8月28日、鹿児島県いちき串木野市の海岸で中高生3人が死亡した事故を受け、専門家による現地調査が9月10日に行われた。調査の結果、専門家は「干潮の影響で陸地に上がれず溺れたのではないか」という見解を示した。離岸流ではなく、潮の干満という見落とされがちな自然現象が、3人の命を奪った可能性が浮かび上がっている。
事故から約2週間、現場に集まった花束と専門家
10日、いちき串木野市の事故現場を訪れたのは、大学教授などからなる学術団体・水難学会のメンバー5人だ。現場には事故直後よりもさらに多くの花束や飲み物が手向けられており、地域の人々の悲しみの深さが伝わってくる様子だった。
事故は8月28日、海に飛び込んで遊んでいた中高生3人が沖に流され、翌日に現場近くで死亡が確認されたものだ。若い命が突然失われたこの出来事は、地域社会に大きな衝撃を与えた。
ダイバーが潮の流れを実測 離岸流の可能性は否定
調査は、事故が起きたときと同じ大潮の干潮の時間帯に合わせて実施された。中高生が飛び込んだとみられる岩場の先端あたりからダイバーが実際に海中に入り、水深を測定。さらに、蛍光色の着色剤を海中にまいて潮の流れを詳しく調べた。
調査の結果、着色剤が大きく潮で流されることはなかったことから、離岸流の影響は考えにくいと判断された。では、3人はなぜ海から戻れなかったのか。
「はい上がれる場所がない」 干潮が生んだ見えない罠
水難学会の斎藤秀俊理事は、事故原因についてこう語った。
「潮が引いて岩が登れないほど高いという露出の仕方をしていた。飛び込んだはいいが、はい上がれる場所がない。そのうち溺れていってしまう」
事故当時、干潮の影響で海から陸地に上がるには、高さ1メートル以上の岩場を登る必要があったとされる。海に飛び込んだ時点では問題なく入れた場所でも、干潮が進むにつれて岩が大きく露出し、脱出口を失ってしまったとみられる。
「干潮の時刻にいったい何が起こるのか」 海辺の教育を訴える
斎藤理事は、子どもたちへの海洋教育の重要性を強く訴えた。
「干潮の時刻っていったいどういうことが起こるのか、実際に岩場に行ったらどういうことになるか、もっと具体的な話を子どもたちにするべき。いざという時に自分を助ける訓練、海辺ならではの教育をぜひとも続けてほしい」

潮の満ち引きは日常的な自然現象だが、その影響を具体的にイメージできている子どもは多くないだろう。「海は危険だ」という漠然とした注意喚起にとどまらず、干潮時に岩場でどのような状況が生まれるかを実感として伝えることが、命を守る知識につながると学会は指摘する。
現場に浮き輪と看板を設置 今後の事故防止へ
調査に立ち会った串木野海上保安部は、現場近くに水難事故の注意を促す看板と浮き輪を設置した。本多一成交通課長は次のように呼びかけた。
「『海は危険なんだ』とことをしっかりと認識してもらい、ライフジャケットを着用するなど十分に準備を行ってほしい」
串木野海上保安部は、今回の調査結果も参考にしながら、今後も事故防止に取り組む方針だ。夏の海は子どもたちにとって格好の遊び場である一方、潮の変化という見えないリスクが潜んでいることを、大人も子どもも改めて意識する必要がある。
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