2025年3月にスタートしたマイナ免許証。運転免許証とマイナンバーカードを一体化したこの新制度は、オンライン講習や住所変更手続きの省略などのメリットがある。しかし、福井県内での切り替え率は1割強にとどまる。免許を更新した30人に聞いた街頭調査では、21人が「従来の免許証のみ」を選択。なぜ、これほど普及が進まないのか。専門家の分析と当事者の声から、その実態に迫る。
免許証切り替えは3パターン
マイナ免許証への切り替え手続きは免許センターや警察署ででき、選択肢は▼マイナ免許証のみ▼従来の免許証のみ▼両方持つの3パターン。切り替えは義務ではなく、あくまで自分の判断に委ねられている。
メリットとして国が挙げているのは、主に3点だ。▼引っ越しの際に免許センターでの住所変更手続きが不要になること▼更新時の講習をオンラインで受けられること▼更新手数料が安くなること。
実際に切り替えた人からは、「オンライン講習が受けられるから」「カードが1枚にまとまるから」といった声が聞かれた。
福井県内での切り替えはわずか1割
県内の免許センターでを更新した30人にアンケートを取ったところ、マイナ免許証のみ、あるいは2枚持ちを選んだのは合わせて9人。一方、従来の免許証のみを選んだ人は21人と、圧倒的に多い結果となった。
切り替えなかった理由としては「切り替えなければいけない理由がよく分からない」「いつも通りでいいかと思って」という声や「特に理由はないが、面倒くさかった」という意見も。
2枚持ちを選んだ人からは、「マイナ保険証だけだと不安なところがあった」としながらも、「これから先は行政の対応がマイナカードになっていくと思うので、そちらの方がいいだろう」という声も聞かれた。
実際のデータを見ても、普及の遅れは明らかだ。県内で2026年7月末までに免許を更新した約16万人のうち、マイナ免許証に切り替えた、あるいは2枚持ちにした人は約1万9000人と、全体の1割強にとどまっている。
マイナ免許証のみを選んだ人は全体の3.9%、2枚持ちが8.0%、従来の免許証のみが88.1%という内訳だ。制度が始まってから1年以上が経過してもなお、従来の免許証が圧倒的な支持を得ている現状がある。
専門家が指摘する「3つの理由」
なぜマイナ免許証を選ばない人がこれほど多いのか。国の経済政策を調査研究するニッセイ基礎研究所の河岸秀叔さんは、次の3つの理由を挙げる。
▼メリット自体がよく分からない▼分かったうえで選ばない▼そもそもマイナンバーカードを持ち歩きたくない
「メリットを分かったうえで選ばない」人の具体例として、河岸さん「日常的に運転する人で、なくしたら困るからという人がいても不思議ではない」と指摘する。
実際、従来の免許証が紛失時に即日で再発行できるのに対し、マイナ免許証の再発行には最短でも1週間から10日ほどかかる。
日常的に車を使う人ほど、この再発行のタイムラグは切実な問題となる。
「スマホでワンクッション」思わぬ落とし穴も
もう一点、マイナンバーカード自体には免許証情報が記載されていない点が見落とされがちなポイントだ。
「免許証情報を提示する際には、スマホを使って読み取って提示するというワンクッションが必要になる」と河岸さんは説明する。
例えばレンタカーを借りる際など、従来は免許証を見せるだけで済んでいた場面で、アプリを起動して読み取るという手間が発生する。「これまでより少しややこしくなっている」というのが河岸さんの率直な評価だ。
さらに河岸さんが懸念するのは、マイナ免許証に切り替えた人の中にも、メリットを十分に理解していない人が少なくないという点だ。
「実は、メリットをあまり理解していないという人が多い」として、国が丁寧な周知を行う必要性を指摘する。
便利な面がある一方、再発行のデメリットや提示時の手間など、思わぬ落とし穴も存在するマイナ免許証。切り替えを検討する際には、オンライン講習や手数料軽減といったメリットだけでなく、こうしたデメリットも把握したうえで、自分の生活スタイルや価値観に合った選択をすることが大切だ。

