「みんながやっている?やってませんよ!」こう憤るのは、越前がになどの海鮮料理を提供する料理店店主。福井県越前町で、ふるさと納税の返礼品をめぐるGI法違反が発覚した。不正は約5年半にわた行われていて、越前がにブランドを根底から揺るがす問題に発展。影響額は約6億円にのぼるとみられる。背景には、事業者のGI法に関する理解が進んでいなかったことも指摘されていて、国や町に対し責任を問う声が上がっている。
「越前がに」の看板を掲げながら2つの不正表示
今回、越前町で発覚した不正な表示は大きく分けて2つある。
1つ目は、水ガニの過剰使用だ。「越前がに」と表示するためには、現行の制度上、原材料の半分以上に越前がにを使用しなければならない。しかし、町内の水産加工会社1社が2020年9月から今年4月までの約5年半にわたって、「越前がに」と表示しながら規定量を超える水ガニを使用していた。この返礼品には約4700件の申込みがあり、1億円あまりが寄付されていた。
水ガニとは脱皮したての雄のズワイガニで、水分を多く含み身が抜けて食べやすく安価なことから、地元では“庶民の味”として親しまれている。
2つ目の不正表示は、誤認を招く「越前」表記だ。水ガニの過剰使用を指摘された事業者を含む11の事業者が、紅ズワイガニなどの加工品に「越前」や「越前産」といった越前がにを想起させる文言を使用していた。
この2点が抵触したのが「GI法」である。国が地域の名産品の名称を知的財産として保護する法律で、越前がにはこの保護制度に登録されており、名称の不正な使用は禁じられている。
今回の問題で、越前町は農林水産大臣からの措置命令を受け、原因究明と再発防止策の実施に取り組むことになった。
「水ガニも越前ガニの一種と思い込んでいた」町が弁明
問題をさらに根深くしているのは、越前町の対応の遅れだ。町の担当課は、遅くとも2025年10月には水ガニの混入を認識していた。それにもかかわらず「GI保護制度およびGI法に関する理解が十分でなく、水ガニを越前ガニの一種と認識していたため、表示に問題があるとの認識には至らなかった」と弁明している。
この説明に対し、地元水産業者からは「もっと早く対応できたはず」「謝るばかりで話が通じない」といった批判の声が相次いだ。
また、商品名を決めていたのが誰なのかという点についても、事業者側と行政側で認識の違いがある。不正表示と認定された関係者の一人はカメラを回さないことを条件に、こう語った。
「我々も理解不足という落ち度はある。ただ、商品名を決めるのは町とその委託業者。委託業者に今回の問題について問い合わせたら、急に電話を切られた。説明会を開くべきだ」
福井テレビが委託業者の1社に取材したところ「現在、国と越前町が調査を行っているため、弊社からお答え申し上げることはできない」との回答だった。
「これからの越前がにをどうしていくんだ」
問題が表面化した直後の9月17日、越前町は返礼品を提供している町内の水産業者を集めた説明会を開催した。会議は非公開で行われたが、町は国の調査が進行中であることを理由に、10月1日から町内産のカニに関連するすべての商品を返礼品から除外する方針を示した。
これに対し、業者側は強く反発。「一部の業者の不祥事であり、全商品除外という町の方針は受け入れられない」と主張した。町は説明会終了後、「業者の意見を重く受け止め、今後の対応を検討し直す」としたが、最終的にはカニに関するすべての商品を返礼品から除外することを決め、影響は約6億円にのぼると見られる。
町内で料理店「海の幸食処えちぜん」を営む宮地敏也さんは、今回の問題発覚後も不正な表示はなかったと語る。しかし、自らも含め制度への理解が不足していたことを認める。「このGI法は難しいんですよ。やっぱり国も役場に対して指導し、それを役場が我々に伝えなかったことがだめなんじゃないですかね」
今回の問題を「越前町全体の話だ」ととらえる宮地さんは、こう訴える。「うちのお店の話じゃなくって、漁師の話じゃなくって、これからの越前がにをどうしていくんだっていう話なんです」

失った信頼を取り戻すことは困難を極める。農林水産大臣からの措置命令を受けた越前町は、原因究明と再発防止策を講じたうえで“カニの街”が誇るブランドをどう守り、再建していくか、今後の動きに注目したい。

