福井県越前町のふるさと納税返礼品「越前がに」をめぐる不正表示問題が、泥沼化している。農水省から措置命令を受けた水産加工会社「福丸フーズ」は「基本的には越前町のせい」と主張している。一方、越前町は「調査中」として沈黙を続けており、両者の主張は随所で食い違う。11月6日に越前がに漁の解禁を控える中、地域ブランドと産業への影響を懸念する声が地元に広がっている。
「町の一文字が抜けている」商品名をめぐる食い違い
問題となっている福丸フーズが提供していた返礼品が、ズワイガニの甲羅にむき身を入れた「甲羅盛り」で、その半分以上に、脱皮したての雄のズワイガニ「水ガニ」が使われていた。水ガニは食べやすく安価なことから地元では人気があるが、越前がにとは別物だ。
農水省は福丸フーズが5年あまりにわたり、規定を超える量の水ガニをいれて「越前がに」と表示し商品を提供していたことが、地理的表示法(GI法)に違反するとして措置命令を出した。
農水省は福井テレビの取材に対し、数回にわたる立ち入り検査や指導にもかかわらず是正が見られなかったこと、不正の期間や金額などの常習性、そしてふるさと納税という社会的な影響の大きさを考慮し措置命令を出したとしている。
これを受け、福丸フーズの山下覚社長と代理人の三宅弘弁護士は10月7日に福井市内で会見を開き、問題の核心は商品名の表記にあると訴えた。
三宅弁護士は返礼品の商品名が「越前産ずわいがに」となっている事について「町が抜けている。こっちは『越前町産ずわいがに』で提案しているが『越前産ずわいがに』と『町』が抜けている。これは基本的には越前町の責任」と主張した。GI法上は「越前産」は「越前がに」を想起させるとして表示が禁止されているが、「越前町産」は禁止されていない。
福丸フーズ側の主張では、返礼品として提案した商品名は「越前町産ずわいがに甲羅盛り」だったという。ところが最終的な商品名は「越前産ずわいがに甲羅盛り」となり、さらに(越前がに)という表記が加わっていたという。
この変更は越前町、または町が委託する中間業者によるものだと訴えているのだ。
「偽って販売したわけではない」悪意を否定
山下社長は会見で、漁師たちに対し「命がけでおいしい越前がにを取るため出て行く漁師たちには迷惑をかけてすまなかったと思っております」と同業者への謝罪の言葉を口にした。その一方で、偽って販売したわけではないと悪意を否定した。
福丸フーズは現在、商品名に「越前がに」の表記が付け加えられた経緯を明らかにするため、越前町に情報公開請求を行っている。
越前町は福丸フーズに先立ち開いた会見で、去年10月に問題を把握し、業者に指導したと説明していた。ところが同社は会見で「そもそも町とやり取りした事実もない」と完全に否定した。
このことについて越前町を取材すると「調査中のため現時点で答えられることはない」と沈黙を貫いている。
「ブランドに傷がつく」町民の思い
会見から一夜明け、町民は「だますのはよろしくないですよね。ブランドに傷がつくというか…」と複雑な心情を語った。
また別の町民は「産業自体がすごいダメージ受けてるのは確かなので、早くはっきりさせてほしい。はっきりとした答えを、町が言うべき」と早期の町の対応を求めた。
越前がに漁は11月6日に解禁を迎える。町内の旅館は、現時点での直接的な影響は出ていないと説明しつつも、「今後はもしかしたらあるかもしれない」と警戒感を示した。
越前がには福井県を代表するブランドで、その信頼は漁業者から旅館業者、そして地域経済全体を支えている。県は10月16日に関係者を対象としたGI適正表示に関する研修会を予定している。
早期の真相解明と、再発防止策が求められている。

