コロナ禍での妊娠・出産が大きな不安に

全国の自治体で受理された妊娠届の数を表したグラフ。2020年の5月から7月までの間に受理された数は、20万4,482件となっている。
これは、去年の同じ時期よりも2万6,331件少なく、実に11%も減少している。

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こうした背景には、コロナ禍での出産に対する不安が大きく影響していると考えられる…

生まれて間もない赤ちゃん。

母・村上味央さん:
10月2日の朝に生まれた

好奇心旺盛なお兄ちゃんは、1歳9カ月の柊矢くん。

母・村上味央さん:
1人目は、仕事もしながらだったので、通いやすいところの産婦人科に行って産んだ

そして、今回出産した場所は…?

母・村上味央さん:
ここの部屋、自宅で。この部屋で産みました。家族のみんなに囲まれて。病院と違って、生まれた瞬間から一緒にずっといられる。この子(柊矢くん)にとっても、妹っていう存在が、ちゃんと認識できている状態になっているので、すごくよかったなと。満足度は100点以上!

助産師が自宅出産をサポート 「落ち着いて出産に…」

こうした自宅出産をする際にサポートしてくれるのが、助産師さん。

れいこ助産院・前原英子さん:
助産師は、あくまでも黒子なんです。主体は妊婦さん。それをサポートするご主人だったり、お子さんだったり。どういう格好で出産するか、どこで産むか、全部彼女(妊婦)たちが決めることなんですよ。だから私たちは、どこで産んでもいいようにサポートするんです

ことし70歳を迎えるという前原さん。広島市南区で、れいこ助産院を開業して21年。これまでに404人の赤ちゃんを取り上げてきた。

れいこ助産院・前原英子さん:
つい先日もこういうことがありました。そのお母さまは、旦那さんにしがみつきながら、リビングで出産すると思うとおっしゃっていたのですが、実際にその時になったら、台所で出産されました。ちょうど台所のシンクが、陣痛が来た時に、持って腰を振るのにちょうど良い高さだったらしいんですよ。それと、お風呂でお産する人もいるし、トイレで出産する人もいます。それは、私たちが言うことではないんですよ。もう陣痛が実際に来ていて、本当につらい思いをしているお母さんが、本能的に自分で選んでいくんです

とはいえ、助産師さんのサポートがあってこその自宅出産だが、病院との連携は欠かせないようす。

れいこ助産院・前原英子さん:
お医者さんの検診を拒否される方は、お手伝いすることができません。やっぱり、ちゃんと診断をして、医療機器で診察していただかないと。私たちがおなかの上だけで触っているのでは、わからないですよね。ですから、必ずお医者さんの協力が必要です。最終的には、36週~37週目の最終のお医者さんの診断で、「家で産んでもいいですよ」と許可が出る

れいこ助産院・前原英子さん:
総合病院でのお産もあるし、個人病院でのお産もあるし、家庭出産でのお産もあるし、助産所での分娩(ぶんべん)もありますので、どこで分娩するのが一番自分には合っているのかを考えていただきたいなと思っています

2人目のお子さんを自宅出産した藤本優佳さん。

母・藤本優佳さん:
やっぱり今はコロナなので、(産婦人科は)面会が難しくなったりとか、立ち会い出産とかもどうなるのかわからないという状況だったので。自宅出産にした理由は、家族の中で、日常の中で産みたいっていうのがひとつと、もうひとつは、お医者さんにお任せっていうよりは、自分で出産の体験を自立的にしてみたいということで、助産師さんに来てもらうことになりました。やっぱり自分の家で産むというのは、緊張感もなく、ゆっくりとゆっくりと進んでいったなと。落ち着いて出産に挑めました

相談できる相手を…「顔を合わせて話ができる場に」

助産師は、3年間の看護過程と1年間の助産過程を学び、国家試験に合格した人たちで、病院などの勤務助産師や個人での助産院を開業するなど、働く場所はさまざま…

竹原市にあるつぼみ助産院。

つぼみ助産院・長濱真由さん:
私の祖母が、昔でいう「産婆」だったので、両親に「あなたもなれば?」という声をもらって、その道に進みました

2012年の2月に開業し、現在までに106人の出産に携わってきた。こちらの助産院でも、新型コロナウイルスに関連した問い合わせが入っているという。

つぼみ助産院・長濱真由さん:
立ち会い出産ができないとか、家族の面会ができないというところで、可能であれば、お家で家族とともに命を迎えたいという申し込みがあります

この日は、つぼみ助産院の敷地を提供したイベントが開催されていた。

つぼみ助産院・長濱真由さん:
子供が日常生活の中で、いろいろ体験することが少なくなってきているので、それを体験できる場所っていうのを持って活動していきたいっていうママに出会いまして。私の中で、女性が輝いていけるようにサポートするのも私の役目だなっていうのも考えているので

こうしたイベントは、小さな子供を抱えるお母さんたちの情報交換の場としても活用されている。
3年前に長濱さんに出産をサポートしてもらったというお母さん。

母・小谷綾香さん:
産後もつながっていける場があるって、子供同士にとってもいいことだし、親同士にとっても、つながりあえる場があると、子育てもしやすかったりとかがあるかなと思います

つぼみ助産院・長濱真由さん:
相談できる相手がいないっていうのもあったりして、その悩みを誰に打ち明けていいのかわからないっていうところもあって、やっぱり顔を合わせて話ができる場っていうのも、今はなかなかなかったりするので、この場がそうなったらいいなっていうのは思っていますね

助産師とオンラインで相談も 不安な母親をサポート

こうしたコロナ禍での不安を抱えるお母さんをケアするために、新しい取り組みもスタートしている。

広島県助産師会・小泉敦子さん:
オンラインのビデオ会議システムを使って、助産師と1対1で顔を見ながら、ビデオ電話のような感覚でお話をしていただくというものですね

これは、広島県からの委託事業として、広島県助産師会が2020年7月から行っているサービス。

広島県助産師会・小泉敦子さん:
外出自粛要請以降、例えば母親学級がなくなったであるとか、子育てのお話広場がなくなったであるとか、人と話したり、「ちょっとどうなのかな?」と聞いてみたりする機会っていうのが減ってしまったので、その機会をつくれないかなと。「妊婦で感染したらどうなるのかしら?」であるとか、外出の際の心配や不安を抱えていらっしゃる方は、非常に増えているなというふうに思います

広島県助産師会・小泉敦子さん:
こういう感染拡大に気を遣わないといけない状況下でなくても、(妊娠中は)「大人と1日も話さずに過ごしました」なんていうことがある時期なので、大人の人と久しぶりに話したっていう方もいらっしゃるんですけどね。その相手が助産師なので、お友達やその辺のおばちゃんと話す感覚にプラスでアドバイスがもらえる

相談を申し込む際には、広島県が配布しているチラシ、または広島県助産師会のホームページからアクセスして、申し込みフォームに相談内容や希望する時間帯などを記載して、送信すればOK!

広島県助産師会・小泉敦子さん:
割と意欲を発揮するのが、授乳とかですかね。例えば、赤ちゃんにおっぱいを飲ませることに困っているお母さんがいらっしゃった時に、画面上で「実際に今飲ませてみます?」なんて言って、実際に飲ませるところを見せていただいて、「今どこに力が入っています?」って聞いたりとか、「タオルを1枚挟んでみるとどうかしら?」などというアドバイスができたりとか。何度でも相談無料ということを最大限に利用していただいて、安心してつながっていただいたらいいなというふうに思っています

7月からスタートした、ひろしま助産師オンライン相談。アンケートでは、利用者のほぼ100%が満足していると回答。
不安を感じている方は、ぜひ相談してみてほしい。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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