事件から8年。“やり直し”の裁判員裁判が始まりました。2018年に富山市で2人が殺害された奥田交番襲撃事件で、強盗殺人などの罪に問われている男の「差し戻し審」が富山地方裁判所で始まりました。
前回の裁判で黙秘し続けた男。5日も裁判長から名前や住所を聞かれましたが、何も答えず黙秘しました。
5日から16回にわたり行われる「差し戻し審」。
*リポート
「午前8時30分です。まだ開廷まで1時間半ありますが、裁判を傍聴するための整理券を求めて100人以上の人が列を作っています」
開廷前の裁判所には、30の一般傍聴席を求めて278人が並びました。
そして…。
*リポート
「午前9時32分です。島津被告を乗せたとみられる車が富山地方裁判所に入ってきました。車の窓は加工が施されていて、島津被告の様子を確認することはできません」
開廷の約30分前。
強盗殺人などの罪に問われている島津慧大被告(30)を乗せたとみられる車が富山地方裁判所に入りました。
*リポート
「島津被告は職員に誘導されて3階の法廷へ向かっているものとみられます。渡り廊下の窓はブルーシートで覆われていて、その表情や様子は確認できません」
裁判は予定通り、午前10時に開廷しました。
事件は2018年6月26日、当時21歳だった元自衛官の島津被告が富山市の奥田交番に侵入し、交番所長だった稲泉健一警部補(当時46)を持っていた刃物で殺害。その後、奪った拳銃で、奥田小学校の近くで警備をしていた中村信一さん(当時68)を射殺したとされています。
2021年に開かれた1審。検察は「強盗殺人罪」の成立を訴え、死刑を求刑しましたが、富山地裁は「拳銃を奪う意思が殺害後に生じた可能性を排斥できない」とし、より量刑の軽い「殺人罪」と「窃盗罪」を適用。無期懲役の判決を言い渡しました。
その後の2審で名古屋高等裁判所金沢支部は、「交番襲撃前から拳銃を入手しようと考えていた見方も十分に成り立つ」と指摘。1審判決に事実誤認があるとし強盗殺人罪の成立を前提として審理するよう富山地裁に差し戻しました。
これを不服とした島津被告が最高裁判所へ上告しましたが、棄却されました。島津被告は1審の公判では一度も発言せず、2審には出廷しませんでした。
そして、5日から始まった差し戻し審。約5年半ぶりに公の場に姿を見せた島津被告は、黒のスーツを身に着け、5年前と同じく、車いすで入廷しました。白髪交じりの短髪で、ひげはもみあげにつながるほど伸びていました。
冒頭、裁判長から問いかけられます。
*裁判長
「名前を言ってください」
*島津被告
「・・・」
*裁判長
「生年月日はいつですか」
*島津被告
「・・・」
*裁判長
「本籍・住所・職業について答えることはありますか」
*島津被告
「・・・」
人定質問で島津被告が答えなかったため、裁判長が検察、弁護側双方に島津被告本人であることを確認し、審理が始まりました。
その後、検察が起訴内容を読み上げ、再度問いかけます。
*裁判長
「検察官が読み上げた事実に間違いはありますか?」
*島津被告
「・・・」
罪状認否も黙秘した島津被告。微動だにせず、どこか1点を見つめている様子でした。
今回の差し戻し審で争点となるのが、強盗殺人罪の成立と島津被告が抱える発達障害が事件にどの程度影響したかです。
5日に行われた冒頭陳述で検察側は、「被告は警察官を殺害する前から拳銃を奪う意思があった」とし強盗殺人罪の成立を主張。「被告が抱える自閉スペクトラム症の影響は限定的で、責任能力は備わっていた」と述べました。
これに対し、弁護側は「拳銃を奪おうと思ったのは交番で警察官を殺害した後」で強盗殺人罪は成立しないと主張。殺人罪と窃盗罪を適用すべきとしました。また、「自閉スペクトラム症の影響で責任能力にも疑いが残る」と述べました。
島津被告はこれらのやりとりを表情を変えることなく聞き、法廷を後にしました。
判決は12月8日に言い渡される予定です。
