地域の防災活動や美化活動などを行う自治会。その担い手不足が課題となる中、役員の若返りや業務の効率化に取り組む自治会が新潟市にある。組織の存続を模索する背景にはどのような思いがあるのか。
「面倒くさそう」「時間が無い」自治会役員に抱く負のイメージ
町内のゴミステーションの管理、美化活動や防災活動、行政との連絡調整などを担う任意団体『自治会』。

新潟市内には約2050の自治会が存在する。その自治会役員に人々はどんなイメージを持っているのか、新潟駅前で聞いた。
40代男性(役員経験あり):
活動と自身の時間をあわせるのが大変だった。(Q.仕事との両立が難しい)そうですね。
50代男性(役員経験なし):
役員はもっと上の年齢の人がやっている。仕事をしているので、そこまで手が回らない。
女性(役員経験あり):
負担ではない。ただ、年に1回、町内会費を集めるのは大変。
40代女性(役員経験なし):
仕事以外の時間を捻出するのが難しいかなと思う。
60代男性(役員経験なし):
ちょっと断るかもしれない。(Q.理由は)面倒くさそう。
忙しい現役世代ほど、自治会には負のイメージがつきまとう。
会長の最多年代は70~74歳 加入率は徐々に低下…自治会の実情
新潟市における自治会の加入率(2026年4月時点)は86.5%。

政令市では浜松市に次ぐ高さを誇るが、2020年に9割を割り込むなど年々減少傾向にある。
また、24年に新潟市が行った調査によると、自治会長の年齢で最も多いのは70歳~74歳。

役員の高齢化が進む中、課題となっているのが担い手不足だ。
新潟市の中原八一市長も「自治会の役員になってくださる担い手の皆さんが減少している状況については大変危惧をしている」と見解を述べている。
役員の平均年齢は49歳!若返りに成功した自治会
26年7月、新潟市中央区の『新和自治会』が役員会議を開いていた。
30代の役員から80代の顧問まで出席者の年代は様々だが…7月に発行された『自治会だより』には、26年度の全役員が紹介されている。
そこに並ぶのは、高校生役員2人を含む20人。平均年齢は49歳という若さだ。
自治会の再編に取り組んだのが、現在は顧問を務める伊藤正敏さんだ。
「役員が長期にわたって色んな活動をやってきたが、いずれは誰かに引き継がなくてはならない。しかし、そのルールが明確ではなかった」
同じ人が長年にわたり役員を務めてきた新和自治会は、23年に役員の持ち回り制を導入。
その後、任期を終えても運営に関わりたい人の留任を妨げないなど、意欲のある人が役員を続けられる仕組みを整えた。
伊藤顧問は「ほとんど若手に代わった。おかげで年寄りは出る幕がほとんどない」と笑う。
現役世代多数!会議に出ることを目的にしない
平日夜に開かれたこの日の会議には、20人の役員のうち9人が出席。13人が現役世代ということもあり、出席率は決して高くない。
ただ、会議の内容はすぐさまLINEで共有される。

スマートフォンを持っていない役員には、自治会が貸し出しているという。
新和自治会の大滝北人副会長は、「会議に出ることが目的ではない。それぞれに割り当てられた仕事を自分たちのペースでやってもらうのがこの自治会の特徴」と話す。
40代の役員は、「会議に欠席したとしてもすぐに情報共有される。個人の都合を気兼ねなく伝えられる良い雰囲気だと思う」と、会議に縛られない環境を歓迎していた。
自治会役員のハードルを下げる“役割の見える化”
新和自治会がもう一つ大切にしているのは『役割の見える化』だ。

活動内容とスケジュールを洗い出し、「青少年育成部の場合、役員1人の出番は年に3日」など、役割を明確にしている。
大滝副会長は、「自治会に参加するのが怖いと思う理由の一つは“分からないこと”だと思う。だからこそ、不透明な仕事や会議をなくしていくのが大事」だと強調する。
手間のかかる“回覧板”から“自治会アプリ”へ
効率的な運営に挑戦している自治会もある。
回覧板を作るため計6通の書類をまとめていたのは、女池8丁目自治会の山田いづみ副会長だ。
「月に2~3回書類が送られてくる。一部しか送られてこない紙をコピーして、何通かの書類が集まったタイミングで回覧板としてまとめている」
班長を通じて約140世帯に回覧し、1週間ほどで全世帯に回るのが理想だ。
しかし、過去には工事の案内を含んだ回覧板が行き渡る前に、工事や通行止めが始まったこともあったという。

回覧板は速報性に乏しい。そこで女池8丁目自治会が26年5月に新潟市で初めて導入したのが、自治会向けのアプリだ。
電子回覧板として様々な書類が一度に配信されるほか、新潟市からのお知らせ、ラジオ体操・防災訓練といったイベント情報などもリアルタイムで届く。
新潟市も助成 自治会アプリは若い世代の参画を呼び起こせるか
自治会がアプリを通して目指すのは情報共有の早さだけではない。
山田副会長は「若い世代の方々にも地域の魅力を知ってもらい、地域の活動にもう少し踏み込んでいただきたい」とアプリ導入のもう一つの狙いを語る。
若い世代が肌身離さず持っているスマートフォンに自治会を結びつけることで、参画を促したい考えだ。
自治会の担い手不足を危惧する新潟市は、アプリの導入を支援している。
25年度から自治会向けアプリの導入に必要な費用を助成していて、26年8月までに10の自治会での導入が決まっている。
新潟市市民協働課の上村真由美課長は「自治会の事務作業について負担感が大きいという声を聞いている。現役世代の方が加入しづらい状況がある」との認識を示した上で、「60代ぐらいの方であると、みんなスマホを使いこなしている。今こそアプリを通じて電子回覧板に切り替えていくべき時期なのかなと考えている」と述べた。
“紙”を望む世帯も…変化は少しずつ
アプリを通じ、若い世代の積極的な参加が期待される一方、紙で情報を得ることを望む人が多いことも無視できない。

女池8丁目自治会は当面、回覧板とアプリを併用する考えだ。
山田副会長は「完全にアプリ移行するまでには時間がかかると思うが、少しずつ地域の情報を得てもらうツールになるかなと思っている」と期待している。
加入率は低下傾向…自治会の存続を左右する当事者意識
全国的に加入率が低下傾向にある自治会(71.7%総務省調べ)。
新和自治会で役員の世代交代のきっかけを作った伊藤正敏さんは、自治会への思いを次のように語る。

「現実から言えば、仕事をしている現役世代と自治会の活動を一緒にやることは容易ではない。それでも、自分たちが住んでいる所のことだから、本来であれば現役世代にある程度やっていただくのがありがたい。もちろん我々も協力するけれど」
自分たちの住んでいる所のことだから…住民の当事者意識こそが、自治会存続を左右するのかもしれない。
価値観が多様化する中でその役割を果たし続けるために、自治会が挑戦を始めている。

