米国のマスコミで最近、「ブルーツナミ(Blue Tsunami-青い津波)」という言葉を見かけるようになった。民主党のシンボルカラーである青が、共和党の赤をのみ込むような歴史的圧勝を意味する。
これまで民主党が躍進する選挙は「ブルーウェーブ(Blue Wave-青い波)」と呼ばれてきたが、今年11月3日の中間選挙では、それを上回る“大津波”が起きるのではないかというのだ。
「青い津波が押し寄せるあらゆる兆候」
その可能性を大きく取り上げたのが、10月8日付のUSA TODAY紙だった。
「民主党の青い波は青い津波になりつつあるのか?」
同紙はこう問いかけ、これまで共和党の牙城と考えられてきたテキサス、アイオワ、アラスカ、カンザスなどの州でも民主党候補が善戦し、共和党が選挙資金や応援態勢の見直しを迫られていると報じた。
象徴的なのは、トランプ大統領が10月5日、ネブラスカ州まで出向いて共和党候補の応援演説を行ったことだ。同州は2024年の大統領選でトランプ氏が20ポイント以上の大差で勝った共和党の金城湯池である。そこでトランプ氏は「中間選挙で負ければ、MAGA(米国を再び偉大に)の政策がすべて奪われかねない」と支持者に危機感を訴えた。
同紙が引用したアクロン大学のデービッド・コーエン教授は「今回の選挙には青い津波が押し寄せるあらゆる兆候があり、共和党にはそれを止める手段がほとんどない」とまで語っている。

実際、トランプ政権への不満は強い。米世論調査会社American Research Groupが10月20日にまとめた全国調査では、トランプ大統領の支持率は29%と、ついに同社調査で最低の20%台に落ち込んだ。不支持率は67%に達し、経済政策への支持率もわずか27%だった。
物価高に加え、イラン戦争による燃料価格の上昇や関税政策の影響も共和党への逆風になっている。
こうした情勢から、民主党が下院の多数派を奪還するだけでなく、共和党が53対47で優位に立つ上院でも逆転するのではないかという見方が広がっている。
“民主党圧勝”に慎重論も
しかし、必ずしも「青い津波」が起きるとは限らないという慎重論も出始めた。
10月19日付のPOLITICOは、共和党系世論調査会社エシュロン・インサイツの共同創業者パトリック・ルフィーニ氏の見解を紹介している。
同氏は、民主党が共和党の強固な地盤で上院議席を奪うという予測には無理があり、世論調査が民主党の勢いを過大評価している可能性を指摘した。共和党が上院の多数派を維持する確率は五分五分だという。
ロイター通信も10月12日、「民主党が中間選挙で圧勝できないかもしれない6つの理由」と題する分析記事を配信した。
その理由とは、①選挙区割りなどによって下院の接戦区が減少したこと、②上院での多数派奪還が容易でないこと、③民主党支持層の投票率への不安、④共和党の豊富な選挙資金、⑤世論調査が共和党支持を過小評価してきたこと、⑥共和党による民主党への「社会主義者」攻撃が無党派層に影響する可能性、である。つまり、民主党に追い風が吹いていることは確かでも、それが歴史的圧勝につながるとは限らないというわけだ。
それに、共和党には「隠れ票」という問題がある。2年前の大統領選挙で、投票日直前の全国世論調査では民主党のカマラ・ハリス候補が共和党のトランプ氏を1.2ポイントリードしていた。しかし、選挙の結果はトランプ氏が選挙人の数で312人対226人の大差をつけ、ハリス氏に圧勝した。激戦区「スイング・ステート」の7州では、世論調査が捉えきれなかったトランプ支持票が勝敗を左右したと考えられる。いわゆる「隠れトランプ票」である。
今回はトランプ氏自身が立候補するわけではない。しかし同氏は遊説先で「私が投票用紙に載っているつもりで投票してほしい」と繰り返し訴えている。トランプ氏個人への支持を共和党候補への票につなげようというわけだ。「隠れトランプ票」が共和党候補の得票に上積みされる可能性も否定できない。
また、過去の選挙では世論調査が共和党の支持を過小評価した例があり、今回も同じことが起きる可能性は無視できない。
これまでの例を見ると、大統領選挙から2年後の中間選挙では、大統領与党が下院議席を減らす傾向がある。今回も野党民主党に有利な「青い波」が起きることは想像に難くない。しかし、それが共和党をのみ込む「青い津波」にまで発展するのか。その答えは、まだ投票箱の中に隠されている。
(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

