人口減少が進み、水道料金収入の減少と設備の老朽化という課題に直面する秋田・仙北市。2026年9月に地域おこし協力隊に着任した石井ゆめみさんは、水道管に頼り切らない新たな仕組みの可能性を探りながら、持続可能な地域インフラの実現に挑んでいる。
老朽化する水道網と人口減少の壁
仙北市役所上下水道課を拠点に活動する石井ゆめみさん(26)。「水インフラコーディネーター」として、市の上下水道の在り方を見直す取り組みを進めている。
仙北市が管理する水道管の総延長は約388キロ。その大半が今後、法定耐用年数の40年を迎える。
一方で給水区域内の人口はこの10年で約2割減少し、水道料金収入も縮小している。
石井さんは現状について、「水道管はかなり老朽化が進んでいて、管路の更新が必要になってくる。更新のための水道料金収入は人口減少で縮小している。老朽化が進む一方で、更新のためのお金は減っていく“二重の課題”がある状況」と語る。
市によると、水道管を新たに1キロ整備するには約1億円が必要とされ、将来的な財源確保が大きな課題となっている。
現場で暮らしながら実証実験
秋田市出身の石井さんは、東京大学教養学部で人口減少下でも持続可能な社会の仕組みを研究。卒業後はソフトバンクに入社し、過疎地域のインフラを自立・分散させる事業に携わった。
その中で着目したのが、水道インフラだった。
石井さんは2024年10月末から仙北市西木町上桧木内で、水道管に頼らない生活を目指した実証実験を実施した。生活排水や雨水を浄化し、家庭内で循環利用するシステムを導入。自ら現地で約9カ月間暮らしながら、寒冷地での運用の可能性を検証した。
生活排水は専用装置で浄化して再利用し、雨水は殺菌処理を施して飲み水として活用する仕組みだ。
冬を越えた分散型インフラの可能性
実験では、凍結への対応も大きなテーマだった。
石井さんは「凍結防止のための電気代がどれくらいかかるのか、具体的な数値を得ることができ、9カ月間水が止まることなく暮らすことができたので、技術的な検証ができた」と振り返る。
その結果、生活排水の再利用が可能であることや、秋までにためた雨水で冬を越せることなどを確認。
さらに試算では、このシステムを導入した場合、上下水道を整備・維持管理するケースと比べて、40年間で約12億円のコスト削減が見込まれることも分かった。
秋田で挑む 新しいモデルづくり
実験終了後、一度は東京へ戻った石井さん。しかし、地域住民との交流や仙北市での暮らしに魅力を感じ、秋田で水インフラの課題に取り組むことを決意した。
2026年1月にソフトバンクを退社し、翌2月には人口変動に依存しない地域基盤の実現を目指す「conido株式会社」を秋田市で設立。そして9月、地域おこし協力隊として仙北市へ戻ってきた。
「秋田での仕事が一番面白いし、自分にとっても社会にとっても大きいものになる。ここでの実験が自分の中で信じられた良い仕事だったのが大きい」と石井さんは話す。
現在は住民アンケートを通じて各家庭の水利用の実態や困りごとを調査し、地域に合ったインフラの姿を探っている。
過疎地から示す“未来の当たり前”
人口減少や過疎化は、地域にとって厳しい課題である一方、新しい仕組みを生み出す契機にもなり得る。
石井さんは「水インフラの事例が『イケている』といわれるような事例を作り切ることをやりたい。過疎や人口減少問題は、新しい在り方を考える契機にもなる。地域に適した水インフラの在り方や新しい事例を1個打ち立てられたらと思う」と意気込む。
老朽化と人口減少という難題を抱える地方だからこそ生まれる新しい選択肢。
石井さんの3年間の挑戦は、仙北市だけでなく全国の地域インフラの未来を考える試みでもある。
(秋田テレビ)

