秋田市で国内最大級となるAIデータセンターの整備構想が相次いで浮上している。背景にあるのは、洋上風力発電をはじめとする豊富な再生可能エネルギーと、首都圏集中を見直す国の方針だ。巨額の投資や税収増への期待が高まる一方、地域との対話や環境への配慮も問われている。
国内最大級の計画が秋田に
秋田市では現在、2つの大規模AIデータセンター構想が進んでいる。

1つは、下新城地区の再エネ工業団地を候補地とする計画だ。
最大受電容量は500メガワット。建設費は約2兆円規模とされ、2030年代前半の整備を目指している。アラブ首長国連邦(UAE)が出資を検討し、国内大手企業なども協力する見通しだ。

もう1つは、東北電力が秋田市飯島の秋田火力発電所跡地で検討している計画で、規模は1ギガワット。実現すれば、さらに大規模なAIデータセンターとなる可能性がある。
データセンターは、ホームページの運営やデータ保存などを担うサーバーを設置する施設だ。近年はChatGPTやGeminiに代表される生成AIの普及によって需要が急拡大しており、大量の計算処理に特化したAIデータセンターの整備競争が世界的に激しくなっている。
なぜ秋田が選ばれたのか
国内のデータセンターは6~7割が関東圏、3割ほどが関西圏に集中している。
こうした中、東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授は、秋田の優位性として「再生可能エネルギー」と「分散立地」を挙げる。
江崎教授は「秋田沖の洋上風力発電が存在していることが1つ。化石燃料依存ではない形で進められるということ。もう1つは東京電力とは違う電力会社に入ってくるので、関東の災害との独立性が担保される。日本海側と太平洋側で分散の観点からも非常にいい場所」と話す。
AIデータセンターは莫大な電力を必要とする。
秋田県内では洋上風力発電の導入が進み、秋田市沖などで将来的に220万キロワット(原発2基分に相当)の発電が見込まれている。
これは下新城地区で計画されている500メガワット規模のデータセンター受電容量の4倍以上に相当する。
税収増への大きな期待
データセンター整備による最大のメリットとして期待されているのが固定資産税収入だ。
計画を進める秋田市のIT企業「エスツー」の須藤晃平代表取締役は、「機械を仮に1兆5000億円で買ったとして、われわれが支払う市への固定資産税は、1.6%となると240億」と試算する。
秋田市によると、市税収入は年間約452億円。
実際には設備規模や耐用年数などによって変動するものの、仮にこうした規模の投資が実現すれば、市の財政へのインパクトは極めて大きい。

さらに、エスツーが利用を見込むサーバーは、500メガワットの受電容量全体の3~4割程度だという。
残りについては国内外の企業がサーバーを持ち込んで利用することを想定しており、高額な設備が集積するほど固定資産税収入の増加が期待できる。
若者を引き留める産業になるのか
事業者や自治体関係者は、税収だけでなく新たな産業集積にも期待を寄せる。
AI関連企業やソフトウェア開発企業が集まり、周辺に新たなビジネスが生まれれば、県外流出が続く若い世代にとって魅力的な雇用創出につながる可能性がある。
これまで製造業やエネルギー産業が地域経済を支えてきた秋田にとって、AI関連産業は新たな成長分野となるかもしれない。
「電力・熱・水」への懸念
一方で、課題もある。
江崎教授は、AIデータセンターを巡る代表的な懸念について「今よく言われているのは、電気を使いすぎる、熱を出す、水をたくさん使う。大体この3つが大きなデメリットと言われている」と話す。
特に海外では、急増するデータセンター需要によって送電網整備の負担が問題となっている。
「たくさんの電力を消費するという問題に関しては、電力を送電するところが新たに必要になってお金がかかるということがアメリカで問題になっている」という。
ただ、秋田の場合は再生可能エネルギーの供給力と送電網の整備状況から、その影響は比較的小さいとの見方もある。
最新技術で環境負荷を抑える
事業者側は、従来型のデータセンターとは異なる冷却技術の導入を計画している。
エスツーの須藤代表は、「面白いのは、水は一滴も使わない。液体で冷やすので、サーバー自体にファンがついていない。ファンがないということは音がない。自宅にある冷蔵庫と変わらないような性能になっているのが一つの安心かなと思っている」と説明する。
専用の液体を循環させる液体冷却方式を採用することで、水使用量の削減や騒音対策、熱の排出抑制を図る考えだ。
さらに須藤代表は、「われわれが2030年以降にデータセンターをつくるころには、素晴らしい環境配備されたデータセンターができるんじゃないかと思っている。その最新鋭の技術を私たちは追っていくし、地球環境に、秋田の環境に一番いいものを選んで持ってこようということが今回のミッションになっている」と話し、環境負荷の低い施設整備を目指す姿勢を示している。
成功の鍵は“地域との対話”
全国ではデータセンター計画を巡り、住民による反対運動が起きた事例もある。

江崎教授は、その背景に事業者側の説明不足があったとみている。事業者と自治体、地域住民が十分な対話を重ねないまま計画が進められると、不安や誤解が広がりやすいという。
AI時代の基盤となるデータセンター。その巨大プロジェクトは、秋田に税収や雇用、新たな産業をもたらす可能性を秘めている。一方で、地域社会とどう共存していくのかも問われている。
秋田が日本のAIインフラを支える拠点となれるのか。今後の計画の行方に注目が集まる。
(秋田テレビ)

