日本に住む外国人が増える中、日本語を学びたいという需要も高まっている。イット!が取材したのは、温泉旅館の中にある日本語学校。「消滅可能性都市」とも指摘された町で、人手不足を解消するために考案されたのは、働きながら学べる、温泉旅館と日本語学校の取り組みだった。
使われなくなった宴会場が「教室」に
日本三大美肌の湯として知られる佐賀県の嬉野温泉にある、創業76年の歴史を誇る温泉旅館、和多屋別荘。かつては昭和天皇も宿泊し、将棋の藤井聡太六冠の対局に使われたこともある。

そんな伝統のある温泉旅館の宴会場では、日本語の授業が行われていた。
生徒たち:
気をつけ。礼。
よろしくお願いします。
世界各地から集まった生徒たちは、ここで勉強するだけでなくアルバイトもしている。

2025年に開校した日本語学校「ICA国際会話学院 嬉野校」では、51名の生徒が週5日、この旅館で学び、2年間で語学習得と日本での就職を目指す。
この日行われていたのは、日本で働く時のマナーについての授業。
生徒:
店長、国から家族が来られましたから、1週間休ませていただけませんか?
先生:
丁寧ですね。「来られました」はいいですか?
生徒:
「来ます」です。
先生:
「来ます」、そうですね。
職場での「あるある」な会話もロールプレイ形式で練習する。

生徒(バイト役):
来月末の1週間、休ませていただけませんか?
生徒(店長役):
来月末はとても忙しいので…。
しかし、なぜ旅館の宴会場を使っているのか。
和多屋別荘 大石和哉さん:
コロナを機に、団体のお客さまから個人のお客さまへの方針転換をして、その中で活用しなくなった宴会場が多数ありますので、そこを教室として利活用してきたという形です。
空きスペースとなっていた宴会場を活用しようと、旅館が学校側に場所を貸し出したのだ。
日本語学校の生徒の多くをアルバイトとして採用
クラスの一番前で真剣な眼差しで授業を受ける男性は、ネパール出身のスザンさん(28)。古き良き文化を持つ日本で働きたいと、2025年4月に来日した。

スザンさん:
漢字…漢字が一番難しいです。
毎日午後1時から授業を受けるスザンさんだが、この日は朝7時から旅館の朝食会場で働いていた。

スザンさん:
アルバイト、ここで働いています。
旅館では、日本語学校に通う生徒の多くをアルバイトとして採用し、法律で認められている週28時間の制限の中で、生徒たちは温泉旅館という日本の伝統文化に触れながら働いている。
旅館側の狙いは。

和多屋別荘・大石和哉さん:
旅館でアルバイトというところで、日本語を学びながら地域に貢献できるような人材になっていっていただく。
人口減少が懸念される嬉野市は、2024年の調査で消滅可能性都市に指定された。広大な敷地面積を持つ和多屋別荘も働き手不足を抱えていたため、外国人に学びながら働いてもらうことを考案したのだ。
「日本人みたいに気が利く」上司も絶賛する働きぶり
スザンさん:
おはようございます。
朝食会場でスザンさんは、利用者へ元気な挨拶をしながら、バイキングの状況をくまなくチェック。食事が少なくなると、すかさず補充に回る。さらに、スザンさんは、赤ちゃんを抱えた利用客のために乳幼児用の椅子を準備。細かな気配りも完璧だ。
スザンさん:
(仕事)面白いです。仕事、ネパールと日本の食べ物、飲み物全部違うから、名前が分からないからちょっと難しい。
ネパールで料理人の仕事をしていたスザンさんが苦戦しているのは、食べ物の日本語。自宅でもルームメイトに料理を振る舞いながら勉強している。
スザンさん:
料理を作るのが好きです。
(たまねぎを持って)あとは…にんじん!
スタッフ:
たまねぎ?
スザンさん:
ああ、それそれ、たまねぎ!
自宅でも努力を続けるスザンさんの働きぶりを上司に聞いてみた。

同じ職場の上司:
とにかく真面目ですね。日本人みたいに気が利きます。周りがよく見えてるかなと。将来的にはできたら就職してもらいたいなっていうのはあります。
スザンさん:
うれしいです。
自分自身も、地域も豊かに
旅館で働く生徒の中には、こんな実力を持った人も。ネパールから来日したインドウさん(28)は、2026年4月に入学したばかりの新入生だが、早くも期待の新人としてこの旅館で活躍していた。

従業員:
すごく心強いです。4カ国語話せるので、心強いなと思っています。
インドウさん:
ネパール語、インドの言葉、日本語と、英語も。

従業員:
外国の方の対応にすごく戸惑うことが多かったので、本当に来ていただけて助かってます。
ICA国際会話学院 嬉野校 中野浩子校長:
校舎の中にいるだけで、まさに日本文化ですからね。一緒に多文化の人たちが過ごして、そしてそこで根付いてお互いに成長して、ここの中でいろんな役に立つ。自分自身も豊かになって、ついでに地域も豊かにする。
観光庁が行った調査によると、全国の宿泊施設の7割が人手不足だと回答しているという。
スザンさんは、旅館で料理人として働く目標に向かって就職活動の準備をしている。人手不足に悩む地域で活躍できるか、日本での挑戦が続く。

スザンさん:
アルバイト難しい。それも毎日毎日働いていたから分かります。ここで勉強して卒業してから、日本のホテルで働きたいです。
(「イット!」7月21日放送より)

