キッズ版MBA「dot.school」が10月に開校
「England?(イギリスは?)」「Pound!(ポンド!)」「Good job!(よくできたね)」
バイリンガルの教師がイギリスのお札を見せると、約30人の子どもたちはプリントに通貨記号「£」を書き込む。子どもたちが世界と出会い、生きる力をつけるためのキッズ版MBA、「dot.school(ドット・スクール)」。
10月の開校を前に、小学校1~3年生を対象にしたオープンスクールが、東京都内で3日開催された。

子どもにお金のリテラシーを身につけさせることが目的
この学校を運営するのは、株式会社Selan(セラン)。
バイリンガルの先生が子どもを迎えに行き、英語で家庭教師をするサービス、「お迎えシスター」を提供している教育ベンチャーだ。創設者で代表取締役の樋口亜希さんは、「お金のコース」の狙いをこういう。
「お金は生活に密着していて人生に大きな影響を与えるのに、義務教育ではなかなか行き届きません。そこで、子どものころからお金のリテラシーを身につけてもらおうと始めました」
クラスでは、メンター(ここでは教師をメンターと呼ぶ)が子どもたちに、「イギリスのお札に載っている人は誰?」「インドのお札のガンジーはどんな人?」と聞くと、中には「エリザベス女王!」と答える子どももいるから驚きだ。
このスクールには、海外生活が長い子どもやバイリンガルの子どもが多い。もちろん英語が出来ない子どももいるが、メンターが日本語を織り交ぜてフォローする。
メンターはバイリンガルの大学生で、子どもたちにとってはファーストネームで呼び合えるお兄さんやお姉さんたちだ。
子どもたちがオリジナルのお金を作ってみるプログラムもあり、子どもたちの歓声と笑顔がはじける中、1時間15分のオープンスクールはあっという間に終わった。

目的あるお金の使い方をできるだけさせることが重要
日本では家庭内であっても、お金の話をするのはタブーとされてきた。しかし誰でも生きていくうえで、お金とうまく付き合わなければならない。ならば、「生きる力」を身につけるために、子どものうちからお金について学ぶことは大切だ。
「お金のコース」を監修するのは、フィンテックの代表的な企業「マネーフォワード」。
これまでも高校生や幼児などに金融教育を行ってきたという取締役の瀧俊雄さんは、小学校低学年からお金について学ぶ意義をこう強調する。
「小学校低学年はお小遣いをもらい始めているのですが、お金の使い方がわからない子も多いので、目的のある使い方を出来るだけ多く経験することが大事です。『人生ゲーム』だって小学生2年生で出来ます。それを教育に置き換えることも、たぶんできるはずです」

10月からはじまるクラスでは、お金に関わるさまざまな概念、「収入と支出」「労働と対価」「寄付」などを教える。また、チームを作ってお店の運営を体験し、保護者から事業の資金調達を行って、最後は株主総会を開催するというから本格的だ。
さらに、同時に行われる「世界のコース」では、国際情勢、人権、マイノリティ、貧困などに目を向け、体験型学習を通して学んでいく。
「難しそうにみえますが、『お迎えシスター』で今まで小学校低学年を対象にやってきて、私たちの中には、『このくらいのレベルだったら子どもたちが理解できる』という感覚があります。それに合わせてこのプログラムを作っています」(樋口さん)
世界の国々では、先進的な学習を続々と導入
世界の国々がいま、教育の重要性を再認識し、先進的な学習を次々と導入している。
アメリカはオンライン学習や、STEAM(科学・テクノロジー・エンジニアリング・アート・数学)教育に注力している。アジアでは、中国・韓国は約20年前から小学校で英語教育を行っている。
一方、日本は2020年から教育改革がスタートし、アクティブラーニングや小学校の英語教育が本格的に始まるが、すでに世界の潮流から大きく取り残されているのが現状だ。
樋口さんは「このスクールは子どもたちの未来を変えるスクールです」という。
日本の公教育は、こうした先進的な教育の取り組みを学び、どんどん取り入れていくべきではないか。
