2026年6月に改正民法が成立し、今後3年以内に「デジタル遺言」制度が導入されることとなった。これまで手書きが必須だった「自筆証書遺言」がパソコンで作成可能となり、インターネットで登録・保管出来るようなる。なぜいま遺言のデジタル化が進められようとしているのか。メリット、デメリットなど、平松まゆき弁護士とともに詳しく解説する。
“遺言書”とは…一般的には『財産を誰に残すか』を明確にするもの
そもそも遺言書はどんなことを書くものなのだろうか。
ーー平松まゆき弁護士
「前提として遺言には法務大臣が任命する公証人が作成する『公正証書遺言』と自分で書く『自筆証書遺言』があります。今回のデジタル化は主に「自筆証書遺言」に関するものですが、いずれも一般的には『財産を誰に残すか』を明確にするもの。自分の亡きあとに遺産の内容やありかを教え、親族間での争いを予防するためのものです」

なぜデジタル化?遺言書を「すでに作成した」と回答した割合はわずか…
その遺言書が、これから大きな変化を迎えようとしている。2026年6月に改正民法が成立し、公布された。これにより、デジタル遺言が今後3年以内に始まることになった。
これまで「自筆証書遺言」は本人の手書きが必須条件だったが、今後はパソコンでつくったものをインターネットで登録・保管出来るようになる。
なぜいま遺言のデジタル化が進められようとしているのか?背景には遺言書を準備している人が少ないという実態がある。
こちらは日本財団が2025年行った60歳から79歳の男女2000人を対象にした調査。遺言書を「すでに作成した」と回答した人は全体のわずか3.4パーセントのみ。
そして約半分の人が「今後もつくらない」と回答している。この結果について平松弁護士は次のように話す。

遺言書がない場合 話し合いが進まず数年かかるケースも
ーー平松まゆき弁護士
「たしかに遺言書に関するトラブル解決の依頼は多くはないが、相談は寄せられている。遺言書が無い場合、遺産をどう分けるか協議を行う必要がありますが、相続人全員の合意を得る必要があるところ、1人でも反対する人や連絡が取れない人がいると話し合いが進まず、解決までに数年かかるケースも珍しくありません。過去のケースでは相続人が12人登場したこともあります。これに対して、遺言書があれば原則として遺言書に書かれた内容の通りに財産を分けるため、相続人同士で話し合う必要はありません」
遺言書をつくるハードルを下げようというのが今回のデジタル遺言。
デジタル遺言ではパソコンで書いたものが容認され、作った書面のデータをインターネットで、大分県であれば大分地方法務局に送ることで登録が完了するという。

デジタル遺言の安全面は?
ここで気になるが安全面だが、法務省によると各地域の法務局がデータを管理するため「紛失」のリスクは無いそうだ。
また、「なりすまし」も心配されるが最終的にはマイナンバーカードと遺言書を紐づけるためそれが「なりすまし」の対策になるという。
さらに、遺言書を登録する時は本人が法務局の職員とビデオ通話をして全文を呼び上げる形をとるという。

遺言は本人の意思を家族に伝える重要な手段
デジタル遺言のメリット・デメリットについて平松弁護士は。
ーー平松まゆき弁護士
「最大のメリットは手書きでなくなることと手続きのために法務局に移動する手間が減り『作成のハードルが下がる』ことです。デメリットはなりすましやインターネットに慣れていないことによる『セキュリティ・IT格差』のリスクがあることです」
遺言は、亡くなった後の財産の分け方を決めるだけでなく、本人の意思を残された家族に伝える重要な手段の一つ。どのような財産を誰に残すのか。相続をめぐる問題を防ぐためには、元気なうちから考えておくことが大切だ。


