11月24日、韓国の秋美愛(チュ・ミエ)法務大臣が尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長に職務執行停止を命じた。これに対し尹検事総長は裁判所に命令の執行停止を提訴。法務大臣の強引さに現職の検事や世論から反発の声が高まっている。また、次期駐日大使として前韓日議連会長の姜昌一(カン・チャンイル)氏の内定が発表された。知日派と称される一方で日本に対し過激な言動を繰り返してきた姜氏を起用する文在寅(ムン・ジェイン)大統領の思惑は。
今回の放送では韓国を熟知する専門家を招き、韓国の今を読み解き今後の日韓関係を考察した。

韓国法相と検事総長の対立はもはや権力闘争

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竹内友佳キャスター:
11月24日、韓国の秋法務大臣が尹検事総長に対し、深刻かつ重大な不正を多数確認したとして懲戒の請求と職務の執行停止を命じました。韓国憲政史上初と言われる前代未聞の事態。政権と尹総長の対立、どのようにご覧になりますか。

武藤正敏 元駐韓大使

武藤正敏 元駐韓大使:
文大統領は検察改革を進めてきた。韓国では政権末期や次の政権になると前政権の幹部たちが逮捕されたりするが、これを防ぐために検察の力を弱くしようと。ところが曺国(チョ・グク)前法務大臣の問題については相当突っ込んで捜査された。そこで秋氏を法務大臣にしたが、検察の動きはなかなか収まらず、一方で政権を揺るがしかねない問題がいくつもある。それで尹総長を辞めさせたい。
しかし尹総長には2年間の任期が保証されているから、懲戒請求をして解任決定して、これを理由に任命権者である大統領が解任するという手続きが必要になる。

権容奭(クォン・ヨンソク)一橋大学院法学研究科准教授

権容奭(クォン・ヨンソク)一橋大学院法学研究科准教授:
韓国は、世界でも稀なほど検察が強い権力を持っている国。90年代に政治的な民主化を達成した後、検察に権力が集中してきた。それで盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も追い込まれたと文大統領らは思っており、復讐劇ではないが、検察改革は大事だとしている。
そこで朴槿恵(パク・クネ)前大統領の捜査をした「生きた権力に対して捜査する」とする尹総長に期待をしたが、チョ・グク前法務大臣の件でも確たる証拠が出ない。しかし彼は辞任しない。彼自身の妻や義理の母親に疑惑がかけられており、家族を守るためにポストに居座ろうとしているのではないかという世論がある。それに乗っかる形で秋法務大臣が強く出てきた。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
検察改革の必要性はあるが、今の状況は明らかに権力闘争であり、文政権にはレームダック化への危機感がある。しかし尹総長がいる限り検察を手懐けることができないという現実を知って、無理やり彼を辞めさせようとしている。「なぜそこまで無理して辞めさせなきゃいけないのか」というのが一般国民の受け止め方。

髙初輔 芝パーク総合法律事務所 代表弁護士

髙初輔 芝パーク総合法律事務所 代表弁護士:
弁護士として手続き的な面から見ると、手続き的な公正さ、適正さが守られていないと見える。自らの利益に沿うよう規定を変える動きも見られる。また、秋法務大臣は尹総長に職権乱用罪を適用すべくある検事に調査を依頼したところ、それはなかなか難しいという意見書が出た。それにもかかわらず捜査が行われているのはオーバーランではないかと思います。

反町理キャスター:
文大統領は尹総長に対し、任命時に「権力に振り回されず、権力の顔色もうかがわず、人に忠誠を尽くさない姿勢で、公正に捜査せよ」という訓示をした。これに反し罷免の対象になるようなことを尹総長はやったのか。

武藤正敏 元駐韓大使:
非常に立派な訓示です。そして、これに対して問題あることを尹総長はこれまでにやっていない。

権容奭 一橋大学院法学研究科准教授:
ご自身の家族や側近、野党サイドの疑惑については捜査をきちんとやらないということもあり、その意味では尹総長の正義は「選択的な正義」という部分がある。秋法務大臣のやり方への批判の声もあるが。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
権先生がおっしゃった意見は政権支持派のもの。しかしそれは、尹総長を貶めるための後付けの話だと僕は思います。中立的な人たちを含め、国民にはやはり権力に刃向かう検事総長に対するイジメという印象が強い。尹総長は正義・法治主義を貫こうとしている人物として非常に強くて良いイメージを持たれており、白馬の騎士のよう。世論調査にも表れている。

責任を回避し沈黙を続ける文大統領

竹内友佳キャスター:
韓国の次期大統領候補の支持率。尹検事総長は、ハンギルリサーチによれば24.7パーセント、リアルメーターによれば19.8パーセントと、人気が上がってきています。

反町理キャスター:
この人気は文政権にとって危険なもの?

権容奭 一橋大学院法学研究科准教授:
そのようにとらえて、それで秋法務大臣が尹総長をさらに政治的に攻撃しているという見方もあります。いずれにせよ、このような政治的存在になってしまった尹総長が検察の政治的中立を守れるはずがないという論理。だから早くも辞めてもらい、政治で戦いましょうという形。
尹総長は大統領選挙に出馬を表明してはいないが、国民に奉仕できる道を探してみたいと匂わせてはおり、逆にきっぱりと自分は政治には出ませんという否定もしていません。

反町理キャスター:
一方で、文大統領が沈黙を守っている。そもそも秋法務大臣が勝手にこのような動きをするはずがない。やってみたら世論の反発があまりにも強いので大統領は隠れて黙っているように見える。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
その通りで、国民の大多数は「文大統領はどうするつもりなのか」と。自分が責任を取らず法務大臣に任せており、非常に卑怯な大統領、リーダーシップに欠けるとの声もある。文大統領は辞めさせたいが、そうすれば過去の自分の態度と矛盾する。しかし落とし方としては、法務大臣と検事総長を両方クビにして喧嘩両成敗。これで文大統領の顔が立つというあたりじゃないでしょうか。

反町理キャスター:
ええっ。責任を取るべきは文大統領ご本人じゃないですか。事態をコントロールできなかった自分の責任を棚上げにして、両方クビにしてチャラですか。

武藤正敏 元駐韓大使:
一番被害が少ないのはそれなんじゃないですか。責任からは逃げたいんでしょうね。

次期駐日大使に内定した姜昌一氏は反日派?

竹内友佳キャスター:
11月23日、姜昌一氏が駐日大使に内定したと発表されました。姜氏の対日姿勢、過去の日本についての発言。「戦争のあらゆる責任は天皇にある」「安倍政権は悪賢く稚拙」「韓国では国際法が国内法の上位にはない」など。

武藤正敏 元駐韓大使:
「天皇陛下に責任がある」これを日本に言ったらおしまい。東大で長いこと勉強していたのに日本人の気持ちを理解していない。竹島にも上陸した。私も大使をしているときは相当自重していたし、日韓関係の改善をいろいろ考えていた。しかし姜氏は今まで政治家として日本人の気持ちを逆撫ですることばかり言っており、職業外交官でもなく、大使としてはいかがかと。駐在国で嫌われる人はやっていけない。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
その場その場で、国内世論に対し口当たりの良いことを言ってきた方。彼は本来、外交的にはペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)。なぜなら竹島ばかりではなく、国後島に行っている。ロシアの領有権を認め、ロシアの案内で。これは日本にとってはあってはならないこと。

反町理キャスター:
こういう発言や行動をする人が日本に来て日本の世論と向き合ったとき、大使の仕事として青瓦台にこれを報告できるのか。青瓦台は聞く耳を持つのか。

武藤正敏 元駐韓大使:
文大統領は自分のことで頭が凝り固まっているし、姜氏がそういう役割を果たすことについて、私は非常に懐疑的です。

BSフジLIVE「プライムニュース」11月30日放送