白血病などの患者を救う骨髄バンク。少子高齢化の影響でドナー登録者の減少が懸念されるなか、自らもドナーに命を救われたバレリーナが、バレエや音楽などのアートを通して移植医療の大切さを伝えている。
13歳で白血病 ドナーに救われた命
2026年8月2日、広島県廿日市市の「ウッドワンさくらぴあ」でバレエコンサートが開かれた。海外で活躍するプロダンサーから地元で活動する子どもまで、約60人が出演。華やかなステージで観客を魅了した。
企画したのは、廿日市市内でバレエ教室を開く三木まりあさん。2025年7月に、骨髄バンクや献血の啓発活動を行う団体「ART LINK(アートリンク)」を設立した。
「子どもから大人まで幅広い世代の人に、踊りや音楽などのアートを通して人と人とのつながりや命のつながりを自然に感じてもらいたい」
三木さんが活動の根底に置く「人と命のつながり」。そこには、自身の経験がある。
3歳でバレエを始め、バレリーナを目指していた三木さん。13歳の時、国際コンクールに初めてエントリーした直後、病気が発覚した。
「腰がめちゃくちゃ痛くなったり熱が出たりして学校に行けなくなって、病院に行きました」
診断は「急性骨髄性白血病」。血液のがんの一種で、がん化した細胞が主に骨髄で無制限に増える病気だ。抗がん剤治療では、吐き気や脱毛などの副作用にも苦しんだ。
「絶望…みたいな感じでした」
治療には骨髄移植が必要となり、三木さんはドナーから提供を受けて命を救われた。
「人が生まれ変わるというか、ドナーさんが本当に神様のような存在で。神様が私の中に入ってきて、私を生かしてくれています」
移植後、三木さんは再びバレエを続けることができた。
「ドナーさんがいなかったら今の私はいないと思っているので、命をつないでくれた恩人のように感じています」
ドナー登録者の約6割が40歳以上
命を救うドナー。しかし、骨髄バンクのドナー登録には少子高齢化の影響が出始めている。
2026年3月末時点の登録者は56万4145人。そのうち40代が約21万人、50代が約12万人で、40歳以上が約6割を占める。一方、ドナーとして提供できる年齢は54歳まで。今後、若い世代の登録が増えなければ、登録者数が減少していくおそれがある。
「楽しいイベントで堅苦しくなく自然に移植医療の大切さを知ってもらう、そういう場が必要なんじゃないかなと」
三木さんが選んだのは、大好きなバレエをはじめとする「アート」の力だった。
幼なじみのバイオリニストと初共演
コンサートを2日後に控えた会場では、出演者たちが練習や準備を進めていた。
約60人が出演する大がかりなステージは、三木さんにとって初めての挑戦。そこに、心強い仲間も加わった。
特別出演するのは、バイオリニストの木村瑠菜さん。国内外のコンクールで上位に入賞し、現在はヨーロッパを拠点に活動している。
実は、三木さんと木村さんは小学校1年生から5年間、同じクラスだった。
「瑠菜も芸術の習い事をいっぱいしていて、お互いを高めあえる存在だった。それは今でもずっと続いています」
三木さんが白血病になった時、木村さんは大きな衝撃を受けたという。
「突然ですごくショックでした。私はバイオリンだけど、違うものを求めてお互い頑張っていたので、まさかまりあが踊れなくなるなんて考えてもいなかった」
将来の夢を語り合った2人が、今回初めて同じ舞台に立つことになった。
移植医療を「知る」きっかけに
本番当日、会場では小児がん支援につながるレモネードも販売された。売り上げの一部は、骨髄バンクや小児がんの支援団体に寄付される。さらに、骨髄移植のドナーと、移植によって救われた人たちの写真も展示。移植医療を知らない若い世代に、その大切さを伝えた。
来場した中学生たちからは、「知らなかった」という声が多く聞かれた。そのうちの一人は「骨髄移植を今まで知らなかったので、医療系のことも勉強になった」と話していた。
そして、三木さんが企画した舞台が幕を開けた。
演目は「コッペリア」。三木さんをはじめ、バレエ教室に通う子どもたちがステージで舞う。
三木さんのバレエと木村さんのバイオリンが共演する場面では、2人がそれぞれの思いを演技と演奏に込めた。
かつて病気と闘い、バレエから離れることを余儀なくされた三木さん。
「瑠菜は私が病気になった時も支えてくれて、復学した時はみんなで温かく迎え入れてくれました」
その姿をそばで見てきた木村さんも、三木さんと同じ舞台に立てた喜びを語った。
「途中で涙があふれそうになって。とにかく、まりあと一緒に踊れたのがうれしかったし、このような会に携われたことがすごくうれしかったです」
出演者全員でつくり上げた2時間に及ぶ舞台が終わった。幕が降りたステージには、花束を抱えた2人の姿があった。
三木さんは木村さんに「本当にあなたがいてくれたおかげで……」と声をかけた。その先の言葉は聞き取れなかったが、2人の表情が互いの気持ちを物語っていた。
誰かの行動によって、救われる命がある。そのことを知ってもらうきっかけを、三木さんはアートでつくろうとしている。
「知る機会がなかったりするのではと思うので、このようなイベントで広く伝わっていけばいいなと思います」
(テレビ新広島)

