水とコメで有名な北海道・東川町に、日本酒の「酒蔵」が誕生した。作り手の想いと、東川町の可能性に迫る。
酒の貯蔵タンクを名残惜しそうに見つめる、三千櫻酒造の山田耕司さん。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
これはうちで使っていた貯蔵タンクなんですけれど、向こうでも使えるので使えるものは持っていく。向こうでもがんばってほしいよね。あとはここ(岐阜)の思い出も連れて行こうと

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岐阜県での酒造りに一区切りをつけ、北海道東川町移転を決めた。

東川町・松岡市郎町長:
山田さんから熱い思いの提案書をもらって全会一致で可と決定した

2020年1月、建設費の半分以上を国と町が補助する公設民営の酒蔵に公募で選ばれた三千櫻酒造。

岐阜県・中津川市はのどかな山あいで、三千櫻酒造は143年続いてきた。
杜氏の山田耕司さんが作る酒はまろやかで綺麗な味と評判だったが、なぜ、いま北海道・東川町に引っ越したのか。

杜氏としてもっと高い品質を目指して

三千櫻酒造・山田耕司さん:
ここでできる精一杯のクオリティを目指して作っていたんですけど、杜氏としてお酒を作る人として、もっと高いところにいきたいという欲求はものすごくあるから。寂しいんだけどね

「三千櫻」というブランドを守るために。岐阜を離れないといけない切実な理由と、東川町が持つ魅力が山田さんの心を動かした。

岐阜県・中津川市で143年続いた三千櫻酒造。
10月、移転をするための引っ越し作業に夫婦で追われていた。

妻・和枝さん:
本当はこちらから一軒一軒(引っ越すことを)言ってはあるけれど、再度にあいさつができる余裕があればよかったんですけれど、バタバタで…

蔵ごと移転するという、前代未聞の試み。なぜ岐阜を離れなくてはならないのか。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
外壁はもっとボロいぜ。裏回ると壁が結構落ちちゃってて。全体的に建物が向こうに傾いているので

築130年以上の蔵は壁が崩れ、酒を仕込む麹室も傾き、これ以上ここで酒を造ることが困難な状況だった。
そこで国や自治体からの新たな補助が見込める新天地・東川町への挑戦にかけたのです。

温暖化によって西日本の米の質が変わってきていると感じていた山田さん。
大雪山の湧水とその水を使った、北海道内でも評価の高い米どころ東川町の持つ高いポテンシャルは、魅力的だった。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
条件がよければもっといいものができるので、寂しいんだけどね。歴史で飯は食えないので

職人としてさらなる高みを目指したい。地元の人たちも惜しみつつ山田さんにエールを送る。

中山道大鋸・大鋸伸行さん:
残念ですね、地元としては。新しいことにチャレンジされるのですごいなという思いと、僕らも三千櫻っていうお酒は手作りのいいお酒だよってお客さんに推していたので

岐阜で作った最後の三千櫻、一杯飲んでもらった。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
この土地(岐阜)の味がするよね。覚えました。またこれに近いものを作ろう。これ以上のものはできると思います。頑張ります

明治から続く「岐阜」の三千櫻。ついに、蔵じまい。

新天地・北海道の新酒蔵で酒造り

11月。東川町の田んぼの前に完成し、町民にお披露目された三千櫻の新酒蔵。
この綺麗な施設で東川町産の酒造り挑戦が始まる。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
ここは麹室(こうじむろ)という酒のための麹を作る部屋。ここが一番大事なところ。酒に入れる麹をどうやって作るかで、酒の出来がずいぶん変わってくるから

中津川で使っていた、愛着のある貯蔵タンクも東川町に到着。場所は違えど、三千櫻の歴史は北の大地に受け継がれている。

三千櫻酒造・山田耕司さん:
プロ集団なので、どこでも酒はできなきゃいけないとは思っている。お世話になった方がたくさんいるので、そういう方に少しでも早くお届けできたらなと

水とコメの町「東川町」にできた念願の酒蔵。年明けには東川町産の日本酒が完成する予定。

(北海道文化放送)

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