人口減少が止まらない鹿児島で、外国人労働者の存在感が急速に増している。2025年10月末時点での県内外国人労働者数は約1万6000人。この10年間で約4倍に膨らんだ。彼らはなぜ鹿児島を選び、何を求めてやってきたのか。そして企業側の受け止めは。現場の声を追った。
「桜島みたいな山があるから」――専門学校に集まる留学生たち
鹿児島市内にある鹿児島情報ビジネス公務員専門学校には現在、過去最多となる392人の留学生が在籍している。ネパールやベトナムなどアジア出身者がメインで、日本での就職を目指して学んでいる。

授業では日本のビジネスマナーである「報告・連絡・相談」の重要性が繰り返し説かれる。国際ビジネス科の留学生は「店長に言われた仕事が分からなかったが、もう一回聞くのはきついから聞かなかった」と打ち明けた。教務部の小坂元琉衣さんは「そういうときも、相談は絶対にした方が良い」と語りかける。こうしたやりとりが、留学生が日本の職場に溶け込むための第一歩だ。

2027年3月に卒業予定のネパール出身・パラジュリ・スマリカさんは、就職先として鹿児島を選ぶ理由をこう語った。「自然もいっぱいあるし、桜島みたいなとても大人気な山もあるので」。卒業生のうち半数近くが県内に残り就職するという。

中広義隆校長は「留学生は色んな言語をしゃべれるので、コミュニケーション能力が非常に高い。外国人は鹿児島にとって非常に大事になっていく」と強調する。
鰹節の現場を支えるインドネシア人女性
指宿市山川町に、20年以上前から外国人を受け入れてきた鰹節メーカーがある。従業員37人のうち17人が外国人という職場で、午前6時から包丁を握るのがインドネシア出身のリアさん(23)だ。

「どんな仕事かは知らなかった。初めて見て、えっ!包丁も初めて使うから、スッと手が切れた」と笑いながら話すリアさん。担当する「生切り」は、解凍したカツオに切り込みを入れる工程で、角度・深さ・長さにミリ単位の正確さとスピードが求められる。

3年前、家族のもとを離れ来日した理由は率直だった。「インドネシアは仕事はあるけど給料はちょっと安いと思う」。インドネシア中心部の月給は2万〜3万円ほどで、日本との賃金差は約7倍にもなる。
ベトナム人など母国語が異なる仲間との意思疎通に戸惑うこともあったが、カネニニシの西雄生社長は外国人労働者をこう位置づける。「会社にとっては当然、中心人物であって、彼ら、彼女らを軸にかつお節を作っている」。これまでに60人を受け入れてきた経験から出た言葉だ。

一方で西社長は課題も語る。「日本国内には魅力的な職種が非常に多くあるので、かつお節が作りたいとか魚が好きだからとか、そういった興味をプラスして持ってやらないと、なかなか務まるような仕事ではない」。
賃金格差が呼び込む人材、しかし定着は容易ではない
鹿児島労働局職業安定部の菅原祐昭部長は「産業別では製造業が最も多く、中でも食料品製造業がかなりの割合を占めている」と説明する。右肩上がりが続く外国人労働者数の背景には、こうした製造現場での深刻な人手不足がある。

ただ、定着という点では難しさも残る。リアさんは2026年10月に3年間の契約が終了し、給料の高さや都会への憧れから神奈川県の食品製造工場へ転職する予定だ。「神奈川県にもかつお節あるかな?」と笑うリアさんの言葉には、鰹節の仕事への愛着もにじんでいた。

2026年7月末に発表された鹿児島県の推計人口は、101年ぶりに150万人を割り込んだ。人口減少に歯止めがかからない中、外国人労働者は地域産業を支える不可欠な存在となりつつある。天文館の街を歩く人々が「かなり外国人が増えてきている」と感じるのは、数字が示す変化の一端に過ぎない。鹿児島と外国人労働者が互いに何を与え、何を得るのか。その関係はこれからも深まり続けていく。
【動画で見る▶「インドネシアより給料7倍」鹿児島の外国人労働者が10年で4倍に 人口150万人割れの地方を支える現実】

