
生まれたばっかりの0歳とか1歳のみんながいることが希望だったんだって。校長先生もお父さんとお母さんを津波で亡くしたけど、やっぱり校長先生を救ってくれたのも学校の子どもたちでした

授業を参観した保護者も同じ思い。

保護者:
お母さんたちはとっても大事に思ってて、みんなの顔見ながら毎日乗り越えてこれたと思います

保護者:
みんな親たち、たくさん辛い思いをしたと思うんです。それを見ながら思い出して、ただ、わたしたちも伝えていかないといけない

震災を知らない子供たちにどう伝えるか、これまで葛藤を抱えてきたが、高田小学校はこの日、一つ前に進むことができた。

高田小学校・金野美惠子校長:
多くの人の支えがあってきたというのを感じられる今回の学習だった。ですから子供たちもハナミズキを助けたいっていうね。良かった良かった

何もかも失ってしまった街から立ち上がった大人たちの強さを肌で感じた子供たち。
優しく、たくましく成長している。

(岩手めんこいテレビ)

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