主戦場はジョージア州の上院決選投票へ
米大統領選の集計が全州で終了し、バイデン氏が事実上勝利した後、米政界の主戦場はジョージア州の上院決選投票に移った。
今回、上院は100議席中35議席が改選にかけられた。その結果、現時点では非改選を含めて議席数は共和党50、民主党48となり、残る2議席は来年1月5日に行われるジョージア州の決選投票で決まることになった。

ジョージア州では今回現職で共和党のデイビッド・パーデュー氏と民主党のジョン・オソッフ氏が戦い、パーデュー氏が49.7%を獲得してトップに立ったが、第三の立候補者に流れた票があってジョージア州法で規定する50%以上の票を得られず決選投票にもつれ込んだ。
これとは別に、高齢の共和党議員が健康上の理由で任期途中で引退しその後任に任命されたケリー・レフラーさんの補欠選挙も行われたが、共和党から対立候補が出馬したためレフラーさんも50%を獲得できず決選投票に臨むことになった。
バイデン政権「レームダック」か
民主党はこれまで上院では47議席を占める少数派で、今回の選挙で過半数奪還を目指してきたが、ジョージア州の決選投票で2勝したとしても50議席対50議席になる。この場合、バイデン政権が誕生すれば「カマラ・ハリス副大統領が上院議長を兼ねて1票を投ずることができるので主導権を握ることができるが、1敗でもすると民主党の大統領が誕生しても「ねじれ現象」が起きて政権運営に大きな障害になる。

例えば、政権発足早々に必要な長官など幹部や大使などの任命には上院の承認が必要だ。また法案をはじめ外国との条約締結にも上院の可決が求められる。さらに、上院の司法委員会はトランプ大統領を悩ませたように疑惑捜査に強い権限を持っている。
その上院を共和党に握られると、バイデン大統領は「レームダック化」するといわれており、民主党支持者は同調者にジョージア州で有権者登録をして共和党の進出にストップをかけるように呼びかけている。
余談を許さないジョージア州のホンネは?
ジョージア州は歴史的に南部連合の中心地だった土地柄保守色が強い。同州選出の上院議員もここ15年間は二議席とも共和党議員が占めていた。
その一方で、ジョージア州の人口の3割はアフリカ系アメリカ人で、公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング牧師も同州の出身。昨今の人種問題も投票の行方を左右する大きな要素と考えられる。

当初の選挙結果を見る限りではパーデュー議員とレフラーさんが有利と見ることができるが、同時に行われた大統領選ではトランプ大統領が僅差でジョー・バイデン氏に敗れている。
この「トランプと距離を置く」意識が尾を引いて民主党が有利なのか、逆に国政の左傾化に対する反発から共和党に票が戻るのか、余談を許さない状況になっている。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン+図解イラスト:さいとうひさし】