「ケガでふがいないシーズン」

「ケガもありましたし、ふがいないシーズンだったと思います」
62試合で打率.216、5本塁打、3盗塁。相次ぐケガもあり、本領発揮とはならなかった。ソフトバンクからFA加入1年目の福田秀平(31)だ。

この記事の画像(6枚)

外野のレギュラーとしてシーズン完走を期待された今季は、開幕3日前の練習試合でデッドボールを受けた。6月19日の開幕戦に「1番・センター」で強行出場するも、試合後に「右肩甲骨の亀裂骨折」と判明し、早々に離脱を強いられた。7月23日に復帰するも、今度は8月29日に「右恥骨筋損傷」で2度目の離脱となった。 

9月23日に再び復帰。「優勝するためには勝ち越さなければいけないヤマ場と思っていた。ケガをして迷惑をかけたので」と25日からのソフトバンクとの首位攻防3連戦は13打数6安打6打点。ケガと不振に焦り苦しんだ男が古巣相手に結果を残した。

苦しい時こそ声を出す

10月3日、西武との一戦。値千金の同点4号3ランを放った福田は不振で自信を失いつつあった若き主砲・安田尚憲(21)にベンチでこう言葉をかけた。「ひるんだら負けやぞ!」と。安田は7回にライトスタンドに23試合ぶりの一発となる6号3ランをたたき込んだ。

10月9日からまたもソフトバンクとの首位攻防3連戦。この3連戦で首位浮上へ。FA移籍した意味を証明するーーそんな思いで臨んだが、結果は振るわなかった。3戦とも「6番・センター」でスタメン起用されるも、前回とは打って変わって12打数1安打だった。3連戦で三振は8つ。体に近い速球と外に逃げる変化球に自分のスイングをさせてもらえなかった。

しかし福田はベンチに戻ると、身を乗り出し、声を出し続けていた。
結果が振るわずとも、声を出すーーこの姿こそが、今季のチームに刺激を与えた。

CS進出を導いた値千金の声出し

シーズンも佳境の11月。西武とのし烈なCS進出争い。5日、7日、8日とスタメンに福田の名前はなかった。それでも試合前の円陣で毎回、声出しを担った。「CSに進出するか瀬戸際だったので、盛り上げたかった

古巣ソフトバンクの西田哲朗(29)を真似て『あたりめ(するめ)』を用意して声出しに臨んだ。「きょうも、あたりめぇのことをあたりめぇにやって勝ちましょう!」とユーモアを交え、気合を入れた。

勝てばCS進出が決まる11月8日の西武との直接対決。平常心が求められる大一番で「あたりめぇのことをあたりめぇに」プレーしたチームは今季4年ぶりのCS進出を決めた。
苦しい時こそ声を出す。今季の福田の思いを象徴する値千金の声出しだった。

(フジテレビ・加藤忍)

加藤忍
加藤忍

早稲田大学卒業。フジテレビ入社。スポーツ局すぽると!ロッテ担当、ヤクルト野球中継などを経て現在は報道局兼スポーツ局。