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「ようやく力士として始まった」師匠が明かす、大の里の苦難の1年と復活の意味|FNNプライムオンライン

「ようやく力士として始まった」師匠が明かす、大の里の苦難の1年と復活の意味

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大相撲秋場所は千秋楽を迎え、石川県津幡町出身の横綱・大の里が1年ぶりとなる6度目の優勝を飾った。左肩の怪我に苦しんだこの1年、復活を遂げた横綱の涙に地元は感動し歓喜に沸いた。同じく郷土力士として場所を盛り上げた十両・輝も優勝争いを演じ、石川県全体が固唾をのんで見守った。苦悩を乗り越えた横綱の復活劇と、郷土力士たちの熱戦の軌跡を追う。

横綱・大の里、1年ぶり涙のV!

27日、東京・両国国技館で開かれた大相撲秋場所の千秋楽。優勝争いは、前日に3敗目を喫した横綱・大の里と、同じく3敗で並ぶ大関・安青錦の2人に絞られた。勝った方が優勝という、まさに天下分け目の大一番だ。

この一番を応援しようと、大の里の地元・津幡町では恒例のパブリックビューイングが開催された。会場には約200人のファンが集結し、固唾をのんで勝負の行方を見守った。「きのうときょうの連続でパブリックビューイングにやってきました。本当にあと一番がんばれ!」「絶対に優勝してほしいです。大の里頑張ってください!」と、熱い声援が送られた。

横綱相撲で掴んだ6度目の栄冠

運命の一番。立ち合いで相手の体を起こし、懐に入らせなかった大の里は、その勢いのまま安青錦を豪快に突き出した。横綱相撲で6場所ぶり、6度目の優勝を果たした瞬間、津幡町の会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

表彰式で大の里の目から涙があふれた。「去年けがをして『どうなるかな』と思っていたんですけど、この景色だけを見たくてなんとか頑張って、きょうこうやって優勝ができてうれしいです」。怪我に苦しんだ1年間の思いが、涙とともにあふれ出た。

この復活劇に、地元のファンも感動を隠せない。「久しぶりこんなに感動したの。町民と一緒に石川県民と一緒に応援しようと思ってわざわざ本場所のチケットをとらなかったの。だから念願が叶って本当によかったです」。会場に駆けつけた中には、大の里の後援会長も務めた矢田富郎前町長もいた。「最近1年間、(大の里が)元気なかったですから、津幡町民がなんとなく沈んだ感じになっていましたけれども、これでまた少し、元気が出てくると思います」と、郷土の英雄の復活を喜んだ。

師匠が語る「ようやく力士として始まった」

国技館前でのパレード後、大の里は茨城県内にある部屋の祝賀会会場へ向かい、師匠の二所ノ関親方に久しぶりの優勝を報告した。親方は弟子の復活を「よく立て直してやってくれたと思います」と称えた。

しかし、その道のりは平坦ではなかった。親方は「僕の心が折れそうになった時もありましたからね。『大丈夫かな』っていう。負け方がどうしても強い時のイメージから半分くらいになっていたので、『どう復活していくのか』っていうことも考えましたけど、よく腐らずやってきたと思いますよ」と、苦しかった胸の内を明かした。

そして、この1年を乗り越えた大の里に、さらなる期待を込める。「いやになることもあるしね。ようやく力士として始まったと思いますよ。本来ならここで満を持して横綱になるんですけど、その前にバーっと勢いで(番付が)上がってしまったところがあるので、いろんな経験ができないまま上がってしまったところもあるから。そういう部分でも非常に濃い一年になりましたね。あとは人間的にももっと成長していければ、みんなに尊敬される横綱になるんじゃないですか」。この苦しい1年は、横綱として真の強さを手に入れるための試練だったのかもしれない。

「何とかならないこと」から得たもの

優勝から一夜明け、会見に臨んだ大の里は、安堵の表情を見せた。「後半戦になると余計な事を考えて夜も寝られないことが多かったんですけど、今回、優勝して達成感というか、(昨夜は)久々に布団に入ってすぐ寝ましたね」

千秋楽前に連敗を喫したことについては、「優勝を1年間していなかったというブランクもあって、(優勝を)意識して考えすぎていて。自分の一番より他の取り組みだったりとか、優勝前線に関係する取り組みを考えすぎていて」と、精神的なプレッシャーがあったことを認めた。

左肩の怪我に悩まされたこの1年を振り返り、「今までこういう大きなけがというか、長期的に休む、苦しんだことがなかったので、何とかなると思ってやっていたことが、何とかならないことになって。逆にいろいろな方面で相撲に対して考えることができたんじゃないかなって思います」と語った。初めて直面した大きな壁が、力士として、一人の人間として、彼を大きく成長させたのだ。来月には金沢場所で石川に凱旋する。「また北陸のみなさんにいい報告ができると思いますし、巡業に見に来てもらって楽しんでもらえればいいかなと思います」と、故郷への思いを口にした。

地元・石川も歓喜の渦に

大の里の優勝に、県内各地も沸いている。地元・津幡町役場には、長さ7メートル、幅82センチの巨大な懸垂幕が掲げられた。町民からは「1年ずっと待っていたので横綱もしんどかったと思うんですけど、優勝できて誇らしい、町民として」「これからもこれがたくさん何度もあがるのかなと思う」と喜びの声が上がった。吉田克也町長も「多くの県民のみなさまにも元気・勇気をくれた優勝なんじゃないかなと思っています」とコメントした。

一方、大の里の大好物として知られる「チャンピオンカレー」では、「振る舞い酒」ならぬ「振る舞いレト」と題したキャンペーンを開始。カレーを注文した客にレトルトカレーをプレゼントしており、多くのファンが訪れていた。

「来てびっくりしました。こんなのもらったの初めてなので」「いろんな県にいっても自慢になる」と、客も笑顔を見せた。このキャンペーンを通じて、地域全体で喜びを分かち合っている。

もう一人の郷土力士・輝の悔しさと決意

今場所を盛り上げた郷土力士はもう一人いる。七尾市出身の十両・輝だ。十両11枚目で迎えた今場所、初日から10連勝の快進撃で一時は単独トップに立った。大の里とのW優勝も期待されたが、終盤に3敗。それでも千秋楽は勝てば優勝という一番に臨んだ。

地元、七尾市の能登食祭市場でも多くの人が声援を送ったが、輝は北の若に押し倒しで敗れ、その後の優勝決定戦でも敗北。初めての十両優勝にはあと一歩届かなかった。「あと一番って楽しみに見ていたんですけど、本当に残念に思っています」と、地元ファンも肩を落とした。

この結果に師匠の高田川親方は、「輝に限っては10連勝して最後に3連敗。優勝決定戦でも負けて。お前らしいったらお前らしいけど。もっとしっかりしないと」と愛ある檄で奮起を促した。

輝本人も、「最後は死ぬほど悔しい思いもしましたし、また頑張るしかないかなと思いました」と唇を噛む。優勝への意識については、「意識しないようにと思っている時点でもう意識している部分はありました」と、プレッシャーとの戦いがあったことを明かした。「僕は本当に真っ向勝負で前に出るしかないので、その相撲で少しでも見てくれる人の元気が出るような相撲をまたとっていけたらと思います」と、前を向いた。

専門家が分析する勝敗の分かれ目

元十両・髙立さんは、大の里の勝因について「横綱の馬力が勝って、しっかり相手を突き起こせる。なので相性がいい」と分析する。千秋楽の一番でも、安青錦がまわしを引いて攻めようとしたが、「それ以上に横綱の馬力、圧力が相手にしっかり伝わった」ことが勝利につながったという。

一方、輝の千秋楽の一番については、相手に組ませなかったところまでは良かったものの、「ちょっと腰が引けてたので、しっかり相手に圧力がかからなかった」と指摘。15日間の疲れもあったのかもしれないが、最後の最後で課題が出たと分析した。

怪我からの復活優勝を遂げた大の里、そして悔しさをバネに次を目指す輝。郷土力士たちの活躍は、石川県民に大きな感動と勇気を与えた。2か月後の九州場所、そして来月行われる金沢、かほくでの巡業で、彼らがどんな姿を見せてくれるのか、期待は高まるばかりだ。

(石川テレビ・9月28日放送)

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