障害の有無に関わらず、誰もが同じ目線で楽しめるイベントが福岡市で開かれた。そこには、障害のある人も“支える側”として活躍する姿がみられた。
音を気にせず楽しめるプラネタリウム
医療的ケアが必要な人たちが通う福岡市の施設、ケアコミュニティハウス『ニコちゃん家』。この日、開催されたのは、移動式プラネタリウムのイベントだ。

『ニコちゃん家』では月に一度、地域の人も自由に参加できるさまざまなイベントを開いている。この日は、全国で移動式プラネタリウムなどを行う団体が施設内にドームを設置した。

「私たちが普段、自分からどこにでも出向いて行って選んでやることが、彼らには難しいので、できればその選択肢のひとつをどんどん増やしていくことがしたい」と話すのは『ニコちゃん家』代表理事の森山淳子さん。

この日参加した家族も満足した様子だった。
「プラネタリウムに連れて行こうと思ったら声を出したりしてハードルが高い。こういう機会に経験させられるのは親として嬉しい」(Aさん家族)

「家族4人で行ける場所というのは、すごく制約が多かったり、そもそもなかったりするので、非常にありがたい」(Bさん家族)

このプラネタリウムの特徴は、声を出すことができたり、医療機器の音がしたりしても気兼ねなく楽しめること。呼吸器や吸引器の音を気にする必要はなく、大型の車イスのままドームに入ることができる。

更に、寝転んで星空を見上げることで子どもも大人も、障害の有無に関わらず同じ目線で楽しめる。

プラネタリウムを開催した『星つむぎの村』の代表理事、髙橋真理子さんは「まだまだ社会には、障害を持ってる人たちにとっての社会の側が持ってるバリアが、いわゆる健常者が気づかない、知らない世界がありすぎて、それはほんとに如何ともし難い。寝転んで見るとみんな同じ視線になる、そしてそこで境界線が消えるということがひとつの大きな特徴」と話す。

「これまで助けてもらったから今度は…」
このイベントに障害のある人が“支える側”として活躍する姿があった。横浜市に住む20歳の吉田桃さん。数年前から自ら希望してボランティア活動に取り組んでいる。

桃さんは「みんなとやると楽しくなれる。嬉しくなる。いろんな人に触れ合える。触れ合いは、大切。いろんな体験ができる」と話す。

桃さんは、先天性の心疾患のほか、発達障害や知的障害があり、横浜では命を脅かす状態の子どもやその家族を支える施設の『子供ホスピス』を利用している。

今回は“緩和ケア学会”に参加するため母親とともに福岡市を訪れたが、普段は大型の車イスや呼吸器などを使用しているため、宿泊できる施設が限られている。今回、その滞在先となったのが『ニコちゃん家』だった。

イベントが開かれることを知った桃さんは、自らボランティアとして参加。来場者を笑顔で迎え、積極的に会場を盛り上げる。

桃さんの母親の恵子さん(48)は「これまでいろんなことを助けてもらったからこそ、自分もやりたいっていう気持ちだし、ほかの方の負担になってしまう部分や求められるスキルやパワーとして足りない部分もあるけれど、この人だからできる部分もあるのかな、あるといいな」と話す。

子どもと一緒に参加した母親「奇跡だったかも…」
そしてプラネタリウム内が暗くなり、いよいよ天体ショーが始まった。暗闇のなか、参加者たちが満点の星空を見上げる。普段、なかなか見ることができない星空に子どもたちからも歓声があがっていた。
参加したAさん家族は「近づいてくるものに手を伸ばすとか、余り日常で出ない動きなので、そういうのが見られて良かった」と笑顔を零した。

またBさんの家族は「家族で同じ目線で見るというのがなかなかないので、ギュッとなって見られるのがとてもよかった」と喜びを語っていた。

代表理事の森山さんは「桃ちゃんもホスピタリティ溢れるなかの1人として活動しているのが、そこに病気や障害は関係ない。もちろんケアはとんでもなく大変だけど、桃ちゃんのようにみんな当事者の人たちが“自分がここに普通にいて当たり前だ”と思ってるような生活ができる人が、1人でも2人でも3人でも増えていくのが、社会にとっても良いことかなと感じる」と話す。

桃さんが働く姿から改めて感じることがあったようだ。

桃さんも「大成功です。嬉しい気持ちになる」と嬉しそうに話し、これから先もボランティアを続けていくという。
(テレビ西日本)

