苦境に立たされた各局 反トランプ報道の果てに…

「反トランプ」で視聴率を稼いでいたCNN放送が、トランプ氏の退陣で「目玉商品」を失い、身売りされるかもしれないと伝えられている。

CNNのライバルであるFOXビジネス・ネットワークのチャーリー・ガスパリーノ記者が、11月13日放送の番組の中で伝えたもので、CNNの親会社のAT&Tは、1500億ドル(約15兆7500億円)の負債を解消するために売却を迫られていると言った。

「CNNは、もはやドナルド・トランプといういじめる相手がいなくなってしまい、視聴率が打撃を受けるのは目に見えています」

米国のニュース専門局は、保守派のFOXニュースがトランプ支持を、リベラル派のCNNとMSNBCがバイデン支持という構図で聴取者の取り込みを競ってきた。特にリベラル派の2局は、限られた市場を二分するため、その「反トランプ」報道は過激化する一方だった。

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それがトランプ大統領が退陣すると、各局とも言ってみれば「目玉商品」を失うことになってしまった。

その結果、ニュース専門局3社で来年の売り上げは、今年より13%減の24億8000万ドル(約260億円)まで落ち込むとマーケット調査会社のKAGANは予測する。

FOXニュースはすでに「トランプ離れ」を始め、MSNBCも親会社のNBCとマイクロソフトという巨大IT企業の傘下で、バイデン時代の番組編成を模索しているという。

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変化するケーブルテレビ界でCNNは生き残れるか

その中でCNNは、反トランプ路線を築いたジェフ・ザッカーCEOが退任すると言われ、同CEOの主導した戦闘的な報道がどのように変わるのか確たる戦略も打ち出されておらず、スタッフも思案しているという。(バラエティ誌電子版11月11日「CNN、FOXニュース、MSNBCはトランプ後の視聴率や売上の問題に直面する」)

加えて、CNNはケーブルテレビ界の変革の波をかぶることにもなったとガスパリーノ記者は指摘する。

「CNN以外のAT&Tのチャンネルは、ケーブルを使わず衛星経由などで配信するものばかりです。CNNだけが『痛い親指のような(場違いな)存在』なのです」

米国のケーブルテレビ界は今、「コード・カッティング(ケーブルを切る)」の時代に入ってきていると言われる。ケーブルテレビの顧客は、料金が安く番組も多様で、画質も優れているインターネットで受信する方式に乗り替わっているのだという。

CNNは、その名も「ケーブル・ニュース・ネットワーク」であるばかりに「脱ケーブル」に乗り遅れたとすれば皮肉だ。

このCNN売却話についてAT&T社は、これまでのところ否定も肯定もしていないが、買い手として噂に登ってきたのがアマゾン社オーナーのジェフ・ベゾス氏だ。

アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏(右)

同氏はすでにワシントン・ポスト紙を手に入れているが、テレビにも触手を伸ばしていると伝えられる。資産総額2000億ドル(約21兆円)とも言われる同氏にとって、売却額100億ドル(約1兆500億円)のCNNは「高い買い物」ではないのかもしれない。

大統領交代の混乱の中で、CNNの行方にも要注目だ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン+図解イラスト:さいとうひさし】