アメリカの政策は日本企業にも大きな影響を与える。しかし、多くの日本企業はホワイトハウスや政権の動向に注目する一方、長期的にルール作りを担うアメリカ議会への理解が十分ではないという。
ワシントンで唯一の日本人ロビイストとして活動する海野有里さんは、日本企業がアメリカの政策形成に関わるためには、ワシントンの「エコシステム(政策生態系)」を理解することが重要だと指摘する。
著書『ワシントン・ゲーム』(扶桑社)から、ワシントンならではの政策形成の仕組みと、ロビイストの役割について一部抜粋・再編集して紹介する。
米国でルールを作るのは「議会」
ワシントンのエコシステムを理解するには、日本と大きく異なるアメリカ議会の仕組みを押さえる必要があります。
同じ民主主義でも、これほど違いがあるのかと思うのは、その立法プロセスです。日本とアメリカを分ける決定的なポイントの一つが、「誰が法律をつくるのか」とその提出される法案の数です。
日本では、法律は国会が制定しますが、実務上は内閣と各省庁が法案作成を主導することは少なくありません。アメリカでは、議員と議会補佐官が法案を作成し、議会が立法過程の中心に立ちます。長期的に企業活動に影響を与えるルールを作る主役は、議会です。
立法の基本的な流れは、議員が法案を提出し、所管委員会で審査し、本会議で採決するというものです。下院と上院が同じ内容の法案を可決し、 大統領が署名すれば法律になります。委員会では公聴会や修正審議が行われ、ここが企業や団体の意見を届ける重要な場になります。
上下両院に同じ法案が出るとは限りません。片方の院だけに提出されることもあれば、似ても内容が異なる法案が並行して進むこともあります。初めから片方の院にしか法案が提出されていなかったら、フォローする必要性は低くなります。
また、同じ法案が出ても審議中の修正で両院の法案が異なる形になる場合もあります。日本のように衆院優越のようなシステムはなく、必ず両院協議会で一本化されます。
最終的に一本化された法案は、再度両院が可決した後に大統領が署名して立法します。大統領が拒否権を行使しても、両院がそれぞれ3分の2以上で再可決すれば法律は成立します。

