一部赤字区間を抱える富山地方鉄道(地鉄)本線の再構築を話し合う検討会が21日に開かれ、あいの風とやま鉄道との並行区間を含む「全線を維持する方向」で今後検討していくことが決まった。しかし、沿線自治体の行政負担をめぐっては「負担割合が明確でない中で一緒の船に乗るとは言えない」などと複数の首長が異論を唱え、会合は紛糾。新田知事が「全線維持というパターンで今後の検討を進めることは合意した」と宣言する形で幕を閉じた。

来年度以降の存続が未定 争点は「並行区間」


地鉄本線をめぐっては、不採算区間である滑川〜宇奈月温泉間の来年度以降の存続が未定の状態にある。特に論点となっているのが、あいの風とやま鉄道と並行して走る滑川〜新魚津間の扱いだ。同じルートに2つの鉄道が走る区間をどうするか、存続か廃止かの議論が続いていた。
新たな試算が示した「並行区間廃止」の意外な結果

21日の会合で県は、地鉄本線の「10年後の営業収支」について新たな試算を示した。その内容は次のとおりだ。
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現行ダイヤを維持した場合:年間6億円のマイナス
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営業運行を廃止し、車両検査のため線路を維持した場合:年間6億円のマイナス
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並行区間を廃止し、線路を撤去する場合:年間5.4億円のマイナス
赤字額だけを見れば、並行区間を廃止して線路を撤去する案が最も小さい。しかし今後10年間の投資費用で見ると、現状維持が約127.4億円と最小なのに対し、運行廃止・線路撤去の場合は最大173.1億円と最も費用がかさむ結果となった。「廃止すれば安くなる」という単純な話ではないことが、数字として示された形だ。
「鉄道を残すのではなく、いかす」 社長が全線再構築を訴え

こうした試算を踏まえ、地鉄の新庄一洋社長は「本線全線で再構築の議論を行うことに意義がある」と沿線自治体に向けて意見の一致を求めた。
「鉄道を残すのではなくいかすという視点であれば、再構築事業は魅力のある制度だと思っている。関係者全員が一致する方向性をきょうの会議で決めてもらいたい」
この呼びかけに対し、富山市や魚津市、黒部市などは全線維持・再構築の方向に賛成の意を示した。魚津市の村椿晃市長は「現行維持を基本に考えていきたい」と述べた。

「負担が明確でない中で、一緒の船に乗れない」 異論が噴出
一方で、沿線自治体の費用負担について、複数の首長から懸念の声が上がった。

滑川市の水野達夫市長は「現時点で全線維持という結論について賛成・反対を明確に言える段階ではない。これまでの検討会で沿線自治体の費用負担のあり方が議論されていない」と指摘。舟橋村の渡辺光村長も「どういったことに投資するのかまだ具体的になっていない。不確定すぎる議論の進め方ではないか」と疑問を呈した。


上市町の中川行孝町長は「上市町が今後どれだけ負担をしていかなければならないのか、負担が明確でない中で、一緒の船に乗るという返事は厳しい」と述べた。

知事「合意した」、滑川市長「まだ迷っている」

会合の終盤、新田知事は「全線維持という形で検討することは理解を得た」と総括しようとした。しかし滑川市の水野市長はすかさず「理解を得たとはまだ言えない。まだ迷っている、賛成でも反対でもない」と反論。両者の認識のずれが露わになる場面もあった。

それでも最終的には知事が「全線維持というパターンで今後の検討を進めることは合意した」と宣言し、会合は閉幕した。
9月の次回会合で負担割合を協議へ
今回の会合では「全線維持で検討する」という方向性こそ示されたが、最大の争点である沿線自治体の負担割合は棚上げのままだ。県は9月に次の会合を開き、利便性の向上策や各自治体の負担割合について話し合う予定としている。
地鉄本線は富山市内から宇奈月温泉まで、沿線住民の日常の足として長く親しまれてきた路線だ。「鉄道をいかす」ための具体的な絵が描けるかどうか、9月の議論が正念場となる。
(富山テレビ放送)

