1つのモーターで27の動作を実現。10体の人形が演奏しているかのように動く、アイシンのからくり改善技術の象徴的な作品
1つのモーターだけで、27もの動作を生み出し、10体の人形がまるでオーケストラを奏でているかのように動く。アイシンの技術者たちが製作した「ワンモーターからくりオーケストラ」です。
からくりは、モーターやセンサーに頼らず、重力やバネ、歯車などのシンプルな仕組みを組み合わせて装置を動かす、日本古来の知恵です。アイシンでは1985年から「からくり改善」に取り組み、生産現場の改善活動に活用してきました。 その知恵が、いまは10体の人形によるオーケストラになっています。
楽器を“奏でる”人形たちは、一見すると自由に動いているように見えます。しかし実際には、たった1つのモーターから生まれた力が、カムやリンク機構などによって巧みに分配され、それぞれ異なる動きを生み出しています。
この作品が伝えているのは、単なる技術の面白さではありません。現場で働く人が知恵を出すこと。ムダやムラをなくし、複雑なことをできるだけシンプルにすること。そして、限られた力から最大の価値を生み出すこと。そこには、創業以来脈々と受け継がれてきた、アイシンのものづくりの原点があります。![]()
アイシンが追求してきたのは「動き」と「働き」の違い
一般的に設備づくりというと、「どんな機械を使うか」「どんな動きをさせるか」に目が向きがちです。しかし、アイシンがまず考えるのは少し違います。
私たちが追求しているのは、「動き」そのものではなく「働き」です。その動きは本当に必要なのか。もっとシンプルな方法はないのか。もっと少ないエネルギーで同じ価値を生み出せないのか。そうした問いを繰り返しながら、ムダやムラを取り除いていく。
その考え方を象徴しているのが、「無動力」と「ナガラ」です。
超エコ・低コストを支える「無動力・ナガラ」という考え方
無動力思想とは、製品の重力や重量バランスといった自然の力を活用する考え方です。
製品を搬送する。向きを変える。次の工程へ送る。
一般的にはモーターやシリンダーを使用する場面でも、アイシンではまず、「製品そのものの力を活かせないか」を考えます。電気を使わない。油圧を使わない。空圧を使わない。だからこそ設備はシンプルになり、省エネルギー化と低コスト化の両立につながります。
一方のナガラ思想は、1つのアクチュエーターで複数の働きを生み出す考え方です。
1つのモーターで3つ以上の動作を実現する。カムやリンク機構を活用しながら、1つの力を最大限に活かす。「ワンモーターからくりオーケストラ」は、まさにその考え方を体現した作品です。
アイシンの現場では、こうした発想を積み重ねながら、超エコで低コストな設備づくりを進めてきました。
100年に一度の変革期。アイシンが変えなかったもの
現在、自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えています。
電動化の進展。お客様ニーズの多様化。需要変動への対応。さらに日本では少子高齢化が進み、ものづくり企業における人材確保も大きな課題となっています。
こうした環境の中で、アイシンがめざしているのは、「世界中のお客様のニーズに合った製品を低コストで素早く提供できるフレキシブルライン」そして、「ものづくりに誇りと喜びを感じられる、人が中心の生産ライン・工場」の実現です。
変化に強い生産ラインと、人が活躍できる職場。どちらか一方ではなく、両方を実現することが、これからのものづくりに求められていると考えています。
人の知恵を、もっと活かせるものづくりへ
アイシンは今、現場で培われた知恵や経験を次世代へ受け継ぐための新たな挑戦を進めています。
熟練者の経験や勘に頼るだけでなく、その知見を誰もが活用できる形にする。個人の中に蓄積されたノウハウを、組織全体の力へと変えていく。その取り組みの一つが、ものづくりDXです。
DXというと、からくりとは真逆のデジタル化や自動化を思い浮かべるかもしれません。しかしアイシンがめざしているのは、単なるデジタル技術の導入ではありません。現場の知恵を見える化し、共有し、人を主役とするものづくりをさらに進化させることです。
言い換えれば、ものづくりDXは、からくり改善の時代から続く「人の知恵を活かすものづくり」を、デジタルの力で広げていく取り組みとも言えます。からくり改善で培ってきた知恵も、無動力・ナガラの考え方も、今なおアイシンのものづくりの中に息づいています。
人の知恵を活かすこと。ムダをなくし、より良い仕組みを追求すること。そして、その知恵を次の世代へ受け継いでいくこと。手段は変わっても、受け継がれている考え方は変わりません。
アイシンはこれからも、「ものづくりに誇りと喜びを」を大切にしながら、人を中心に据えたものづくりの進化に挑戦し続けます。
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