議員たちにとっては“踏み絵”をぎりぎりで回避した形となりました。
福岡県議会は17日午後、臨時議会を開き、蔵内勇夫議長に対する議長職の辞職勧告決議案が提案されましたが、これを採決しないように求める動議が出て、決議案の採決は見送られました。
取材陣の質問に答えることなくエレベーターへと乗り込んだ蔵内勇夫議長。
その蔵内議長に対して先週、議長職の辞職を求める決議案が提出されました。
◆吉松源昭 県議(14日)
「『蔵内議長が怖い』で終わらせてはいけません。蔵内議長はもはや議長としての信任を失っていると私は判断しています」
決議案に賛成するのか反対するのか、“踏み絵”とも言われる状況に各会派は対応に追われました。
◆公明党 新開昌彦 会長
「我々としては地域の皆さんとか、いろんなことで声をいただいた中で判断した。賛成に回る」
議員10人の公明党は全員が賛成することを確認。
議員20人の民主県政県議団を率いる原中会長は、蔵内議長へ進退に関する要請書を提出しました。
◆民主県政県議団 原中誠志 会長
「県議会の信頼回復および議長の進退については、自らがしっかりと考えて決断をしていただきたいという内容の要請書です」
最大会派の40人の議員を抱える自民党は、16日から断続的に協議を繰り返したものの、賛成、反対の意見が出て議論は紛糾、方針をまとめることはできませんでした。
現在、議場が工事中のため、いつもとは違う場所での臨時議会です。
すべてが異例の中、吉松県議が決議案の提案理由を説明します。
◆吉松源昭 県議
「諸問題の渦中にあって、県議会のトップである議長がとった行動の数々は、その職責にふさわしいと到底言えるものではありません」
これに対し、予想していなかった動きが…。
◆林泰輔 県議
「動議!」
自民党の林泰輔県議が手を上げます。
◆林泰輔 県議
「ただ今、決議案について説明がなされましたが、これはたった今、上程されたものであり、我々議員はその趣旨について十分な理解には至っておりません。したがってこの重大な決断を下すには、この提案内容、時間共に不十分であり、採決を図ることは極めて拙速であります」
決議案について採決しないよう求める動議を提出したのです。
◆板橋聡 副議長
「動議は成立致しました。本動議をただちに議題とし…」
◆吉松源昭 県議
「議長議長議長、賛成かどうか起立で採決しないとだめでしょう!」
◆板橋聡 副議長
「決議案の採決を中止することに賛成の議員は起立願います。起立多数であります。可決されました」
この動議に関する採決は賛成多数で可決され、蔵内議長の辞職決議案の採決は、ギリギリのところで取りやめとなりました。
◆吉松源昭 県議
「多くの有権者のみなさんが見に来ているわけですから、それは正面から受け止めるべきだったと思います。賛成の討論の申し入れをした人がほんの数時間後に取り下げる、これは誰が考えても圧力があってますよね、自民党内で圧力がかかってますよね。こういうことがダメだと言っているんですよ」
◆動議を出した 林泰輔 県議
「私自身は最初からこれをやるべきではないと思っていました。議長という職にある者を下ろすかどうかという話ですから、それをもって他の全ての議員が『踏み絵』を踏まされるみたいな話になることは私は違うと思う」
◆蔵内勇夫 議長
Q.第三者委員会や政治倫理条例にめどがつけば辞職すると蔵内さんが説明されたと…。
「従来からそう言ってるから僕は。変わってません」
傍聴した人は…。
◆傍聴した人
「ここまでつぶされるとは思っていなかったので、せめて審議には入らせてほしかったと思います」
◆傍聴した人
「僕、きょう初めて来たんですけど、この状況で税金を納めたくない、それが本音です」
議員たちが態度の表明を避けた形の採決中止。
しかし県民からの議会への不信感がさらに高まることは、避けられそうにありません。
辞職勧告決議案 自民若手からも「賛成」の動きが…
17日の臨時議会では議長と副議長を除く84人の議員が、蔵内議長の辞職勧告決議案に賛成するのか反対するのか、起立して立場を示し、採決されることになっていました。
蔵内議長の政治責任に県民から厳しい目が注がれる中、各議員がまさに“踏み絵”を迫られる日だったといえますが、当日になって急転直下、取りやめとなりました。
その経緯を振り返っていきます。
前日の16日、県議会の各会派が辞職勧告決議案をどう扱うか断続的に協議し、第2会派の民主県政県議団は自主投票を決めました。
そして第4会派の新政会(6人)も自主投票を決めました。
この時点で民主はだいたい半数が賛成、新政会はほぼ全員が賛成という見通しではありました。
そして当日の動きですが、公明党が午前10時からの議員総会で、全会一致でこの決議案に賛成することを決め、自民党県議団からも午後1時ごろ、当選2回の若手の井上議員が辞職勧告決議案に賛成する討論をすると事務局に通告しました。
これは自民党の中でも一定数が蔵内議長の辞職勧告決議案に賛成に投じることを意味していました。
こうした動きを踏まえると、過半数の43人を超えて決議案が可決される可能性が浮上したわけです。
そしてその後の臨時議会で、自民党県議から辞職勧告決議案の採決中止を求める緊急動議が出されるに至りました。
「採決を図ることは時間が不十分で拙速であり、第三者委員会による調査をもって議長に辞職を求めることが望ましい」と理由を説明しました。
そしてこの動議が賛成多数で可決されて、辞職勧告決議案の採決自体は取りやめという異例の決着となったわけです。
少なくとも疑惑の当事者である蔵内議長の是非を各議員がどう考えているのか、県民がそれを知る機会は失われたと言えます。
蔵内議長は引き続き疑惑の当事者であることは変わりませんから、徹底した調査と解明が求められます。
