今週はシリーズで再構築に向けた議論が進む富山地方鉄道の「鉄道線」についてお伝えします。
富山地方鉄道の鉄道線には3つの路線があります。
電鉄富山から黒部市の宇奈月温泉へ走る「本線」、立山駅へ向かう「立山線」、富山市内を中心に走る「不二越・上滝線」です。
地鉄の経営状況は今年3月期の決算で前の年から大幅に改善されたものの、人口減少に伴う利用者の減少や維持管理費の高騰などで鉄道部門では28期赤字が続いています。
画面に赤く示した区間がいわゆる「赤字区間」なのですが、地鉄がこれらの区間を廃線にする意向を示し、県や沿線自治体との再構築に向けた議論が活発になりました。
その結果、「立山線」と「不二越・上滝線」は維持されることになったんですよね。
「立山線」は立山黒部アルペンルートへのアクセスとして重要な“観光路線”、「不二越・上滝線」は富山市内における重要な“交通軸”だとして、去年のうちに国の支援制度を活用し、再構築していく方針が決まりました。
これらの路線の議論は比較的スムーズに維持する方向にまとまった印象がありますね。
そこで焦点となったのが「本線」です。
なかでもあいの風とやま鉄道との「並行区間」の在り方が議論の中心となりました。
本線は、滑川-新魚津 間があいの風とやま鉄道と並行しています。
富山駅へと速達で結ぶ「幹線」であるあいの風と比べて、地鉄はより生活に密着した「地域鉄道」で駅の数も多くなっています。
並行区間の利用者は。
*西魚津駅の利用者
「新魚津駅の方の医者に行く(廃止なら)どこを歩いていく?いや行けませんね」
*早月加積駅の利用者
「僕らは毎日電車に乗っているから税金を投入してもむしろありがたいけれど、そもそも(沿線に)住んでいないからしたら『え?』と思う人がいても仕方ない」
利用者にとっては当然、欠かせない路線ですが、利用者の数はあいの風と比べ少ないのが実態です。
その結果、昨年度の県と沿線自治体との会合では方向性がまとまらず、今年度に限り、地鉄、県、沿線自治体で赤字分を負担し合うことで「廃線」を回避し、結論が先送りになっていました。
この状況に、今年度からは県がかじ取り役となる「再構築検討会」がスタート。
県は焦点となる並行区間を維持した場合と廃線にした場合の「10年後の営業収支」を3パターンに分け示しました。
1つ目が現在と同じ、あいの風と並行する滑川―新魚津間を維持した場合。
2つ目は、並行区間で乗客を乗せる営業運行を廃止、線路は車両検査のために維持した場合。
ともに6億円の赤字です。
3つ目は、運行そのものを廃止し、将来的に線路を撤去する場合です。
5.4億円の赤字と最も赤字額は少なくなりました。
一方、今後10年間の投資費用は現状維持の場合が約127.4億円に対し、運行を廃止して線路を撤去する場合は最大173.1億円と、最も費用がかさむ試算でした。
今後10年間の費用面では、現状維持が最も安いという試算ですね。
さらに、本線の在り方を巡って、県の試算とは別に、黒部市の市民団体がこんな数字を示しました。
年間約123億円の「社会便益」
地鉄が走ることで住民の利便性や地価の維持、観光客の誘致など、沿線地域にもたらすいわば経済効果です。
本線が維持されることで、上市から宇奈月温泉間だけでも年間およそ123億円の価値をもたらすと訴えました。
*鉄道を活かしたまち黒部 成川正幸事務局長
「地鉄があることによってどれだけ便利になっているか、私たちの生活が良くなっているか、もっとそういう議論になれば良いのでは」
市民団体の訴えを受け、県も「社会便益」について試算したところ、本線の全区間を維持した場合の社会便益は年間約209億円に上るとしたのです。
さらに、専門家からは。
*関西大学 宇都宮浄人教授
「公共交通はいち民間事業者の儲けの手段ではない、むしろ『公共サービス』として提供していく。そのために県も沿線自治体も住民も含めて投資をし参画をすることで支えていく、今回の精査結果がまさに裏付けることになった」
こうした意見や試算結果を踏まえ、新田知事は先月の会合で、本線の「全線を維持」し、再構築する方針を取りまとめました。
*新田知事
「”全線維持”というパターンで今後の検討を進めることは合意したと思う」
結果的にはあいの風とやま鉄道との並行区間も含め全線で維持される方向になったということですね。
公共サービスとして本線は「全線を維持」より便利で利用客が増える路線へと「再構築」する方向となりました。
ただ、会合ではこんな一幕もありました。
*新田知事
「方向性としてパターン1の本線全線維持。”全線維持”で検討するということは理解いただいたと考えています」
*滑川市 水野市長
「理解いただいたとは私は一言も言っていない。そこはまだ迷っています」
*新田知事
「検討はしますと」
*滑川市 水野市長
「賛成でも反対でもありません」
*新田知事
「じゃあ3つのパターンで検討することは、ここでおしまいにしてパターン1(全線維持)で検討することにさせていただきます」
知事は「全線維持の方向で合意した」と言っていますが、滑川市の水野市長の発言を聞くと、沿線自治体がすべて合意したとは言えなさそうですね。
水野市長が疑問視しているのは沿線自治体の「費用負担」です。
残した場合、自治体がどの程度の額を負担するかが具体的に示されないと、結論を出すべきではないと指摘しています。
シリーズ、5日は、全線維持の方向に沿線住民はどう考えているのか、そして、費用負担に慎重な姿勢を示している滑川の水野市長を直撃しました。
