海水温の上昇などの影響で漁獲量の減少が続くなか、秋田・男鹿市では「とる漁業」から「つくり育てる漁業」への転換を模索している。その一つが五里合地区で進められているクルマエビの陸上養殖だ。試行錯誤を重ねながら、漁業の新たな収益の柱づくりに挑んでいる。
漁獲減少を受け広がる養殖への挑戦
秋田県内では海水温の上昇などを背景に漁獲量の減少が続き、漁業者が安定した所得を確保することが難しくなっている。
県全体の漁獲量の約6割を占める男鹿市では、収益性の高い魚介類の養殖に力を入れている。
船川地区の「男鹿つばきサーモン」、若美地区の高級魚タマカイ、戸賀地区のギバサやマガキなど、それぞれの地域で特色ある取り組みが進む。
その中で五里合地区が挑戦しているのが、クルマエビの陸上養殖だ。
地元漁業者が挑むクルマエビ陸上養殖
天然のクルマエビなどが多く水揚げされる五里合漁港では、県水産振興センターの指導を受けながら、地元漁業者でつくる「五里合クルマエビ生産研究会」が実証試験を続けている。
施設には直径4~5メートルのいけすが4基あり、そのうち2基で約4000匹のクルマエビを飼育している。
出荷の目安となる大きさは11~15センチ。2026年7月に宮崎県から取り寄せた約3センチの稚エビは、3カ月ほどで15センチ前後まで育つものもあり、生育は順調に見える。
しかし、養殖は決して簡単ではない。
最大の課題は「生かし続けること」
研究会の杉本節三さんは、「エビを生かすということが一番難しい。どうしたら死なないのか、どうしたら生きてくれるのか。それが足掛け6年目になるけれど、まだ分からない」と、養殖の難しさを語る。
クルマエビは繊細でストレスに弱く、水質や飼育環境の変化の影響を受けやすい。
2026年は1万匹の稚エビを放流したものの、生き残っているのは約4000匹。ストレスや水質環境など様々な要因が考えられるが、明確な原因は特定できていない。
研究会では2カ月に1回いけすを入れ替え、砂を交換するなど環境改善を続けている。
「砂を動かさなければ砂が悪くなってしまう。そうすればエビも悪くなる。こうした砂を動かす作業が大事。餌は常に食べるけれど、環境も良くしてやらないと」と杉本さんは話す。
市も支援 所得向上への期待
男鹿市も事業化に向けた支援を進めている。
2026年度当初予算には、クルマエビの稚エビ購入費として250万円余りを計上した。
男鹿市農林水産課の谷鉄也主幹は、「クルマエビは単価が非常に高い魚種。1キロ1万円以上するものでもあるので、漁業者の所得の向上につながればと考えている」と、クルマエビ養殖への期待を話す。
クルマエビは道の駅おが「オガーレ」で販売され、2022年度の50匹から2024年度には1200匹まで出荷量を伸ばした。
一方で、2025年度は養殖がうまくいかず出荷ゼロ。安定生産の難しさが浮き彫りとなっている。
次世代へつなぐ「つくり育てる漁業」
実証試験は5年目を迎え、2026年度は12月から2027年1月にかけて1000~1500匹の出荷を目指す。
市農林水産課の谷主幹は、「漁師は本当にやる気がある。できれば本格的に安定供給できる体制をつくっていきたい」と今後を見据える。
また、研究会の杉本さんは、天然資源に頼るだけでは将来の漁業を支えきれないと話す。
「底定置網漁も限りある資源なので、私たちの代だけでなく、子供や孫の代までこの事業を継続していけるように、協力しながらやっていきたい。いい事業だと思う」と、養殖に未来を託そうとしている。
まずは、仕入れた稚エビの1割以上を安定して出荷できる体制づくりが目標だ。
男鹿の新たな特産品として定着するか、漁師たちの挑戦が続いている。
(秋田テレビ)

