秋田県では人工林の管理不足が課題となる中、五城目町で森林を観光や教育の資源として活用する取り組みが始まっている。森の中の宿泊施設を拠点に、人やお金の流れを生み出しながら森林整備につなげようと挑戦する小原祥嵩さん。その思いと取り組みを追った。
管理が求められる人工林
県土の7割以上を森林が占める秋田県。その半分ほどは木材生産などを目的に人が植え育てる人工林だ。
人工林は適切な伐採や間伐などの管理が欠かせない。手入れが行われないまま放置されると、倒木や土砂崩れのリスクが高まるほか、樹齢の高い木が増えることで二酸化炭素の吸収量も低下するとされる。
しかし、林業の担い手不足などを背景に、十分な管理が行き届かない人工林が増えている。森林をいかに守り、次世代へ引き継いでいくかが大きな課題となっている。
「何もない」ではなく、価値がある森
人口7000人余りの五城目町。500年以上続く朝市をはじめ、古くから受け継がれる歴史と文化が息づく町だ。
一方、町の8割を森林が占める豊かな自然は、大きな魅力であると同時に活用のあり方が問われている。
その森に新たな価値を見出したのが、小原祥嵩さんだ。
兵庫県出身の小原さんは、16年前に教育事業の会社を設立。事業の拠点の一つを五城目町に置いたことをきっかけに地域と関わりを深め、6年前に移住した。
「移住してきたときに、地域の人が『よく来てくれた』と言ってくれたが、そのすぐ後に『でも、なんでこんな何もないところに』と色々な人が言っていた。でも、そんなことはない。この緑豊かな五城目を、もっとみんなが味わえるようになったらと思ったのが始まりだった」
小原さんはそう振り返る。
森の中に誕生した宿「awake」
移住後、小原さんは幼い頃から憧れていたツリーハウスづくりに挑戦した。
完成したツリーハウスには多くの地域住民が集まり、自然の中で過ごす時間に大きな可能性があることを実感したという。
その経験をきっかけに、十分な手入れがされていない森を整備しながら、新たな人やお金の流れを生み出そうと宿泊事業を構想。
約1年をかけて2026年春、森の中の一棟貸しログハウス「awake」を開業した。
大きな窓が特徴の宿は、「森に包まれるように過ごす」ことがコンセプト。13平方メートルほどのコンパクトな空間に、ベッドやミニキッチンなど必要な設備を備えている。
森から町へ 人をつなぐ仕組み
宿では食事を提供していない。
「ここから町に出てもらって、町のおいしいものや町の人々に会ってほしい。滞在する人にもそのようなことを案内している」と話す小原さん。
小原さんは、宿泊客と地域をつなぐことを大切にしている。
宿には国内客だけでなく、ヨーロッパやアメリカなど海外からも多くの利用者が訪れているという。
このほし・小原祥嵩さん:
外国人は日本に来ると3週間とか1カ月ほど滞在することもある。大都市だけでなく、その先の日本らしい景色や、日本ならではの体験を求めて地方にも足を延ばしている。
森での滞在を入り口に、五城目の魅力を知ってもらう取り組みは着実に広がりを見せている。
次世代へ伝える森の価値
宿の運営には小原さんを含め3人のスタッフが携わる。宿泊事業と並行して、小中学生向けの環境教育プログラムも実施している。
子供たちには、五城目の森が持つ価値や自然環境の重要性を伝えている。
小原さんは「この自然がこの町にとって、あるいは秋田にとってとても価値あるものだと、みんながもう一度思えるようになったらいい。そうしたことをめがけて、地域の内外から様々な人が足を運んでくれる未来をつくれたらと思っている」と語る。
森林整備を出発点に、観光や教育、地域づくりへと発展する小原さんの挑戦。
豊かな森を守り育てる取り組みは、五城目の新たな未来を切り開く力になろうとしている。
(秋田テレビ)

