2026年5月、部活動の遠征における安全対策が大きく注目されるきっかけとなった事故が発生した。何が問われ、何が変わろうとしているのか?

■1人死亡・17人が重軽傷の事故

その事故は、大型連休の最終日に起きた。
福島県郡山市熱海町の磐越自動車道で、道路脇のガードレールなどに衝突したのは部活遠征中だった新潟県の高校生を乗せたマイクロバスだった。
ソフトテニス部の部員20人が乗っていて、このうち1人が車外に投げ出されて死亡、17人が重軽傷を負った。
事故の翌日、警察はマイクロバスを運転していた新潟県の無職・若山哲夫容疑者を過失運転致死傷の疑いで逮捕した。
若山容疑者は今回の事故の前にも複数回事故を起こしていて、旅客輸送に必要な二種免許は持っていなかった。実況見分では、足元がおぼつかない様子もみられた若山容疑者。
「時速90キロから100キロで走っていた」「速度の見極めが甘かった」
警察の調べに対しこう話しているという。安全に運転ができる状態にあったのか。検察は精神状態を調べる「鑑定留置」を行っていて、その結果を踏まえて起訴するかどうか判断する方針。

■「死ぬかもしれない」不安定な運転

移動時の安全対策を見直すきっかけになったこの事故。
今回の遠征先は、学校がある新潟県から片道3時間余りかかる福島県富岡町だった。その間、若山容疑者は“不安定”と言える運転を繰り返していて、新潟県内の防犯カメラの映像には、反対車線をはみ出して走行する様子もあった。
生徒の中には「死ぬかもしれない」というメッセージを家族に送った人もいた。
また若山容疑者は、自分の車でも事故を起こし、受け取った代車でも事故を起こしていた。
このような事故を繰り返していたことから、警察が2回にわたり免許の返納を促していた。

■なぜ引き受けた?

なぜ安全運転に疑問を持たれる若山容疑者が、高校の部活の遠征を引き受けるようになったのか?
学校側とバスの運行会社の認識は食い違っていて、学校側は「貸し切りバスを依頼した」としていましたが、運行会社は「レンタカーと運転手を依頼された」という認識だった。
運転手を引き受けてくれる人が見つからず、営業担当者の「知人の知人」である若山容疑者に依頼、過去の事故歴などは把握していなかった。
このような背景や状況は、警察も注目し捜査を進めている。
真相の究明が待たれるが、いずれにしても安全の責任が曖昧な形で、今回の遠征が行われていた点は見過ごせない。
そうしたことから安全対策の強化や徹底を求める声が広がり、対策も打ち出されたが、同時に“難しさ”も浮き彫りになっている。

■改めて対策を見直した高校

部活動の遠征をめぐり学校の対応が注目されるなか、改めて安全対策を見直したのが福島県郡山市の日大東北高校。
佐々木稔校長は「県外への遠征や試合が多くあるので、今回の問題は本校としても、同じ地域で起きたということもあって、重く受け止めている」と語る。
運動部から文化部まで“強豪”揃い。今回の事故を機に内部で調査を進めたところ、各部活を合わせると遠征は年間で100回を超えていた。
佐々木校長は「改めて、各部活動が年間どれぐらい遠征あるいはバスを利用するかアンケート調査を実施した。16の部活動が何らかの形でバスを使っての遠征があると回答した」と話す。


■安全を徹底すると費用も

遠征には、系列の日本大学工学部と共用で所有する大型バス2台を使用。遠征が重なった場合は貸し切りバスになる。
業者との“食い違い”を防ぐために、運行計画書などの書類はファイリングし管理するなど、安全対策を徹底しているが、どうしても避けられないのが“費用負担”だ。
見積書を見せてもらうと、大型バス2台で日帰りの遠征をした場合、26万円を超える金額が記されていた。
ガソリン代の高騰などもあり、全体的に値上がりしていて、保護者に負担を求めざるを得ない状況だという。
佐々木校長は「安全対策を重視すれば、当然そこに費用もかかってくる。この問題は、安全対策と費用とのバランスが求められる。安全を守れば、その分費用も掛かってくるので、場合によっては国や自治体からの補助も入れてもらえれば大変ありがたい」と語った。


■社会全体で考える必要も

今回の事故は、部活動の遠征が抱える構造的な問題が、極めて深刻な形で現れてしまった。
今回の事故を受けて、国は2026年6月末に安全確保策をとりまとめ、学校側に責任を持って運転手を手配することや、運転手の事故歴を事前に確認することなどを求めている。
痛ましい重大な事故を二度と発生させないように、再発防止策の徹底を呼びかけているが、それを担保するための費用の問題は避けては通れない。
部活動の移動費用については、徳島県が一部を支援する方針を固めるなど、保護者の負担の増加を抑えるための動きも出てきている。
福島県内でもどのような方法ができるのか、今後も事故の教訓を考えていく必要がある。

福島テレビ
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