なぜ人はマウンティングをしてしまうのか。そして、なぜそれをやめるのが難しいのか。
脳科学者の中野信子さんによると「自分を誇示したい」「優位に立ちたい」という欲求は性格の問題ではなく、人間の脳に備わった本能だという。だからこそ、その衝動を否定するのではなくコントロールすることが大事だそうだ。
著書『ロンドン紳士と脳科学に学ぶ 品格のあるマウントのとり方』(日経BP)から、一部抜粋・再編集して紹介する。
心の中に常にある原始的な欲求
私たちの心の中には、常に「自分を誇示したい」「人より優位に立ちたい」と暴れる原始的な欲求が潜んでいます。これは性格の問題などというものではなく、脳の構造そのものに深く根ざした、抗いがたい本能です。
誰かにマウントし、相手の顔が屈辱に歪むのを見た瞬間、あるいは自分が「選ばれし強者」であることを再確認した瞬間、脳の側坐核ではドーパミンが分泌されます。
この全能感という名の脳内麻薬は、一度味わえば抗うことのできない強烈な報酬系を形成し、私たちは無意識のうちに次の獲物を探し始めてしまうのです。
したがって、この本能を力でねじ伏せようとしたり、道徳心だけで否定しようとしたりするのは、暴風雨を素手で止めようとするほどに無謀な試みです。
賢い人は「欲求」を冷静に観察する
賢明な人間は、この野蛮な本能を消し去るのではなく、メタ認知という名の知性の鏡に映し出し、その姿を冷徹に観察することを選択します。
何かを自慢したくなったとき、あるいは無自覚に自分の恵まれた環境を口にしそうになったとき、貴方の脳内では報酬系が歓喜の声を上げています。その時こそ、心の中に住まわせた冷徹な外交官を呼び出し、極めてビジネスライクに計算をさせるのです。
「ここで自分を大きく見せ、一時的な快楽を得ることに、いったいどのような合理的メリットがあるか?」
この冷徹な外交官が弾き出す答えは、驚くほど一貫して「ノー」でしょう。

