今回の大雨による浸水被害。あふれ出た水はなぜ長らく引かなかったのでしょうか。
「海抜0メートル以下」
そこには、普段から排水作業が続けられている富山県氷見市特有の地形が関係していました。
29日正午ごろ、水没した車が何台も放置されていた氷見市川尻地区です。
住宅の軒先でタイヤを半分ほどの高さまで浸した水もそのままの状態でした。
500メートルほど離れた万尾地区では、実りの時期を迎えた稲穂が頭まですっぽり水に浸かったままでした。
県西部に線状降水帯が発生し、浸水被害が出たのは27日。
なぜ水は引かなかったのでしょうか。
撮影した車と水田の位置はこの辺り。
実は、水が海に向かって流れない理由がありました。
仏生寺川の河口までおよそ4キロ、黄色の線で示した地形の断面図がこちらです。
画面左の山側より、右側の海側の方が高いことが分かります。
さらに、丸で囲ったところは海面の高さより低い、いわゆる海抜0メートル以下。
青色がそのエリア。
氷見市は、市内の中央部に海抜0メートル地帯を抱える地形的な特徴があるのです。
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「氷見は富山では特殊な地形。まず低い、勾配がほとんど無い。勾配が無いと水も流れない。出口も砂丘で閉じられている。狭められている。なかなか水が流れない。(水が)溜まりやすく出しづらい」
そして、海抜0メートル地帯の最も下流域にあるのが…。
農林水産省の施設で氷見市土地改良区が委託を受けて管理する十二町潟排水機場です。
*氷見市土地改良区 業務課 上野俊さん
「地下にポンプが4台ある。ポンプを使って排水作業を行っている」
上流から集まる水をポンプで汲み上げ、下流に排水する施設。
1983年の設置以来、24時間体制で稼働しています。
排水機場の航空写真です。
今回の大雨で水があふれた万尾川、実は、下流域の標高が高いため、水が海に流れず、ここのゲートで区切られて海には、つながっていません。
排水機場は、万尾川の取水口からポンプで汲み上げた水を海までつながる仏生寺川に排水しているのです。
排水量は、1秒間におよそ35トン。
1日の降水量141ミリを想定して造られた施設ですが、今回の大雨ではその2倍を超える観測史上最大、300ミリの雨が降りました。
*氷見市土地改良区 業務課 上野俊さん
「あそこのコンクリートの立ち上がり(壁)から10センチ下くらいが最高の水位」
Q今までそんなことは?
「ありません。経験ない。今回の総雨量はポンプで排水できる雨量を遥かに超えていたため、なかなか水が引かないという状況になったと思います」
施設が浸水すると地下のポンプが壊れるため、急きょ、農水省と国交省から排水ポンプ車が駆け付け、対応にあたったといいます。
*氷見市土地改良区 業務課 上野俊さん
「29日の夜中(29日午後10時ごろ)まで(ポンプ)4台フル稼働してました。今は2台だけ動いている状態、もっと排水量が増えても対応できる状態に戻っています」
*富山大学 学術研究部 立石良准教授
「海面より土地が低い。そもそも湖、十二町潟もある。(浸水の水位が)上ってしまうと)しばらく引かない。ここ(排水機場)で吐き出さなければ、ぜんぜん引かない状態がしばらく続いた。
氷見市の関係者によりますと市内で浸水被害が出た地域はきのう朝までに概ね、水が引いたということです。
氷見市では40年以上前に排水機場ができてから十二町潟周辺の宅地開発が進みましたが、富山大学の立石良准教授は私たちの足元でも当時の想定を超える気象災害が発生するようになった一つの象徴と話していました。
なお、海抜0メートル地帯から排水する国の事業は射水市でも行われています。
