最近の日韓共同世論調査の結果は、長年冷え込みと回復を繰り返してきた両国関係において、一つの明確な転換点を示している。
日韓関係「良い」が双方で過去最高
読売新聞社と韓国日報社が5月に発表した共同世論調査によると、現在の日韓関係を「良い」と捉える割合は、日本側で59%、韓国側で66%に達し、調査開始以来で過去最高となる数字を記録した。
また、韓国の調査研究機関「東アジア研究院」が8月に発表した統計では、日本に対して「良い印象」を抱く韓国人の割合も54.3%と半数を超え、こちらも過去最高の水準を更新している。
長らく両国間を覆っていた相互不信の空気が和らぎ、文化交流の拡大や観光需要の爆発的増加とも相まって、市民レベルでの対日・対韓好感度の向上と親密な機運が高まりを見せている。
かつてのような歴史認識や政治的対立による国民感情の激しい悪化は影を潜め、お互いを対等で身近な隣国として評価する素地が国民意識の中で着実に形成されつつあると言えよう。
首脳同士も良好だが
こうした市民感情の変化を背景に、国家の首脳間においても極めて良好な関係が構築されている。
高市首相と李在明(イ・ジェミョン)大統領の間では、定期的に互いの国を訪問し合うシャトル外交が完全に定着し、首脳同士が率直に意見を交わす場面が頻繁に報じられている。
外交の表舞台において演出される二人の親密さと円滑なコミュニケーションは、日韓関係の新たな展開を印象付けるに十分な華やかさを備えていると言える。
しかし、この表向きに展開される良好な指導者関係を文字通り純粋な親善関係としてのみ捉えるならば、国際政治の冷徹な構造を見誤ることになる。両指導者の歩んできた政治的軌跡や本来の政治信念に目を向ければ、この良好な関係の核心に存在しているのは、感傷的な融和ではなく極めて現実主義的な戦略的接近に他ならないからである。
真逆の政治基盤
高市首相は、従来から日本の伝統的な保守主義を牽引し、国家主権や安全保障の強化を最優先課題として掲げてきた政治家である。
一方の李在明大統領もまた革新系勢力を基盤とし、過去の政治活動においては対日関係に対して極めて厳しい態度と原則論を崩さない姿勢で知られていた。
本来の思想的背景や政治的基盤だけを対比させれば、両者の接近は容易ではないはずであった。それにもかかわらず、両首脳がかつてないほどの協調姿勢を演出している背景には、双方にとってそうせざるを得ない強力な外部環境と国内政治上の構造変化が存在している。
中国と北朝鮮
第一に、日韓を取り巻く東アジアの安全保障環境が極めて厳しい局面を迎えているという現実がある。
核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮、力を前面に出した海洋進出を続ける中国、そして常に緊張を孕む台湾海峡情勢の行方は、日韓双方の安全保障にとって最大の懸念事項である。
仮に台湾海峡で危機が発生した場合、海上輸送路の混乱や周辺地域の安全保障上のリスクは、日本のみならず韓国の経済と生存にとっても致命的な影響を及ぼす。
また、米中対立が深まるなかで、安全保障の拠り所となる日米韓の三カ国連携を維持・強化することは、今日の日韓両国にとって必須条件となっている。高市首相にとっても李大統領にとっても、安全保障の現場において日韓の足並みが乱れることは絶対に避けなければならないという切実な現実がある。
韓国世論の変化
第二に、韓国国内における世論の構造変化が、李在明政権の対日姿勢に影響を与えている点が挙げられる。
現代の韓国市民、特に若い世代は、過去の歴史問題に対して一定の認識を持ちつつも、それ以上に実利や現代カルチャー、経済的メリットを重視する傾向を強く持っている。
彼らにとって、過去の過度な対日批判やナショナリズムを煽る政治パフォーマンスは、もはや魅力的な政治姿勢とは映らないどころか、時代遅れの政治的煽動として不興を買うリスクすら孕んでいる。李大統領にとっても、厳しい対日姿勢を前面に打ち出すことは自らの支持を失う結果となりかねず、実利と安全保障上の実効性を追求する柔軟な姿勢を示すことが国内政治的な現実解となっているのである。

このように分析すると、高市首相と李大統領の間に築かれた良好な関係は、個人的な波長の合致や偶然の産物などではなく、互いに直面する危機と課題を計算に入れた「戦略的接近」の成果であることが浮かび上がる。
双方が抱える政治的立場やイデオロギーの違いを横に置き、国益の共通項を最大限に引き出す手法を選び取った結果が、今日の円滑なシャトル外交である。
不可欠なパートナーへ
市民レベルにおける過去最高の好感度という追い風は、指導者層の戦略的接近に正当性と推進力を与える重要な足場となっている。
しかし、その根底にあるものが冷徹な安全保障環境と政治的リアリズムに裏打ちされた戦略的選択肢であるという構造を理解することこそが、今後の日韓関係の持続可能性を見極める上で不可欠な視点となる。
日韓は単なる友好関係の演出を超えて、厳しい国際情勢をともに生き抜くための不可欠なパートナーとして、戦略的接近の質をより一層高めていくことが求められているのである。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】

