人手不足が続く介護現場ですが、政府は去年、外国人ヘルパーの特定技能の対象を訪問介護にも拡大しました。利用者の自宅で1対1となる訪問介護。掃除や買い物など、日本ならではの生活様式に苦労するインドネシア人女性を追いました。
「外国人ヘルパー」受け入れ進まず
高齢女性の自宅で介護を行う、インドネシア出身の訪問介護ヘルパー、イルナワティさん(28)。現場では引っ張りだこの存在で、利用者ともすっかり打ち解けています。

イルナワティさん:
今日の体調どうですか?
利用者:
体調よろしいです。
イルナワティさん:
めまいとかふらつきはないですか?
利用者:
ないです。
イルナワティさん:
よかったですね。

イルナワティさんは母国にいる家族を支えるため、「特定技能」の在留資格で3年前に来日。2025年11月から兵庫県芦屋市にある訪問介護の事業所「ロジケア」で働いています。
外国人ヘルパーを受け入れる背景には、 現場が長年抱える悩みがあります。
訪問介護事業所(株)ロジケア 佐野武代表取締役:
訪問介護員の不足と高齢化、両方をダブルパンチで我々の業界は苦しい状況にあります。

慢性的な介護人材不足を受け、国は2025年4月、「特定技能」の対象を拡大。これまで施設での介護に限られていた外国人労働者は、訪問介護の現場でも働けるようになりました。
しかし、対象拡大からおよそ1年あまりで、外国人訪問介護ヘルパーを受け入れた事業所は全体のわずか1.2%にとどまっているのです。
なぜ、人手不足の現場で受け入れが進まないのでしょうか。その一つが、訪問介護ならではの難しさです。

訪問介護事業所(株)ロジケア 佐野武代表取締役:
1対1で会話する場面はどうしても避けられないので、コミュニケーションに不安を感じていらっしゃる方もいたということです。
利用者と自宅で1対1となる訪問介護では、文化の違いに不安を感じる利用者も多いといいます。では、外国人ヘルパーが訪問介護で乗り越えなくてはならない壁とは?その現場を取材しました。
掃除機は日本に来て初めて使用 利用者「感謝ばかり」
イルナワティさん:
おはようございます。ロジケアです。お邪魔します。
この日、イルナワティさんが訪れたのは、団地で一人暮らしをする92歳の女性の自宅です。
イルナワティさん:
じゃあ、今日はいつも通りお掃除しますね。
利用者:
はい、お願いします。

訪問介護の仕事は、食事や入浴などを介助のほか、掃除や料理、買い物など、暮らしを支える生活援助も担います。
部屋の隅々まで丁寧に掃除機をかけていくイルナワティさんですが、実はこの掃除方法も壁の一つでした。

イルナワティさん:
私のうち(実家)は掃除機ないです。
――日本に来て初めて使った?
初めて使ってます。
インドネシアでは、掃除機が一般家庭には広く普及していないといいます。こうした生活文化の違いなどから、政府は、特定技能の外国人ヘルパーを受け入れる事業所に対し、研修や責任者による同行訓練などを義務付けています。
イルナワティさんは、今では“日本のお掃除”をすっかり身につけています。

イルナワティさん:
畳の線(目)を見て、その後、掃除機をかけます。
利用者:
いつも感謝ばっかりです。きれいにしてくれはるから。もう慣れてね、本当に日本の方と一緒。
買い出しでの“思わぬ事態”にも対応
訪問介護では、その場の状況に応じて1人で判断することも求められます。

別の利用者から頼まれたのはスーパーでの買い出し。イルナワティさんが手際よく買い物を進める中、思わぬ事態が。
イルナワティさん:
トイレットペーパー、これ?違う?一緒のものない。
種類豊富な日本のトイレットペーパーですが、頼まれていた商品が見当たりません。

イルナワティさん:
インドネシアでは、トイレットペーパー(の種類)は少ない。あまり使わない。
店員さんに聞いて、(それでも)なかったら、先ほど本人さん(利用者)がシングル欲しいって。
イルナワティさんは、慌てることなく、店員に在庫を確認します。
買い物を頼んだ利用者:
おかえり~。
イルナワティさん:
戻りました。
トイレットペーパーがこれ、一緒のものがなかったから。
買い物を頼んだ利用者:
大丈夫です。助かります。
1日10軒ほど、訪問することもあるというイルナワティさん。上司も働きぶりを高く評価しています。

現場責任者 近澤孝子さん:
イルナさんに来てほしいと言ってくださる利用者さんも多いので、日本のスタッフと全く変わりなく、すごく心強い存在だと思います。
介護福祉士の国家資格取得へ
仕事を終えたあとは、自宅で介護福祉士の国家試験に向けた勉強。特定技能の在留期間(5年間)中に国家資格を取得し、日本で訪問介護の仕事を続けることが今の目標です。

イルナワティさん:
覚えるのが一番大変。国家試験合格したらずっと日本に住みたい。
最初は(訪問)介護の仕事すごく心配、経験がないから。今は利用者さんから「ありがとう」「助かりました」とか、お年寄りのお世話をするのが私にとって心地いいと思います。
人手不足が続く訪問介護の現場で、イルナワティさんは今日も多くの人の暮らしを支えています。
(「イット!」9月1日放送より)

