卓越した技能を持つ「現代の名工」に、松本市の料理人・山本経一さんが選ばれました。「中華料理はマジックショー」と話す蒸し料理の達人で、後進の育成にも力を注いでいます。

中華の料理人・山本経一さん(66)。松本市や安曇野市、富山県内に7つの店を持つオーナーシェフで、今も厨房に立ちます。

店では、酢豚などの中華の定番から豪華な「熊の手の姿煮」まで様々な料理を提供しています。

シセン・山本経一さん:

「1万カロリーの火を自在に操って中華料理ができてくる。鍋とフライパンで何千、何万という料理ができてくるんですよ」

山本さんは旧和田村(現長和町)出身で、テレビで見たコックの姿に憧れ、17歳で軽井沢町のホテルに就職しました。

洋食の世界に進むつもりでしたが、隣の調理場に目が釘付けとなります。

シセン・山本経一さん:

「中華料理の豪快に鍋を振る姿に憧れた。鉄の鍋とお玉で、大きな包丁でダンダンと刻んでさっと鍋にいれて、炎を上げてさっさっさと料理ができあがる。これを見ているとマジックショーのよう。これだと思った。僕の性にあうというか、生涯の仕事にしようと」

そこから都内などで10年以上修業して「四川料理」を身につけ、30歳で松本市内に店を開きました。

シセン・山本経一さん:

「これ全部調味料、これの掛け合わせだから25、6種類あるのでは。塩味、甘い、辛い、酸っぱい、麻(マー:しびれる味わい)、苦いも。それから香りも含めてこのバランス。一つの食材から何種類もの味付けの料理ができていく、これは素晴らしい魅力」

料理人として山本さんが極めたのは「蒸(ヂョン)」・蒸し料理です。豪華な中国の宮廷料理「満漢全席」のメニュー、「熊の手の姿煮」もそのひとつ。

シセン・山本経一さん:

「一生に一回食べてもらって、この珍味を味わってほしい。これ形のまま崩さないでここまでやわらかく煮るのは相当難しい。野獣で獣のにおいがする、それを取らないといけない。そこにすごく技術がいる」

(記者リポート)

「熊の手の煮込みをいただきます。くさみはまったく無くて、肉球部分はかたいのかなと思っていたんですが、やわらかいです」

姿煮を作るには、2、3日にわたって蒸して、下ごしらえをする必要があります。その時に使う蒸し器は、山本さんが独自に考案しました。

自動給水機能付きの蒸し器を開発し、効率化を図ったことも「現代の名工」として評価された点です。

シセン・山本経一さん:

「蒸し器は水を足さないといけない。忙しいと忘れちゃう。だから自動給水機をつけた。今まで誰もやったことがない」

山本さんは30年ほど前から、調理や店の経営の合い間を縫って、松本第一高校の食物科の生徒に料理を教えています。

レシピや技術は包み隠さず、弟子や料理の道を志す若者に全て伝えています。「中華料理を多くの人に食べてもらいたい」という思いからです。

生徒:

「鍋振りは重くて振りづらいが、先生は簡単に振っていてプロだなと思った。『現代の名工』に教えてもらえるのはすごいなと思った」

「説明しながらだが、すごく丁寧でスピーディーですごいなと思う。教えてもらったことを生かして、料理関係の仕事に就きたい」

この日は、生徒から祝福のサプライズが…。

生徒代表:

「このたびは『現代の名工』の受章、おめでとうざいます。山本先生の実習を受けられることを誇りに思います。これからも中華の良さを発信してください」

シセン・山本経一さん:

「みんな本当にありがとうございます。これを糧に中華の魅力を伝えていきたい」

技を磨き、後進を育て、「現代の名工」となった山本さん。それでも中華料理と出会った頃の思いは色あせておらず、生涯料理人として魅力を広めたいと考えています。

シセン・山本経一さん:

「たくさんの人に中華料理を広めたい。僕一人じゃ何十人にしか作ってあげられない。弟子ができたら四川料理を伝えてくれる。こんな素晴らしいこの料理法が一般家庭まで広がって魅力が伝わればいい」

(画像:「現代の名工」に選ばれた山本経一さん)

長野放送
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