秋の観光シーズン真っ只中の富山で、観光客が増えていると感じる人は多いのではないだろうか。県民によく知られた観光地が、SNSをきっかけに若い世代の人気を集めている。立山の「日本のスイス」という呼び名、魚津の土産物店に並ぶ「レトロ感」あふれる品々、そして南砺市井波を「Hidden gem」と呼ぶ海外客まで、変わりつつある富山の観光事情を追った。

平日でもスーツケースの観光客 とやマルシェは1割増

富山ならではのグルメや土産がそろう「きときと市場とやマルシェ」。2日の昼時に訪れると、平日にもかかわらず、スーツケースを手にした観光客でにぎわっていた。
沖縄から訪れた20代の旅行者は「山に登りたいなと思って。沖縄は山がなくて」と話す。東京から来た20代は「雪景色に感動したし、それが見たくてきた」、30代は「高岡に行ったが、景色も素敵でご飯もとても美味しかった」という。
運営会社によると、9月のシルバーウィークから先月末までの売上は、ニューヨークタイムズに取り上げられて話題となった去年より1割ほど増えた。谷圭寿館長は「週末を中心に特に20代の若い女性も増えている」と話す。SNSの効果もあり、立山黒部アルペンルートや黒部峡谷を訪れた帰りに立ち寄り、富山ならではのグルメを味わう人が多いという。
「日本のスイス」立山がSNSで拡散

最近のSNSでは、立山の写真や動画が「日本のスイス」という言い回しとともに広がっている。立山黒部貫光によると、今年の入込客数は例年と比べて好調で、特に若い世代が増えているという。

タイから来た旅行者は、インスタグラムで富山の動画が数多く話題になっているのを見て訪れた。「上高地もきれいですが、観光客が多くて混雑しているので、みんな新しい観光スポットを探している」と話す。兵庫・京都から来た人は「『日本のスイス』から始まり、それに行くなら富山も一緒に観光したいなって」と、翌日のアルペンルートを楽しみにしていた。

東京から来た人は「ダムと紅葉と山と自然を求めに来ました」と語り、京都から来た人はTikTokで「立山いいよ」という動画を見たのがきっかけだったという。「きれいな写真が取れたらバズってほしいなって」との声も聞かれた。
昭和・平成初期の「フロッキー」が新鮮 魚津「真珠コーナー」


SNSで客層が変わった場所の一つが、魚津水族館に隣接する土産物店の「真珠コーナー」だ。真珠の即売から始まり、開店から50年以上。天然石や化石、貝殻、はく製など、国内外から買い付けた品々が「土産」の枠を超えて所狭しと並ぶ。

この日は平日にもかかわらず、若い女性の姿が目立った。埼玉から来た人は「友達からこの真珠コーナーの商品を買ってきてってリクエストがあって」、長野県から来た人は「ここに来るために!インスタで見て」と話す。「お土産屋さんがインスタ映えするって。1年前くらいから流行りだして」という声もあった。


お目当ては、しっとりした起毛感のある「フロッキー」加工の小さな置物だ。ここ数年SNSで話題となり、特に若い世代の心をつかんでいる。昭和から平成初期の雰囲気が漂う昔ながらの商品が、若者には新鮮に映るようだ。長い歴史ゆえにもともと在庫が豊富で、店が独自に発注したオリジナルカラーもそろい、その充実ぶりは全国でも珍しいほどだという。


渡辺良太郎さんは「『新幹線乗って来た』というような子たちは多い」と話す。「これが何に刺さるのかっていうのがよくわからないんだけど、お客さんたちが楽しんでもらえるんで、いろいろなカラーも出している」と笑う。



渡辺さんが手作りする貝のランプも最近の人気商品だ。客からは「(店の)レトロな雰囲気も素敵だし。いま店を新しくつくったんじゃこの雰囲気は出せないと思う」との声が上がった。先月発売したロゴ入りのステッカーやマグネットなどのオリジナル商品も注目されている。


渡辺さんによると、客からは「今の新しい水族館に行っても同じような商品が並んでる」という声があるそうだ。「ここに来れば何かあるんじゃないかなと宝探しみたいな感じで、店の中をグルグル回っていますね」。魚津水族館の来館者も前年の同じ時期より1割増えており、真珠コーナーとの相乗効果が期待される。

南砺市井波は欧米客の「Hidden gem」

木彫刻の街として知られる南砺市井波でも、外国人の姿があちこちで見られた。

3年前の2月にオープンしたベーカリーカフェ「LAW」は、天然酵母のパンが売りの人気店だ。周辺に古着屋やビール店などもでき、若い世代の客が増えるなか、最近はインバウンド客が毎日訪れるようになった。大田直喜さんは「富山県だけではなくて石川県、旅行で来られる方、外国から来られるかたも多くいらっしゃる」と話す。

街のシンボル、瑞泉寺にも変化があった。国の重要文化財に指定されることが決まった先月16日以降、週末の入り込み数はそれ以前の倍近くになった。ヨーロッパをはじめとするインバウンド客が目立つという。
シンガポールから訪れた8人組のツアー客は、10日間で福井、立山、新潟、山形を巡る。アメリカ、フランス、イタリア、オランダなど欧米からの観光客もいた。旅行会社は、五箇山や立山を訪れる前に立ち寄る場所として井波を推している。

添乗員は「シンガポール人は日本が大好きで大阪とか京都とかよく行くが、行ったことのないところを紹介したいと思って井波を」と話す。別の添乗員は「白川郷は素敵なところ。ただ、海外の旅行者にとって井波は本当の日本という感じがする。英語でHidden gem。他の外国人は来ないのでとっても特別なところ」と語った。

「素通り県」から脱却できるか
去年1年間に富山に宿泊した外国人は38万人あまりで、前の年より54.5%増え、右肩上がりが続いている。一方、日本人を含めた宿泊者数は全国38位にとどまり、まだ埋もれている状況だ。
素通り県からの脱却に向け、SNSで掴んだチャンスを活用して新たな客層を呼び込む取り組みが注目される。
(富山テレビ放送)

