茨城は全国有数の「農業県」

毎年、全国的に注目される都道府県の「魅力度ランキング」。2020年は茨城県が8年ぶりに最下位から脱出した。この浮上の背景に、「新型コロナの影響でライフスタイルが変わったこと」があるという。

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詳しい中身を見ていく前に、茨城県が全国でも有数の「農業県」だという点をおさらいしておきたい。メロン・ピーマン・レンコン・栗・小松菜・鶏卵などは、いずれも生産量1位だ。

産出額ベースで全国3位以内に入っている農産品が約30品目もあり(2018年)、魅力的な食の産品がたくさんある県だと言える。東京・銀座にある県のアンテナショップでは、先週、最下位脱出を記念した野菜の感謝セールが行われたが、ワーストに沈む状態は7年続いていた。

20代と40~50代で増えた「とても魅力的」

このランキングは、全国の消費者に各地域のブランド力を評価してもらう「地域ブランド調査」で、どれだけ魅力的に感じるかをランク付けしたものだ。

今年の調査では、茨城県について「魅力的」と答えた人が前年の16.5%から21.3%へと上昇した。中でも顕著な伸びが見られたのが20代と40~50代で、「とても魅力的」と答えた20代は2.2%から7.8%になったほか、40代は1.0%から5.6%に、そして50代も1.7%から4.9%へとアップしている。

この傾向について調査を行ったブランド総合研究所は、「感染拡大で自宅時間が長くなった影響が出ている」として、茨城県の最下位脱出は、「20代でのデジタルコンテンツ、40~50代での農産品での認知度がカギになった」と分析している。

茨城はなぜ“最下位”から脱出できた?

詳しく見ていこう。

1つ目は「ネット上での情報発信が若い層に刺さったのではないか」という点だ。

茨城県は、2年前から全国の自治体として初めてという公認バーチャルユーチューバー「茨ひより」を使って県の魅力を発信するなど、若年世代へのデジタル戦略を強化してきた。「TikTok」の公式アカウントを作成し、絶景スポットの紹介なども続けてきていて、県でもこうした取り組みがイメージアップに功を奏したのではとみている。

2つ目は、「働く世代を中心に茨城産の農産品の認知度がアップした」可能性だ。

外食が減り、自宅での食事が増加する中、スーパーなどに食材を買いに行った際、茨城産の野菜や果物などが並んでいるのに気づく機会が増え、県産の認知度合いが高まったことが、魅力度上昇につながったとみられるというのだ。

下位10位以内が続く「北関東」3県

今年のランキングを見ると、1位が北海道で京都府・沖縄県が2位・3位と続く。

一方で、下のほうは、茨城県が最下位から上がったとはいえ42位だったほか、40位は群馬県、そして最下位に転落したのが2019年に43位だった栃木県だ。北関東の3つの県が下位10位に名を連ねる結果で、この状態は2016年から継続している。

栃木県は、「いちご」の生産量日本一、「ギョーザ」は宇都宮の消費量がトップクラスで、世界遺産のある日光などの観光地を抱えていて、群馬県も「焼きまんじゅう」をはじめ「下仁田ねぎ」「こんにゃく」などのほか、世界遺産では「富岡製糸場」もある。

このような特産品や観光資源があるにもかかわらず、北関東の3県はいずれも下位が続いているのだ。

最下位を脱した茨城県の大井川知事は、ワーストとなった栃木県に対して「お気持ちはわかります。あまり気にしないでください」とエールを送っているが、栃木県の福田知事は、「魅力度だけがすべての評価項目を表しているような発表の仕方は納得できない」とした上で「這い上がりたい。倍返しをしていきたい」と話している。

栃木県は、期間限定で「47(そこ)から始まる栃木県」という名のプロジェクトを立ち上げ、本当に魅力がないのか、実際に訪ねて確かめてもらうよう、全国に呼びかける取り組みを始めた。

一方、群馬県の山本知事は「ランキングは知名度によるもので、魅力度を反映しているとは思っていない」として、調査手法などを検証する考えを示している。

増加する「移住」先としての相談件数

こうした中、「北関東」の魅力として、いま注目されている要素が「移住」だ。いずれの県も東京から近く、特に栃木・群馬は宇都宮や高崎までだと新幹線で1時間程度というアクセスを生かした形で、移住支援に力を入れている。

最近はテレワークの広がりなどもあり、北関東への移住を考えたいという相談件数が増えていて、NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、2020年6月から9月の移住先としての相談件数は、栃木県が前年同期の1.2倍、群馬県も1.5倍に、茨城県は2倍になり、これら3つの県を選択肢に入れる人が目立ってきているという。

1つの民間調査会社によるランク付けが魅力のすべてを客観的に表しているのかは議論のあるところだが、魅力の掘り起こしそのものは地域社会の活力向上をもたらす大きな要素になる。

新しい生活様式が広がる中、人々を惹きつける実力をめぐる各県の切磋琢磨は今後も続くことになりそうだ。

(執筆:フジテレビ解説委員 智田裕一)