北海道の農家に衝撃が走っている。
アメリカ産のジャガイモの輸入解禁に向けた動きが進んでおり、生産者の間には経営への打撃や病害虫の侵入への不安が広がっている。
「輸入解禁には反対という空気はあった」
9月1日、北海道札幌市で開かれた農業関係者向けの説明会。
農林水産省がアメリカ産ジャガイモの輸入解禁に向けた状況を説明した。
参加者からは反対意見が相次いだという。
「輸入解禁には反対という空気はあった」(北海道農民連盟 山口浩幸書記長)

「ジャガイモの産地、今金町では収穫作業が始まりました。豊作ということです」(阿部空知記者)
北海道南部の今金町だ。
ブランドジャガイモ「今金男しゃく」の収穫の最盛期を迎えている。

油家正吉さんは先代から50年以上、ここでジャガイモを栽培してきた。
今回の輸入解禁の動きに不安を抱いている。
「生産者としては反対。ここ数年は肥料代もかなり値上がりしている。収入を考えると、安いものが大量に入ってくるのは賛成できない。農家をやろうという人が少ない中で、さらに減っていくのかな」(農家 油家正吉さん)

アメリカ産ジャガイモの輸入は、2006年にポテトチップス向けの加工用が解禁された。
今回、政府は料理に使われる一般流通用の生鮮ジャガイモの輸入解禁に向けて舵を切った。
アメリカ産は国産に比べ安くなることが予想され、生産者にとっては大きな痛手となる。
それだけではない。
より深刻な問題を心配する声もある。

約260ヘクタールの広大な畑で、種イモを育てている須藤孝政さんは。
「病害虫がどういう形で入ってくるかわからない。入ってきたとしたら、とんでもないことになるのではないか」(農家 須藤孝政さん)
輸入解禁により病害虫の侵入リスクが高まるという。
特に「ジャガイモシストセンチュウ」は、根に寄生して養分を吸収し生育を悪化させる。
収穫量は減少し、一度侵入すると長期間にわたって影響を及ぼす。
国産ジャガイモの8割を生産する北海道にとっては大きな脅威だ。
地域の味を支えるジャガイモ―農協・飲食店も懸念
地元の農協も反対の声を上げた。
「政治的なことは控えるようにしていますが…こればかりは、心配せざるを得ません」(JA今金町の公式SNSより)

このSNSの投稿について、農協の担当者は。
「生産現場を知っているわれわれから、心配の声を発した方がいいのではないか。輸入を認めるにあたっても、リスクを最小限ではなく、ゼロにしてもらわないといけない。今いない病害虫が入ってきた時の対処は、必ず後手後手になる」(JA今金町営農部 佐藤貴弘部長)

そして、これは決して農家だけの問題ではない。
「今金男しゃく」を使ったポテトフライだ。
今金町の飲食店「和しょく 田なか」では、地元産のジャガイモを使った料理が自慢だ。
「口の中にいれると衣がサクサクで、とても甘くて、ほくほくしていておいしいです」(阿部記者)
アメリカ産の輸入が解禁されても、地元のものを使い続けたいという。
こちらの店にとって地元産のジャガイモとは。
「なくてはならないもの。農家でジャガイモが取れないということは、すなわちわれわれも買えないということ。そういう危険性があるのなら、最初からストップした方がいい。なってしまってからでは遅い」(和しょく 田なか 田中 徳治さん)
輸入解禁に専門家が警鐘
政府が輸入解禁へ向けて着々と手続きを進めることについて、農業経済に詳しい専門家は。
「駆除の難しい病害虫のリスクを抱え込むことになる。ジャガイモは北海道の畑作農家にとって非常に重要な品目。畑作経営全体にも大きな影響を与える決断を、いま迫ろうとしているという状況」(北海道大学大学院 小林 国之 准教授)

北海道産ジャガイモは近年、温暖化の影響で収穫量が減っていた。
2026年の夏は北海道らしい気候に恵まれ、豊作だという。
ジャガイモの一大生産地の北海道。その未来はどうなるのだろうか。
