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2024年から本格化した「医師の働き方改革」に加え、2026年6月の「診療報酬改定」や「新しい地域医療構想」など、地域医療は大きな転換期を迎えています。医療現場の最前線に注目が集まる一方で、それを支えるバックオフィス(経営管理)は今、深刻な危機に瀕しています。経理担当者の高齢化、属人化された「職人技」の業務、精度やスピードの限界など、根深いアナログ文化。


「病院の経理は、長年勤めるベテランの『職人技』で回っている。しかし、彼らが退職した時、同じように専門知識を持ち、複雑な入力を引き継げる人材の確保は難しくなっている」


全国の病院や介護施設の経営支援を行う日本経営グループは、この現状に強い危機感を抱いていました。


医療法人の会計ルールは極めて特殊です。従来のオンプレミス型(インストール型)会計ソフトは、この複雑なルールにしっかり対応できる一方で、他システムとの連携が難しく柔軟な加工ができませんでした。法改正に伴うバージョンアップの追加費用も、大きな負担となっていました。

一方、一般的なクラウド会計ソフトは入力の手間を大幅に削減できても、医療法人の財務会計という独特なルールには対応していませんでした。施設別の貸借対照表など、行政提出用の指定様式が出力できなかったのです。

現場は長年、このようなジレンマを抱えていました。


そのような中、税理士法人日本経営では、フリー株式会社との新たなパッケージ開発プロジェクトが始動し、2026年3月9日、ついに誕生したのが「freee for 医療」です。しかし、プロジェクトにアサインされたメンバーたちの本音は、「本当にクラウドで病院会計ができるのか?」という、半信半疑からのスタートでした。全く異なる強みを持つ2社は、いかにして医療機関のバックオフィスに真の効率化をもたらすサービスを生み出したのか。税理士法人日本経営 病院・介護事業部の黒内香理と後藤和典が、製品監修・検証の舞台裏を振り返ります。

開発の背景にある「医療現場のタイムリミット」

ーーまず、今回誕生した「freee for 医療」とはどのようなサービスなのか、そしてその開発に至った背景を教えてください。


黒内:「freee for 医療」は、「医療法人・病院の黒字経営を支える」をコンセプトに、医療法人の複雑な会計基準をあらかじめ組み込んだ(パッケージ化した)クラウド会計サービスです。 一般的な会計ソフトでは対応しきれない医療法人の財務会計という独特なルールに対応し、医療機関特有の勘定科目が初期状態から用意されています。そのため、ITに不慣れな病院でも、初期設定につまずくことなくスムーズにクラウド会計の恩恵を受けられるのが最大の特徴です。


後藤: 開発に日本経営が全面的に協力した最大の理由は、医療現場のバックオフィスにおける深刻な人手不足と高齢化です。 これまで病院の経理業務は、高度な専門知識を持ったベテラン担当者の「職人技」で成り立っていました。そのためブラックボックス化されているケースがほとんどでした。しかし、そうした方が定年退職を迎える今、同じように専門知識を持った若い人材を採用することは極めて困難です。未だに銀行の窓口まで往復1時間かけて通帳記帳に行ったり、紙の請求書を手打ちで入力したりしている病院も少なくありません。 一方で、施設間でのデータ共有や管理業務はこれまで以上に複雑化し、現場の事務的負担は増大する一方です。


黒内:これからの時代、専門知識を持たないパートスタッフの方でも業務を回せるようにするためには、人が考えて入力するのではなく「システムが考えて処理してくれる」最先端のクラウド会計が絶対に必要でした。 しかし、医療法人の会計には非常に特殊なルールがあります。マーケット規模を考えると「投資コストに見合わない」と開発が後回しにされるような領域でした。その中で、「本気で医療向けを開発しよう」と立ち上がってくれたのがfreeeさんだったのです。

譲れない条件から始まった共同開発

ーー開発プロジェクトにアサインされた当初、お二人は率直にどのようなお気持ちだったのでしょうか?


後藤:正直に言えば、アサインされた当初は「難しいだろうな」と思っていました。私自身、それまでfreeeのプロダクトをあまり触ったことがなく、「会計知識がなくても入力できる」という理想論は分かってはいても、複雑な医療法人の世界で本当に実現できるのか、半信半疑だったんです。最初は完成図すら全くイメージできていませんでしたね。


黒内:なにかビジョンがあったというよりは、「今、目の前のお客様が困っているリアルな不満を、包み隠さず全部ぶつけよう」というスタンスでした。現場の苦労を嫌というほど知っているからこそ、「このままでは現場では全く使えませんよ」と、あえて厳しい要望を突きつけるようなスタートでした。


ーー開発を進める中で、最も苦労された点や、意見がぶつかり合った「最大の壁」は何だったのでしょうか?


後藤:最も大きな壁は、拠点(部門)ごとの「BS(貸借対照表)」の作成機能でした。一般的な企業会計では、会社全体のBSと部門ごとのPL(損益計算書)が把握できれば十分なケースが多く、クラウド会計ツールも基本的にはそのように設計されています。

しかし、複数の病院や介護老人保健施設を運営する医療法人の場合、建物や高額な医療機器など資産の比重が非常に大きいため、拠点ごとにBSを出して採算を管理することが実務上、絶対条件になるのです。


黒内:「ホテル業だって、店舗ごとに土地の調達方法や借入先が違うのに、会社全体でBSが1つで良いはずがないですよね? 医療法人ならなおさらです」と、徹底的に主張しました。

freeeの開発チームにとってはシステム本体の思想に関わる大きな要求で、最初は想定していなかったようですが、それでも「やります」と応えてくれました。2025年の秋頃から頻繁にミーティングの場を設けて徹底的に議論を重ね、そこからわずか半年ちょっとという驚異的なスピードで、今年の3月にファーストリリースへと漕ぎ着けてくれたのです。

(フリー株式会社の伊藤様(右端)、瀬見井様と。freee統合ワールド2026にて)


単なる自動化ではない。 システムが人を支え、バックオフィスを「ブレイン」へ

ーー「医療向けに使えるのか」という当初の懸念は、どのようなプロセスを経て解消されていったのでしょうか?


後藤: 実は開発と並行して、私たちの記帳代行事業の業務効率化について、freeeの担当者さんが月1回、コンサルティングに入ってくれたんです。freeeさんが持つ既存の効率化ノウハウを惜しみなく提供してくれ、実際に私たちの業務がどんどん改善されていきました。 「クラウド会計で、どこまで本質的な医療DXが実現できるのだろうか」と慎重に見ていましたが、そのリソースの割き方と愚直な姿勢を見て、『本気度』が痛いほど伝わってきました。そこから一気に関係が深まりましたね。


黒内: 今回のパッケージ開発は、単にゼロから新しいシステムを作るというより、「元々freeeが持っていた優れた自動化機能が、医療業界でも問題なく活用できるか」を実務レベルで徹底的に検証していくプロセスでもありました。

ベースとなる既存の機能が優れていなければ、いくら新規開発を重ねても現場で使えるものにはなりません。検証を重ねる中で、freeeさんが持つ本来の強みが医療の現場でも大きな武器になると確信できたこと。それが、当初の懸念が払拭された大きな理由ですね。


ーー完成した「freee for 医療」によって、医療現場はどのように変わるのでしょうか。


黒内: 私たちが目指している世界は、「手打ちの仕訳ゼロ」です。 銀行データやクレジットカード、請求書受領サービスをすべてネットで連動させます。そして自動で仕訳を切って、経理処理をしてくれる。もし新しい取引が出たときは、画面に「これは備品ですか?建物ですか?」という選択肢が表示されて選ぶだけ。複式簿記の知識がなくても、システムが自動で考えて仕訳を切ってくれます。スモールビジネスであればともかく、それを病院でやるのです。本格的な知識がなければ経理処理できないような病院の会計でも、それができるという確信が、いまはあります。


後藤: これまで手作業で試算表を作っていた時間がゼロになれば、バックオフィスの担当者は本来やるべき「経営管理(ブレイン業務)」に時間を割くことができます。物価高や人件費高騰に立ち向かい、世代交代した院長先生がデータに基づく経営判断をするための、強力な武器になるはずです。

(日本経営グループの研究開発大会でも最終審査に選出され受賞)

医療機関の未来を支える次なる一手

ーー最後に、今後の展望と全国の医療機関へ向けたメッセージをお願いします。


後藤: 今回の3月9日のリリースは第一弾です。医療法人の会計基準に対応し、複数施設の会計処理を一元化して拠点ごとのB/S・P/Lを作成できるようになりました。今後はさらに、行政に提出しなければならない「決算届」などの特殊報告書類もシステム上で完全に自動作成できる第二段階の開発など、新プロダクトのアップデートに向けて継続して話し合っています。


黒内: 「IT化に興味はあるけれど、何から手をつけていいかわからない」という病院さんは非常に多いです。紙を電子化するだけなら3ヶ月でできますが、それではDXとは呼べません。二度手間をなくし業務フローを根本から見直すには、約1年かかります。

システムはあくまで道具です。定型業務の自動化はfreeeの持つテクノロジーが解決してくれます。私たち人間は、それに合わせていまこそ現場の業務フローを再構築する必要があります。それをできるかできないかで、本部機能の役割も効率も大きく変わります。それは、病院のガバナンスやマネジメントの質に、大きな差が生まれるということです。

私たち日本経営は、本部機能再構築に向けて全力でサポートします。マネジメントの再構築をお考えの病院様、経理担当者の退職や、長年の属人化された業務フローの見直しに悩む医療機関の皆様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。




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