2018年に富山市の奥田交番で起きた襲撃事件をめぐり、殺害された警備員の妻が県の賠償責任を求めた裁判の控訴審判決が、名古屋高等裁判所金沢支部で言い渡された。大野和明裁判長は一審判決を支持し、遺族側の控訴を棄却した。5年に及んだ裁判は、遺族にとって厳しい結果となり、妻は最高裁への上告については今後検討するとした。
事件の経緯 交番襲撃から17分間の空白
事件は2018年6月に発生。元自衛官の島津慧大被告(30)が奥田交番に押し入り、警部補をナイフで刺殺。さらに奪った拳銃で、近くの小学校で警備をしていた中村信一さん(当時68歳)を射殺した。


最大の争点は、交番襲撃の通報があった時刻から中村さんが殺害されるまでの「約17分間」の県警の対応だ。遺族側は、この間に島津被告が拳銃を持って逃走している可能性を県警は認識できていたと主張。パトカーで避難を呼びかけるなどすれば、中村さんの命が奪われることはなかったと訴えた。
これに対し県警は、「通報段階では住民に差し迫った危険があるとは認識できず、警告はできなかった」と反論した。

二審で新たな争点 拳銃奪取の認識はいつか
控訴審で遺族側が新たに追及したのは、「先着した警察官が、拳銃を奪われたことをいつ認識したか」という点だ。島津被告は、警部補の腰のベルトからつながるひもを切断して拳銃を奪ったとされる。遺族側は「警察官が気づかなかった、もしくは気づきながら通信指令課に報告しなかった」と主張した。
県警は「ベルトと拳銃をつなぐひもがどちらも黒色で同化するなどし、切断に気づけなかった」と説明した。

判決ではこの点について、「先着した警察官に過失があったと言わざるを得ない」と県警側の主張を退けた。しかし一方で、「気づけたとしても、周辺住民に危険が差し迫っていたとは認められない」と判断。県の賠償責任を認めなかった。

大野裁判長は「県警の対応は、事後的に見れば十分なものだったとは到底言えない」としながらも、「主たる原因は、常軌を逸した犯人の行動と、中村さんの不運というほかなく、県の賠償責任を認めることはできない」と結論づけた。
県警は「主張が認められた」

判決を受けて中村さんの妻は会見を開き、「最初から予想はしていた。やっぱりか」と心境を語った。一方で「先着警察官の過失という部分で認められたようで、そこはよかった」と述べ、最高裁への上告については今後検討するとした。
県警は「当方の主張が認められたものと承知しています。事件で亡くなられたお二人に謹んで哀悼の意を表します」とコメントした。
刑事裁判も来月に動き 差し戻し審が富山地裁で
奥田交番事件をめぐっては、刑事裁判にも新たな動きがある。強盗殺人などの罪に問われている島津被告の差し戻し審が来月、富山地裁で行われる。一審は「殺人罪」と「窃盗罪」で無期懲役だったが、二審はより量刑の重い「強盗殺人罪」の成立を前提に一審判決を破棄し、審理を富山地裁に差し戻した。島津被告が出廷すれば、公の場に姿を見せるのは約5年ぶりとなる。これまでの裁判で沈黙を続けてきた被告が何を語るのか、異例の差し戻し審の行方が注目される。
(富山テレビ放送)

