自民党が後期高齢者の医療費窓口負担割合引き上げの是非を議論
12月1日、自民党の人生100年時代戦略本部は少子化対策や医療改革について議論し、提言を取りまとめた。
この記事の画像(4枚)約1時間半の会議の中では特に「後期高齢者の医療費窓口負担割合の引き上げ」について多くの“批判”と“反対”の意見が噴出した。さらには「選挙を控えている」などと、来年秋までに行われる衆議院選挙を意識した発言まで飛び出した。
高齢者の切り捨てだ!負担増に反対の意見が続出
政府が検討している後期高齢者(75歳以上の高齢者)が医療機関で支払う窓口負担割合を現行の1割から2割に引き上げる案について、自民党は、2019年12月に取りまとめた際には「一定所得以上の方に限っては、その医療費の窓口負担を引き上げる」としていた。
いわゆる団塊の世代が後期高齢者となるのを前に、医療費の増大を抑え、現役世代の保険料で運営する健保組合のさらなる負担増を避けるための引き上げであり、一方で低所得の高齢者の負担割合は増やさない措置を盛り込んだものだ。
その後、政府から窓口負担を引き上げる高齢者の対象範囲について、所得が多い順に後期高齢者全体の上位20%、上位25%、上位30%、上位38%、上位44%とする5種類の案が示されていた。
この政府案に対して今回の会議に出席した国会議員からは「現役を助けるという意味でやはり2割負担を最低でも(求めたい)」「負担を増やすとしても2割など低い値をお願いしたい」など、窓口負担割合の引き上げに前向きな声もあがった。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中での医療費負担引き上げの議論になったことから、「なんでこの時期なのか」という声が出るなど引き上げに否定的な意見が大半を占め、次のような声が噴出した。
「切り捨てはやめていただきたい」
「高齢者は若者と違って収入が増えない」
「コロナへの感染のリスクがあるなかで、重症化のリスクがある高齢者の受診抑制に繋がる」
選挙に不利との本音まで出るも自民党としては一定の引き上げを求めることで結論
さらに会議の終盤では若手議員らから、高齢者に負担を強いる政策は次の衆院選挙で不利になるといった本音まで飛び出した。
「2009年に我々政権を失った時のことを色々考えました。後期高齢者医療制度を議論したときに、街中で前期後期なんて随分失礼じゃないかと言われた。自民党が慢心していたんじゃないのと、自分たちが切り捨てられたということになったらまた同じこと(政権交代)になりかねない」
「我々も選挙を控えております。たった上位20%と言っても誰もそんなことは聞かなくて、負担が増えた自民党はそういう政権だろうという話になる」
今回のこうした議論を踏まえ自民党は、後期高齢者の自己負担のあり方について、「一定所得以上の方に限ってその医療費の窓口負担割合を引き上げるべき」と去年と同様の見解を繰り返したうえで、「2022年の出来るだけ早期の実施が望ましい」と結論付けた。
これを受け政府は2日、菅首相、加藤官房長官、麻生財務大臣、田村厚生労働大臣が会談し、後期高齢者の窓口負担引き上げ問題について協議したが、公明党からも引き上げへの反対論が噴出する中、難しい判断を迫られている。
(フジテレビ政治部 福井慶仁)