2018年に富山市で2人が殺害された奥田交番襲撃事件で、強盗殺人などの罪に問われている男の「差し戻し審」が富山地方裁判所で始まりました。
スタジオには、事件そして裁判の取材を続けている齋藤記者です。
島津被告、人定質問や罪状認否といった裁判長の問いかけに答えることはなかったということですが、法廷でどんな様子でしたか。
5日の差し戻し審の初公判は、午前10時から午後4時すぎまで続きました。
その間、島津被告は床のあたりを見つめるだけで、話すことはありませんでした。
ただ、一度だけ車いすから上半身を乗り出し、弁護団の1人の耳元に何か話しているような様子が見受けられました。
改めて、今回の裁判の争点は何ですか?
大きな争点はこちらの2つです。
1つ目は、法定刑が「死刑または無期拘禁刑」と定められている「強盗殺人罪」。
これが成立するのかです。
ポイントは島津被告が拳銃を奪おうと思ったのは、交番で警察官を殺害した前なのか、後なのかです。
そして2つ目の争点は、島津被告が抱える発達障害自閉スペクトラム症が事件にどの程度影響したのか、つまり犯行時に島津被告に「責任能力はあったのか」です。
5日の公判で検察側と弁護側はどう主張したのでしょうか。
まずは検察側の主張です。5日の冒頭陳述で、これまでの裁判と同様「強盗殺人罪が成立する」と改めて訴えました。
検察はこれまでの供述などの捜査から「島津被告は自分への失望やあきらめの気持ち、自分を拒絶する社会への敵意を募らせた結果、複数の警察官を殺害する計画を考えた。そのためには、強い武器があった方がいいと考え、拳銃を持つ警察官がたくさんいる、交番という場所を襲撃した」と述べました。
これらから「拳銃を奪う意思は、最初からあった上で、交番を襲撃した」と主張しました。
これに対し、弁護側は1審と同様に強盗殺人罪は成立せず、「殺人罪」と「窃盗罪」にとどまると訴えました。
その理由として、島津被告が拳銃を奪ったのは自分よりも強い武器を持った警察官と闘うこと自体が目的で、「拳銃を奪うための犯行ではない」と主張しています。
島津被告はこれまでの供述で「武器を持った警察官と闘う。勝った後のことは何も考えていない」と話し、弁護側は「拳銃を奪おうと交番に向かったというのは合理的な疑いが残る」としました。
つまり、拳銃を奪うことを思いついたのは、警察官を殺害した「前」と「後」でそれぞれ主張が対立しているということですね。
そして、もう一つの争点、島津被告の自閉スペクトラム症はどうでしょうか。
検察側は「自閉スペクトラム症を踏まえても、責任能力があった」と主張しています。
というのも島津被告は「犯行時に幻覚や妄想などの症状はなく、犯行は被告自らの意思」であること。また、「犯行時に、身を隠すなど状況に応じて行動していたことから、心神耗弱状態ではなかった」としています。
一方の弁護側は、「心神耗弱状態だった」と主張しました。「自分よりも強い武器を持った人物と闘うという動機は一般的には不可解で特殊だが、自閉スペクトラム症の影響で、行動を良し悪しの区別が極めて困難な状態だった」「少なくとも、完全責任能力があった、とするには合理的な疑いが残る」としました。
この点でもまた、責任能力の有無で主張は対立しているんですね。
最後に、量刑の見通しはどうでしょうか。
検察は1審と同じ死刑を求刑する見通しです。
一方で、弁護側は自閉スペクトラム症の影響で犯行に及んだ被告に、死刑は重すぎると主張しています。
また、遺族の中村信一さんの妻が、生きて罪を償うことを望んでいるとし、今後、検察側ではなく、弁護側の証人として、法廷に立つ予定だとしています。
判決は12月8日の予定です。
事件から8年あまりが経つ中、被告の当時の犯行動機や精神状態について、司法がどう判断するのか今後の審理が注目されます。
