野良猫を捕まえ、不妊手術をして元の場所に戻す。霧島市が2024年から加速させてきた「TNR」という取り組みが、県内で先進的な事例として注目を集めている。クラウドファンディングによる資金調達と市職員の積極的な現場関与という二本柱で、2026年はすでに2025年の7倍を超える436匹の猫を保護した。
赤ちゃん猫の人工授乳実演に「かわいい」の声
8月、霧島市内で開かれた保護猫イベントでは、赤ちゃん猫の世話の実演に訪れた人たちの視線が集まった。「頑張って飲んでいます。おなかが減っていたみたい。かわいい」「おしっこしている時は無表情になっている」。会場には和やかな空気が流れた。

一方で、獣医師の浜崎菜央さんが子どもたちに語りかけた言葉には切実さがあった。「もし5匹とも女の子だったら、このお母さんも5匹産むから…30匹!すごい数になるの」。野良猫を放置することの問題を、わかりやすい数字で伝えた。
TNRとは何か
TNRとは、野良猫をTRAP(捕まえ)、NEUTER(不妊手術をし)、RETURN(元の場所に戻す)という三つの工程からなる取り組みだ。野良猫の数を増やさずに減らしていくことを目的としており、霧島市は2024年からこの活動を本格化させてきた。

資金はクラウドファンディングで募っている。霧島市環境衛生課環境保全グループの坂元宏彰グループ長によると、「令和6年(2024年)は60万円程度の寄付が集まり、令和7年(2025年)は220万円程度の寄付金が集まった関係で多くの不妊・去勢手術の補助を出すことができた」という。寄付額はわずか1年で約3.7倍に増えた計算だ。
市職員が捕獲器を設置、手術の調整まで担う
他の自治体との大きな違いは、市職員が現場作業に直接関わっている点だ。8月25日には住宅街で猫の捕獲作業が行われ、保護猫活動スタッフとともに市の職員が捕獲器の設置を担った。

2026年4月以降、急に生後間もない野良猫があふれるようになったというこの場所では、約20匹が捕獲された。他の地域と合わせ、翌26日には計61匹が一斉に不妊手術を受けた。手術の時間調整や動物病院との連絡も、市の職員が行った。手術を受けた猫は、印として耳の先端を少しカットされ「さくら猫」と呼ばれる。そして27日、手術を終えた猫たちが地域へと返された。

「手術しているかどうかが一番大事」
こうした一連の取り組みの効果は、住民トラブルの現場でも実感されているという。霧島市の担当職員はこう話す。「住民トラブルで私たちが仲裁に入って話をする中で、手術をしているか、していないかが一番大事。野良猫で困っている人にも『手術をしてしまうと一代限りの命なので最後まで見守ってください』と私たちも話しやすい」。
獣医師の浜崎さんも手応えを感じている。「とにかく全部やるということを進めることで、ここから先は新しい命が生まれることはない。ボランティアの皆さん、近隣の人のトラブルやストレスは減っていくのではないかと思う」。

9月1日から3回目のクラウドファンディング開始
霧島市では2026年、毎月TNRを実施し、すでに年間の保護数が436匹に達している。この勢いを維持するため、市は9月1日から3回目となるクラウドファンディングを開始し、今後の活動資金に充てる考えだ。
官民が手を携え、地道に続けてきた活動が着実に広がりを見せている。霧島市の取り組みは、同様の課題を抱える他の自治体にとっても、一つのモデルケースとなりそうだ。
【動画で見る▶官民一体の保護猫活動 先進的な取り組みが注目【鹿児島・霧島市】 】

